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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第三章:広がる秘密の輪

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18話:姉、異世界デビュー!


「うげっ……頭痛え」


体を起こし、周囲を見回す。


見慣れない木々、異様な空気。

間違いなく、ここは現実世界じゃねぇ。

『転移者よ。初めての転移、歓迎する。ここは「始まりの森」。』


突然頭の中に響く声に、あたしは驚きもしなかった。


むしろ、状況を把握するのが早かったな。


「あー、なるほどね。異世界転移ってやつか。花のやつ、こんなところに来てたのか」


『これより、お前は異世界のことわりに従う。まず、初期装備を選択せよ。』


頭の中に浮かんだ半透明のウィンドウを見て、あたしは迷わず剣を選んだ。

「剣だ剣。こういう時は、シンプルが一番だろ」


ずっしりとした木の剣が手に現れ、動きやすい服装に身を包む。

着ていた服は消えてやがった。

「よし、まずは……」


その時、足元で緑色のゼリー状の物体がぷるぷると震えているのに気づいた。

「スライムか。ゲームで見たことあるな」

あたしは躊躇なく剣を振り下ろした。

プシュッという音と共にスライムが弾け飛ぶ。

『経験値を獲得しました。レベルが上がりました。』



「おっ、マジでゲームみたいだな」

あたしは面白がりながら、次々と現れるスライムを倒していく。

すると、ガサガサという音と共に、小さな緑色の人型生物が群れをなして現れた。

「ゴブリンか。こいつらも定番だな」


あたしは不敵に笑った。恐怖よりも、むしろ楽しかったね。


「へっ、こんな雑魚ども、この姉貴様が秒殺してやるよ!」


最初のゴブリンが襲いかかってくると、あたしは迷わず剣を振るった。

木の剣とはいえ、あたしの腕力と運動神経は並みじゃねぇ。ゴブリンは一撃で倒れた。


『経験値を獲得しました。』

『スキルを獲得しました:剣術習熟(微小)』


「よっしゃ!」

あたしは次々とゴブリンを蹴散らしていく。


もともと運動神経が良く、度胸もあるあたしにとって、ゴブリン程度の相手は怖くもなんともなかった。


一匹のゴブリンが棍棒を振り下ろしてくるが、あたしは軽やかにステップで回避する。


「遅ぇんだよ!」


反撃の剣が、ゴブリンの胴体を横一文字に薙ぎ払う。


『スキルを獲得しました:怪力(微小)』

「お、新しいスキルか。面白いじゃねーか」


あたしは戦いを重ねるごとに、自分の身体能力が向上していくのを実感していた。


スライムやゴブリンじゃ、もう相手にならねぇ。

次々と現れる魔物を片っ端から倒していくうちに、あたしのレベルは急速に上昇していく。

Lv.1 → Lv.3 → Lv.5


剣術習熟:微小 → 小

怪力:微小 → 小


森の奥からは、さらに強い魔物の咆哮が聞こえてくる。

しかし、あたしにとってそれは恐怖ではなく、むしろ挑戦への呼び声だった。


「もっと強いやつはいねーのかよ?」


その時、森の奥から巨大な影が現れた。


ゴブリンよりも一回り大きく、筋骨隆々とした体に鋭い牙を持つ魔物。

『オーク:高い攻撃力を有する。』

「おお、こいつは手応えありそうだな!」


あたしは興奮に目を輝かせた。

オークが巨大な斧を振り回して襲いかかってくるが、あたしは冷静に間合いを測る。


「でかい分、動きが読みやすいんだよ!」


オークの斧を紙一重で回避し、脇腹に剣を突き刺す。

しかし、オークの分厚い皮膚に阻まれ、思ったほどダメージを与えられねぇ。


「硬ぇな……だったら!」


あたしは「怪力」スキルを意識的に発動させる。

握る剣に、これまでとは比べ物にならない力が込められる。


「うおおおおお!」


渾身の一撃が、オークの首筋を深々と斬り裂いた。オークは断末魔の叫びを上げて倒れ込む。


『経験値を大量獲得しました。レベルが上がりました。』

『スキルを獲得しました:肉体強化』


「やったぜ!」

あたしは拳を振り上げて勝利を喜んだ。


