(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』

冴えない、クラスの「空気」な男子、田中健太。彼はいじめられても反抗せず、誰も気にも留めない、そんな存在だった。

はずなのに――私、佐藤花だけは知っている。

体育祭の短距離走で、彼は信じられない速さで駆け抜け、球技大会のバスケでは、まるで超人のような活躍を見せた。クラスの誰も気づかない彼の「異変」を、なぜか私だけははっきりと認識できるのだ。

「私だけが知ってる」という優越感と、得体の知れない胸の高鳴り。彼の秘密を追った私は、とある路地裏で光のゲートへと吸い込まれる田中くんを目撃し、危険を顧みずその先へ飛び込んだ。

そこは、剣と魔法、魔物が跋扈する異世界だった。

異世界で「勇者」として孤独に戦い、現実世界のわずかな時間を使って、膨大な努力と鍛錬を積み重ねてきたという田中くん。彼は現実世界でのコミュ障な姿からは想像もできないほど、圧倒的に強かった。

戸惑う田中くんに、私は告げる。「アンタの異世界冒険、私が手伝ってあげる！」

私だけの特別な「目」と、異世界で手に入れた便利な「アイテムボックス」。親友の由希子、豪快な姉の茜、そして担任の神崎先生まで巻き込み、私たちの秘密の二重生活が始まった。

しかし、この世界の成り立ちには、ある大きな秘密が隠されていた。

これは、冴えない隣の席の彼が、異世界で最強の勇者となり、孤独な戦いを乗り越え、そして私だけの存在になっていく――恋と成長の物語。

完結済み