第42話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る③
第42話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る③
魔王討伐合同任務の開始時刻が迫る中、ウーフェは条件を緩和してはパーティ募集を行い、人が来ないと分かれば更に条件を緩和してをひたすら繰り返した。
そうして最終的に提示した条件は、本来望んでいたものとは大きくかけ離れたものとなってしまった――。
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「魔王討伐合同任務 参加者募集」
募集者:パーティ「オルドル」リーダー ウーフェ・グランゼル
募集人数:3名(前衛職、魔法職、神官職それぞれ1名ずつ)
条件:Cランク以上のギルド認定証所持者、またはそれに準ずる実力者
報酬:合同任務の報酬 20%
※前金として、一人につき200,000セルトを支払うものとする
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『……まさか、この程度の奴らに前金まで支払うことになるとは…………』
手に持った募集用紙を握りしめ、顔を強張らせたウーフェは目の前に並ぶ三人の冒険者へと視線を向ける。
向かって左にいるのが眼鏡を掛けた瘦せ型の体型が特徴で、紺色の髪が少しばかり目にかかっているBランク魔法師の男。
「初めまして、ドローランと言います。頂いた報酬分の働きはするつもりなので、どうぞよろしく」
ドローランは「報酬」という言葉を強調して、その尖った目をレンズ越しにウーフェへと向ける。
『……こいつ、俺を値踏みするような態度しやがって……。いけ好かない野郎だな……』
ウーフェは続けて隣――真ん中でゆらゆらと揺れる落ち着きのない少女に目を向けた。
「あれ? 次ってアタシの番~? じゃ、自己紹介してあげま~す!」
子供らしい背丈と大きな水色髪のツインテール、そして耳を劈く程に高い声は否応なく人の目を集め出す。
「ヒメで~す! 聖職者やってま~す! なんか、そこのおじさんがずっと一人でポツンとしててかわいそ~って感じだったから、参加してあげることにしました~! 感謝してよねっ♪」
「おいてめぇ、誰がおじさんだ! それに俺はボッチじゃねぇ! 偶々メンバーの都合がつかなかったから、お前らを呼んだだけで……!」
「え? だっておじさん老け顔だし、前髪スカスカじゃ~ん♡ 大人しくざこざこ頭皮のボッチだって認めたら~?」
ヒメの容赦ない煽り言葉に周囲の冒険者がくすくすと笑い声を立て始める。
『――Bランクの聖職者って言うからパーティに入れたのに、どう見てもただのクソガキじゃねぇか! これでもし役に立たなかったら、その時はモンスターの餌にしてやる……!』
ウーフェは怒りを拳の中に押し込め、残った一人――右側で静かに佇む少女に向かって顎を振って挨拶を促す。
「…………サツキ」
「…………は? それだけか?」
「…………他に話すこと、ある?」
深い緑の髪を束ねて腰付近まで流し、ここらではあまり見かけない雅な装束の腰元に短刀を二本対にして差す少女――サツキは額の片側から突き出る角に括り付けた飾り紐を指で遊ばせる。この辺りでは見るのが稀な「和」の
先程のヒメが見せた生意気な態度とは打って変わり、そのあまりに素っ気ない態度にウーフェは戸惑いを見せた。
『……この中だとある意味一番マシかも知れないが、こいつって確かCランクだったよな? 所詮その程度のランクなら、期待するだけどうせ無駄か……』
最悪捨て駒だと思って接しようと決めたウーフェは、改めて型落ち感のあるメンバーに頭を悩ませた。
『クソ……! どいつもこいつも、あいつらの下位互換ばっかりじゃねえか……!』
今になってどうしてこんな目に遭っているのか。納得のいかないウーフェはギリギリと歯を食いしばる。
『エイシア、リプレ、ミディ……勝手な真似しやがって……! お前らがいれば前金なんて払う必要なかったし、この先だってもっと楽が出来たはずなんだよ……!』
三人の内一人が既に正気に戻っているとは思ってもいないウーフェ。最早実現しようもない理想に溺れた男の現実は、今この瞬間から大きく舵を切ることになるのであった。
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