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第9話 ありえない、けれど――

 本来は大規模なモンスター襲来や災害級のモンスター討伐などでしか使用されることのない特別作戦室、その中央に置かれたテーブルをギルドマスターを初めとした面子が取り囲むようにして座る。


「まずは改めて状況を整理しよう。君がこの報告書を提出したと聞いているが、ここに書かれていることは紛れもない事実なのか?」


 白い髭を存分に蓄えた偉丈夫がテーブルの最も下座に位置する男へ問いかけた。鋭い眼光が室内を一掃するように走り、その場にいる全員が無意識に背筋を伸ばす。


「は、はい! その通りです……!」


 ギルドに所属する調査員である男はギルドマスターの威厳ある振る舞いに気圧されながらも、自身の目で見たものをそのまま口に出す。


「ニブルヘイムに棲息するモンスターの一斉逸出(いっしゅつ)に強烈な殺気を放つ女性、そしてそれらを従え、黒龍に跨って飛び去った魔王と思わしき人物……。これらがすべて事実であるのなら、ギルドもそれ相応の対処を取る必要があるかと思いますが……」


「ニブルヘイム自体が未だ多くの謎に包まれている以上、放置する訳にはいかないでしょう! なにより、一体でも並のボスモンスターに匹敵するような連中を本当に従えている者がいるのであれば、我々だけでは到底対処出来ない! 周辺のギルド支部にも至急応援を頼む必要が――」


「――鎮まれ!」


 白熱する議論の中、ギルドマスターの一言が混沌と化した空間に一本筋道を通してみせる。


「……ここは一つ、彼らに話を聞いたほうがいいだろう。どうだね、ニブルヘイムの()を知る唯一のパーティ、『オルドル』の諸君……」


 在席するギルド職員の面々がこの場で唯一部外者の立場である冒険者パーティへと注目する。


「――なるほど、それで呼ばれた訳ですか。確かに、ニブルヘイムの最深部をこの目で見て生還したという実績があるのは俺たち『オルドル』だけですからね。そういうことならこのウーフェ、パーティのリーダーとして是非とも尽力させていただきましょう!」


 椅子に深く腰かけていた騎士(ナイト)が自前の金髪を派手に揺らし、磨き上げられた鎧を忙しなく揺らして笑う。その隣では赤髪を左右で分けた闘士(ファイター)の少女がぐっと唇を噛み締めていた。


「……生還なんてしてないわよ。私たちはただ、逃げ帰ってきただけなんだから……」


 続けて漏れた「……私が、もっと()ければ……」という後悔に満ちた呟きは窓辺の風に攫われ、誰の耳にも届くことはない。


「……話する前に一つ、そもそも魔王って何……?」


 白髪をさらりと流す背の低い魔法師(ウィザード)は本当に何も知らないといった様子で尋ねた。


「……魔王というのはかつて一度、モンスターを意のままに操り、人類に多大な被害をもたらした人物に付けられた()()です。当時はギルドも数が少なく、討伐にはかなり苦労したと聞きますが……」


「左様、聖女の言う通りだ。魔王は人の身でありながらモンスターと意思の疎通を図り、まるで自らの手足のように大陸の各地に散らばせては悪逆の限りを尽くしたと言う。どうだ? 君たちがニブルヘイム攻略に臨んだ際、そのようなモンスターはいなかったか?」


「いえ……。少なくとも私たちが戦った中には、そのような強大な力を持ったモンスターはいなかったと思います」


「なるほど……となれば、発生源はニブルヘイムの外か、あるいは君たちがダンジョンに挑んだ後に内部で生まれたか……」


「――……()()()()()、探索出来てない場所があるわ」


 闘士(ファイター)の少女の一言にパーティ全員がハッと目を見開いた。


「――そうか! ボス部屋か!」


「ニブルヘイムに棲むボスモンスターが魔王……少なくとも、名前負けはしなさそう……」


「えぇ……けど、それならさっき話にあった殺気を放つ女の人って一体……? あんなところに人なんか住めるわけないし……」


「そんなのどうせ召使いか何かに決まってるだろ。せいぜい中層モンスター程度の力だろうし、警戒すべきはその魔王とやらだろうな。……にしても魔王、意外にも女っ気あるんだな。親近感沸くぜ。なぁお前ら――」


「いえ。それよりギルドマスター様、魔王について他に分かっていることはありませんか?」


 騎士の浮ついた視線などには欠片の興味すらない聖女が問いかけると、ギルドマスターは側に仕えるギルド職員に指示を出して一枚の紙を持ってこさせた。


「これは魔王が龍に乗って飛び立つ瞬間を収めた幻影紙(ヴィスティア)だ。今ギルドの方でもこれと類似するモンスターがいるか確認しているところだが、君たちも確かめてみてくれ」


 そうして手渡された紙面に目を移す四人。


『『『『――!!』』』』


 先程撮られたばかりだというその幻影紙(ヴィスティア)の中には決してありえない、けれど絶対に見間違えることのない()の姿があった。




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