94幕間:妖精の村の真実
ある日、アリエルが目を覚ますと、村の人々はいなくなっていた。
以前から、村を引っ越すという、話があったので、アリエルはてっきり、取り残されたと思っていたようだ。
それまで、人々は地上で平和に暮らしていた。
だが、戦争によって、地上の人々の生活は惨憺たる状況だった。
さらに、追い打ちをかけるように、戦争はさらに激化、ついには、人類の開発した偉大なる兵器を利用し、わずか短時間のうちに敵、味方含めてすべて全滅、というよりも、蒸発したらしい。
唯一残ったのが地下の洞窟、つまり、偶然にもこの大迷宮へと避難した人間たちだった。
その戦争によって、妖精を信じる人間が激減した。
だが、ゼロではない。唯一の大迷宮へと避難した人間の中に、わずかに妖精の存在を信じる人たちがいた。
多くは、まだ、年端のいかない子供たち。
そんな、子供たちの夢が、「妖精アリエル」という存在につながっていたのだろう。
妖精は、空想上の生物。
人間たちが作り出した空想上の動物。妖精はいる、という思いこそが、妖精を実在化させていた。
アリエルは、こんなイタズラ好きのどうしようもない妖精だ。
だが、それこそが、子供たちの思い、無邪気な子供たちの遊び心から由来したものなのだ。
そう、それが真実だった。
「うん、知ってた。なんか、前からそんな感じがしたのよね。」
昔の地上の世界であれば、多くの子供たちは、妖精を信じていたのだろう。
だが、戦争によって、わずかに妖精を信じる人はいれど、その数は激減したのだ。
「妖精」を語る人たちも徐々に少なり、妖精というものを信じる子供たちが減少していたのだ。
けども、地下へと避難した人々は、再度、地下に都市を創り、再びの繁栄を遂げた。
再びの繁栄により、心の余裕を得た人々は再び、妖精という空想の生き物を信じるようになったのだろう。
それこそが、今のアリエルの姿なのかもしれない。
だが、一方でだ。
妖精の村の引っ越しの話があったというのも事実なのだ。
これは、引っ越しが始まった直後のある妖精の村での会話である。
「あれぇ、そういえば、なんか、アリエル、いなくなくなくない?」
「そういえば、いないな?まぁ、いいんじゃねー?どこいるんか知らんけどあいつ、うざいし。置いてこうぜぃ。」
「ま、そだねー。」
こんな会話があったことも紛れもない事実だった。
妖精は人々の想い、人々の空想が実在化した存在。今もなお、妖精を想う人々がいるからこそ、アイギスによって、街は破壊されて尽くされてとしても、アリエルはここに存在するのだろう。
あなたは、「妖精」っていると思いますか?
この物語の筆者は、こう答えるだろう。当然「いるわけない」と。
「ちょっと、そこは、『いる』って答えなさいよ!」




