第二章:最初の村で全滅しかける
翌朝、ようやくパーティは王都を出発した。
空は快晴、鳥のさえずり、風の香り……まさに旅立ちにふさわしい、清々しい朝。
しかしカイの顔は晴れなかった。なぜなら、徒歩10分の距離を移動するのに1時間かかったからだ。
「ゴードン、そこ畑だ。村じゃない」
「ほう……野菜がたくさんあるな」
「勝手に人んちの畑入るな!!」
「リリィ、そっち川。村じゃない」
「なんかこっちが正解な気がしたんだけど」
「直感で動くのやめてくれ!!」
「ノエル、なんで鳥に祈ってんの?」
「この子、導きの使者らしいんです」
「いやただのスズメ!!」
開始十分でこの有様だ。道中、ミナトが三回罠にかかり、そのうち一つは自作だった。
「え、これ昨日作ったやつかも。うっかり自分で踏んだ☆」
「才能の無駄遣いって言葉、知ってるか?」
そうこうしているうちに、ようやく目的の最初の村「アーリス」に到着した。
小さな川沿いののどかな村。温和な住人たちが暮らす、最初の目的地としては理想的な場所だ。
「よし、ここで情報収集して、魔王の手がかりを探そう」
「了解! 火球準備!」
「やめろって言ってるだろォォォォォ!!?」
リリィが魔法を放とうとした瞬間、カイは必死にその腕を押さえた。
「村に着いたら火球」は彼女の中で「常識」らしい。まったく常識じゃない。
「まずは村長さんに挨拶だ。ほら、あの家だろうな」
「ふむ、立派な建物だ」
「ノエル、ゴードン、いいか、何があっても落ち着いて――」
ドゴォォン!!!
家が爆発した。
「……え? 今の何?」
「私の神様が……“ここには悪霊が潜んでいる”って言ったので、ちょっとだけ浄化を……」
ノエルがにっこり笑いながら、神聖魔法の杖を持っていた。
「いや、清めるってレベルじゃねぇよ!!!」
「でも村長の腰、爆風で楽になったみたいです」
「治療じゃなくて物理的に歪ませるな!!」
爆風で飛ばされた村長(72)は、何かを悟ったような目で空を見上げていた。
「……この子たちが、世界を救うのかね……?」
「違う意味で伝説になるかもしれませんね」と村の神父が小声でつぶやいていた。
情報収集どころではない。村人たちは遠巻きにパーティを見る目をしていた。
おそらく“魔王よりヤバいやつら来た”と思っている。
そんな中、ミナトが一軒の民家の裏手で何かを見つけた。
「カイ、こっちこっち。なんか怪しい洞窟あったよ!」
「おお、ついに手がかりか!?」
期待を込めて覗き込むと、それはただの井戸だった。しかも――
「この匂い……まさか、昨日の井戸!?」
「やあ、また来たね♡」
井戸から声がした。
「うわあああああああ!!! なんで追って来るんだよ井戸ォォォ!!!」
「縁があったんだろう」
「なんでお前は驚かないんだよ!!」
混沌とする一行をよそに、日は傾き、村の空が赤く染まっていく。
「……結局、情報ゼロ、村長家吹っ飛び、井戸の怨霊にストーキングされ、罠三つ、自爆二回か……」
カイは地面に座り込み、真顔で空を見上げた。
「この先、何人残るんだろうな……」
「私の神様は、あと2章で誰か死ぬって言ってましたよ~」
「やめろォォォ!! 未来予知すんなァァァ!!」
かくして、勇者パーティの前途はますます不安に包まれながら、
一行は次の村へと向かうのだった。