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第三章:ダンジョンの罠に友情が試される

 アーリス村で村長宅を爆破した翌日、勇者一行は次の目的地――古代遺跡ルディオスに向かっていた。


「この遺跡には、かつて魔王に仕えた四天王の一人が封じられていたらしい。手がかりがあるはずだ」


「へぇ〜、四天王って四人いるの?」

「うん、名前通りだな」


「じゃあ三天王になったらどうするの?」

「減らすな!」


 リリィの天然ボケにツッコミを入れつつ、ようやく遺跡の入り口にたどり着いたのは日が沈む直前だった。

 どこか不気味な石造りの回廊、立ちこめる冷気、そしていかにも「罠あります」感満載の床。


「ここから先は慎重にな。ミナト、罠のチェック頼む」


「ふふん、任せなって!」


 盗賊ミナトは得意げに前へ出て、小型ナイフを構えて慎重に進む――


 ガチャン!!


「うわっ!?」

 見事に天井から鉄球が降ってきてミナトを直撃。顔面から床に突っ伏した。


「オイオイオイ!! 早速じゃねぇか!!」


「でもこの鉄球、見事なバランス感覚……設置した職人さんに拍手したい……」

「感心してる場合か!!」


 ミナトは鼻血を拭きながら、「今日は調子悪いな」と笑ったが、全員いつもだろと思っていた。


 続いてやって来たのは、怪しげなスイッチだらけの部屋。床に無数のボタンがあり、どれが正解かわからない。


「ふむ……これは知恵の試練ってやつだな。きっと押す順番が――」


「うおおおおお! 力で解決だァ!!」


 ゴードンが叫びながら、床を両足でガンガン踏み抜いていく。

 そのたびに部屋の壁が動き、天井がギシギシと音を立てる。


「待て! ゴードン! お前のその脳筋ムーブが一番危ないって前回学ばなかったのか!」


「学ばないから脳筋なんだが?」

「開き直るなァ!!」


 結局、部屋のスイッチは「押さないのが正解」だったらしく、全員でゴードンを羽交い締めにして止める羽目になった。


 さらに進んだ先、突然天井が崩れ、天井から粘着性のスライムがボトボトと降ってくる。


「ぎゃああ!? きもちわるっ!」

 リリィが必死で払い落とすが、魔法を使おうとするたびに暴発しそうになる。


「リリィ! 魔法使うな! スライムに火球撃ったら俺たちも焼ける!」


「でも燃やす以外に思いつかないし!」


「こっちの身にもなれ!!」


 結局、ノエルの聖水でなんとか撃退……したと思ったら、聖水がなぜか酸性で床が溶け始めた。


「なんで!? なんで聖水なのに腐食性あるの!?」

「わかりません。神様が“たまには毒も愛のうち”って……」

「神様、定期的に性格おかしくなるな!!」


 一行がボロボロになりながらも最奥へたどり着いた頃、部屋の中心には巨大な魔法陣が描かれ、その中央に赤黒い水晶が浮かんでいた。


「……魔力の塊だ。もしかして、魔王の残留思念かもしれない」

「触れたら危ないんじゃない?」


「私、祈ってみますね」

 ノエルが神聖魔法で清めようとする――が。


 ボォン!


 爆発した。


「神の力強すぎだろおおおおおお!!!」


 煙の中、全員が黒こげで倒れていた。ゴードンは焦げた眉毛をつまんでしょんぼりしている。


「これ……罠に引っかかるより被害でかくない?」


「むしろ俺たちが罠説あるよな……」


「でも、これで魔王の気配は断ち切れたっぽいよ?」

 リリィが焦げた髪を整えながら微笑む。


「うん……結果オーライ……なのか……?」


 全員、立ち上がる力もなく床に寝転がったまま、遺跡の天井を見上げた。


「……次、どこ行くの?」

「もう帰っていい?」


「帰っても井戸いるしな……」

「うっ……」


 カイは立ち上がり、煙の立ち込める石の回廊を見渡す。


「この程度でくじけるわけにはいかない……! 俺たちが世界を救うんだ!」


「……まあ、まだ誰も死んでないしな」

「それが一番の奇跡かも」

「私の神様は、次の村で死人が出るって言ってますよ」

「やめてくれェェェ!!」


 こうして、命からがらダンジョンを脱出した勇者パーティ。

 次なる目的地は、魔王軍の痕跡があるという「死者の谷」――名前からして嫌な予感しかしない場所である。


 一行は、期待と不安とツッコミを抱えて、また歩き出すのだった。

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