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第7話 優雅(?)な遊覧飛行

 ダンジョンを後にした俺たちは龍の背に乗って優雅な遊覧飛行を楽しみながら、目的地であるギルド都市「カルゼリア」へと向かっていた。


 ……そのはずだったのだが……。


「…………ここ、どこだ?」


 一面に広がる大海原。降り注ぐ灼熱の太陽に思わず汗が噴き出す。俺の記憶が正しければ、少なくともカルゼリアの周辺500キロには海なんてなかったはず……。


「これ、やっぱり道に迷ったんじゃないですか? 進めば進むほど人気が無くなっているような気がしますけど」


 後ろに座っているヘルが落ちないよう腰に手を回しながら訝しげに呟く。


「ぐっ……! まさか地下に引きこもってた弊害がこんなところで現れるなんて……」


 脱出出来ると気づいた勢いのまま出てきてしまったせいで、街までの経路確認を完全に忘れていた。


 思えば持参した地図なんてとっくの昔に火種にしたし、道中目印にしていた木や岩だって三年も経てば変化してるに決まっている。帰り道が分からなくなることくらい予想出来たはずなのだが、帰れるという喜びのあまりこんな単純なことを見落していた。


「これは一度来た道を引き返した方がいいか……?」


 今ならまだ辿ってきた道のりを遡って戻ることは可能だ。その分の時間は無駄になるが、これ以上迷ってニブルヘイムの位置すら分からなくなるくらいならここは安全を期して……。


「……仕方ないですね、私に任せてください」


 ヘルがやれやれとため息をついて名乗りを上げる。


「任せろ……って、カルゼリアの場所が分かるのか?」


「えぇ、あっちです。私のボスモンスターとしての勘がそう言っています」


 ヘルが身を乗り出し、俺の肩に乗っかりながら指で指し示した方角は俺の進もうとしていた方向と全くの真逆だった。


「ボスモンスターの勘、か……」


 確かにモンスターなら人間の多い場所を本能的に分かっていそうだし、「任せろ」というにはそれなりの根拠があるのだろう。


「……よし。ヘル、案内を頼む。少なくとも俺の運否天賦に任せるよりかはマシだろ」


「分かりました。それでは――」


 ヘルは俺の脇をすり抜けて前に座り、ポフンと俺の胸に頭を預ける。


「すぅ…………はぁ…………」


「……おい、誰も『人を背もたれにしてリラックスしろ』なんて言ってないぞ」


「……分かってますよ。ほら(トカゲ)、あっちです」


 そうしてやけに上機嫌なヘルに不安を覚えながらも、とりあえず彼女の言う通り黒枯龍(ブライトワーム)を向かわせること一時間――俺は先程とは比較にならない量の汗を流していた。

 

「…………なぁ、ここがカルゼリアなのか? 俺の知らない間に随分様変わりしたみたいだが……」


 枯れた漆黒の大地から吹き出すマグマ、立ち込める暗雲、辺りに散乱する大型モンスターの残骸を背景に、俺は眉間に皺が寄るのを感じながら頑なに目を合わせようとしないヘルに向かって視線を突き刺す。


「……ワ、ワタシノナカノカルゼリアハココダッタノデ……。ニンシキニソゴガアッタトイウカ……」


「――そんな言い訳通用する訳ないだろうがぁぁぁぁぁ!!! 分からないなら分からないって最初に言えこのぉっー!」


ひひゃい(痛い)! ひひゃいでふ(痛いです)! |ほうりょふはんはんいへふ《暴力反対です》!」


「前は散々襲ってきた癖に今更何を言うんだこいつ! おらっ、反省しろこのっ!」


 目の前の生意気にも膨らんだ両頬を左右から掴んで引っこ抜く。まさかヘルが俺以上の超絶方向音痴だとは……というか、だったらさっきまでの謎の自信は何処から湧いてきたんだ。


「…………まぁ、お前に任せた俺の責任もあるし、両頬つねりの刑で今日は勘弁してやる」


 俺が掴んでいた手を離すと、反動でぺちんと頬を揺らしたヘルが「ぴぎゃっ!」とボスモンスターの威厳も何もないふやけた声を漏らす。


 その後、結局二人して方向音痴へと陥った俺たちに呆れた黒枯龍(ブライトワーム)が一方的に進路を取ったことで、何とかガルゼリア近辺まで辿り着いたのだった。


 


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