戦闘の興奮と、レベルアップの快感。現実世界じゃ決して味わえねぇほどの充実感だったね。


数時間後、あたしは森を抜けていた。

「思ったより楽勝だったな」

レベルは8まで上がり、剣術スキルも向上している。


体力も十分残っていた。

森の出口から見えたのは、石造りの建物が立ち並ぶ中世風の街並みだった。


城壁に囲まれた街の入り口には、「始まりの街 コレット」と刻まれた看板が掲げられている。

「おー、本格的だな。映画のセットみたいだ」


あたしは興味深そうに街に入っていく。

石畳の道、木組みの家々、馬車が行き交う様子。


すべてが新鮮で、まるで中世にタイムスリップしたかのようだった。

街の人々は皆、あたしを普通の冒険者として扱っている。


異世界から来た転移者であることを疑う様子もねぇ。

「面白いところだな、ここは」


しかし、すぐに問題に直面した。

「腹減った……」

激しい戦闘の後で、空腹が襲ってくる。


だが、この世界の通貨を持っていない。

街の屋台から漂ってくる香ばしい匂いが、あたしの空腹感をさらに煽る。


「困ったな。どうすっかな……」

そんな時、ひときわ大きく賑わっている建物に「冒険者ギルド」という看板が掲げられているのを見つけた。


中からは、ガヤガヤと人々の話し声や酒を飲む音が聞こえてくる。

「冒険者ギルド?ゲームでよく聞くやつだな」


あたしは迷わず中に入った。


中は酒場のような雰囲気で、様々な装備を身につけた冒険者たちがテーブルを囲み、酒を飲み交わしたり、大声で笑い合ったりしている。


壁には巨大な地図や依頼書が貼られていた。

受付には、エプロン姿の若い女性が座っている。


あたしはカウンターに歩み寄り、声をかけた。

「あの、冒険者の登録をしたいんですが」


受付嬢は顔を上げ、あたしの姿を見て少し目を丸くしたが、すぐに営業用の笑顔を浮かべた。

「はい、承知いたしました。初めての方ですね。こちらの書類にご記入ください」


慣れた様子で、木の板に紙を挟んだ書類と羽根ペンを差し出す。


あたしは適当に記入しながら、ふと自分の体内の感覚に意識を集中した。すると、頭の中にぼんやりとだが、小さな空間が浮かんだことに気づいた。


「アイテムボックス?」


そこには、森で倒した魔物から得た魔石や素材がいくつか入っている。

スライムの魔石、ゴブリンの魔石、そしてオークの魔石まで。

「これ、売れるのかな?」

そう口にすると、受付嬢はにこやかに答えた。


「はい、もちろんでございます。魔石は魔術の触媒や武具の素材にもなりますので、冒険者ギルドで買い取らせていただいております。スライムの魔石が1個で1レム、ゴブリンの魔石が1個で1レム、オークの魔石が1個で40レムになります」


あたしは目を輝かせた。


「マジか!じゃあ、この魔石、全部売ってくれ!」


差し出したのは、スライムの魔石1個、ゴブリンの魔石が60個、それからオークの魔石が6個だった。受付嬢は再び少し驚いた様子を見せたが、すぐに冷静に計算を始めた。


「スライムの魔石が1個で1レム、ゴブリンの魔石が60個で60レム、オークの魔石が6個で240レムになります。合計で301レムですね」


カラン、と心地よい音を立てて、カウンターに大量のレム貨が並べられた。


「やった!これで食い物が買えるな!」


あたしは早速、ギルド内の食堂で異世界料理を注文した。

「何がおすすめですか?」


厨房から顔を出した髭面のコックが、豪快な声で答える。


「でしたら、こちらの『森の恵み定食』はいかがでしょう!この街の名物で、ボリュームも満点だぜ!」


運ばれてきた料理は、香ばしく焼き上げられた肉の塊に、色とりどりの野菜、そして見慣れない穀物で作られた、どっしりとしたパン。


皿には温かいスープも添えられている。


「うまいじゃん。肉も野菜も、なんか味が濃いな!パンも焼きたてか?」


異世界の食材は、現実世界のものとは明らかに違う濃厚な味わいがあった。


魔力を含んでいるからなのか、食べるだけで体力が回復していく感覚もある。


食事を終えると、あたしは冒険者として本格的に活動を始めた。


ギルドの依頼掲示板には、様々な任務が貼り出されている。

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