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第18話 圧倒

「がはっ…………! はぁっ…………はぁっ…………げほっ……」


 崩れ落ちた木箱の中から顔を出すと、舞い上がった土埃が肺を汚す。直撃を受けた鎧はパキパキと音を立て、限界だと言わんばかりに崩れ始める。


『バカな……!? 俺とアトスにここまでの差が……!? 一体……一体どこで……!?』


 じり、と砂を押し潰す腕が震えているのは痛みのせいか、はたまた恐怖か。ぐらついた視界で正面を見据えると、そこには微動だにしないアトスの姿があった。今の死を実感させる一撃といい、その風格はかつての戦闘要員(捨て駒)から大きく変化していた。


『あんなの、俺が知ってる奴じゃ…………!』


 肩で激しく息をしながら震えの止まらない手を伸ばし、地面を掴む。軋む肋骨と暗く淀んだ視界が更なる不快感を演出する中、遠くの方から声が投げつけられた。


「エイシアから強化を貰っただけあって、割とピンピンしてるんだな。安心したよ」


 大剣を担いだアトスが微笑を浮かべてこちらに近寄ってくる。まるで赤子を相手にするかのような態度に、剣士としての自尊心が無様に音を立てて崩れていく。


 そもそも抵抗しようにも剣と盾は今の一撃でとうに弾き飛ばされており、内臓はぐちゃぐちゃにされたかと思うくらいのダメージを受けている。

 

 冷たい汗が流れるのを感じながら、俺は全てをかき消すようにして叫んだ。


「くそぉっ!!! エイシア、回復魔法だ! 回復魔法を――!」


「…………アトスさん……? あれ? アトスさんは死んで魔王に……けど、魔物らしい気配は全然しない…………あれっ……?」


「!?」


 エイシアの()()()()()()()ことに気づき、すぐさま仕舞っていた偽写の宝珠(ネザリアオーブ)を取り出す。懐で守られていたはずの水晶は完全な球体を捨て、鎧と同じく自らの欠片を足元に零していた。


「…………あれ、アトス? やっぱり、あれっていつものアトスじゃ…………? けど、この女はモンスター……よね?」


「うぅん…………? アトスは、魔王…………? 何で、アトスが魔王なの…………?」


『――ッ! マズい! リプレとミディもエイシアも、明らかに宝珠の効果が切れかかってる! 今の一撃で宝珠(オーブ)が破損したせいか……!?』


 このままではいずれ三人とも正気に戻ってしまう。そうなれば俺のこれまでの言動にも矛盾が生じ、追及でもされたら一発でアウトだ……!


『こうなったら、宝珠(オーブ)を最大出力にして認識を上書きするしか……!』


 最大出力で使用すると人格にまで影響を及ぼすとか何とか言われたが、この際そんなことを気にしている余裕はない。俺の人生が掛かっているんだ!


『悪いな三人とも! これも俺が一流の冒険者として生きるためだ。お前らだったら廃人になっても娼婦として十分雇ってもらえるだろ? 精々頑張って暮らしてくれ!』


 そうして迷うことなくありったけの魔力を流すと、懐の偽写の宝珠(ネザリアオーブ)はその場で強い光を放ち出した。




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