93アリエル消える(アリエル)
「お前。。。」
「。。。」
「。。。」
「。。。」
「まぁ、いいか。」
「良くないでしょ!この可憐な妖精が透明になって消えそうになっているのよ。助けなさいよ!」
あたしの体が透明。
まぁ、身体が透き通るほどにあたしの心が純粋ということなのでしょう。
ただですね、なんとなくなんですが、うすうすは気づいていることがあるのですよね。
あたしは、超が付くほどの可憐で天才的な妖精アリエル。
その力は、いつでも凄いわけなのですけれど、人々の想いが強いほど、力が出せたりするのですよ。
例えば、こないだのアイギスとの戦い。あの時、人々から、あのアイギスを止めてほしい、このラビリンスを守りたい、そんな人々の想いが強く感じられて、いつもよりも力を感じることができたのです。
そこで、ふと思ったことがあるのですが、、、と、ここで先にリアとタツヤが会話を始めるのです。
「あら?身体が半透明になっちゃったのね?まぁ、仕方ないわよね。」
「ん、リア、何か知ってるのか?」
「あら、タツヤさん、知らなかったの?昔はね、妖精なんてムシ、じゃなくて、存在はね、いなかったのよ。」
「今、虫って言わなかった?」
「まぁ、どちらでもいいじゃない。」
「よくないのです。」
「でね、妖精という存在が出てきたのは、アイギスが人間という知的な生命体が創造してからなのよ。おそらくだけど、私たちはバンパイヤは種を生み出すことができるように、人間にもその力が微力ながらにあった。そして、人間が増えていくたびに、その力も強くなり、その思いは、妖精という生命体を生み出し、繁栄した、、、けれど、今は、アイギスによって、人間たちは。。。」
リアから語られるその言葉、それは、あたしも、もしかしてはと、思っていたことなのです。
そう、あたしたち妖精は、人々の想いから生まれた生命体ではないのかと。
人々が、妖精というのは可愛い、という想いがあったからこそ、こんなにも可憐で華奢な妖精が生まれてしまったのでしょう。
今は、ラビリンスは惨憺たる現状なのです。多くの人が巻き込まれ、妖精を信じるとか、それどころではなくなってしまったのです。
だから、あたしの身体が徐々に透明になって、、、、って、それって、、、もしかして、あたしピンチ?
このままいくと、あたしは消滅するのです。
「ねぇ、アリエルちゃん。そういえば、前に、村のみんなに置いてけぼりにされて、村のみんなを探しているって言ってたでしょ?」
ふと霞が話しかけてくるのです。
「ねぇ、それっていつぐらいの話なの?」
「いつ?ってひと眠り、、、」
そこで、あたしは気づくのです。ひと眠りとは言ったものの、眠る前の世界はどうだったか。
その疑問に応えるようにリアが応えてくれるのです。
「それは違うんじゃないのかしら。妖精さんも寿命が長いでしょ。置いてけぼりにされた。。。ぷっ、クスッ。。」
「ねぇ、ちょっと。今笑わなかった?」
「ごめん、ごめん。妖精が。。置いてけぼりとか。。。プー、クスッ。」
「おい、脳みそかち割ろか?」
「ふー、ごめんね。それってひと眠りとはいうけれど、人間の時間に換算すれば、随分と前のできことなんじゃないの。」
そうなのです。
ひと眠りする前の世界はどうだったか?
あのときの記憶では、人々が地上で豊かに暮らしていたのです。
そして、あたしが眠りから覚めたときは、人々はすでに巨大地下迷宮都市ラビリンスに住んでいたのです。
その間に何が起きたのでしょうか。
「なるほど、戦争か。」
代わりにタツヤが応えてくれたのです。地上では大規模な戦争が起き、生き延びた人々はこの地下の洞窟に逃げ込んだのです。
「そうね、地上は、戦禍でめちゃくちゃになったわ。そして、ちょうど妖精さんがひと眠りしていた時間と一致するわね。」
あたしはね、どうやら勘違いをしていたようなのです。
あたしは、村の引っ越しで置いてけぼりにされた。。。と思っていたのです。けれど、それは違ったのです。
おそらく、それは、地上で激しい戦禍が起きたから。
それが、原因となって人々の余裕がなくなり、妖精への想いが減ったのです。
あたしは、みんながあたしを置いてけぼりにしたと思っていたけれど、そう考えるのがとても筋が通ることなのです。
そして、今、再び、ラビリンスで甚大な戦禍が起きたのです。
ラビリンスの多くが荒廃したのです。とても残念なことだけど、それによって、ラビリンスにいた人間たちも余裕がなくなったのでしょう。
だから、あたしの体も半透明になりかけている。。。
リアはあたしに向かって言うのです。
「ラビリンスは酷いことになったわ。でもね、なんとかこれで食い止めることができた。これ以上に悪くなることはない、そう考えることもできるわ。だからね、妖精アリエルさん、今ここに残った人たちに、妖精を信じるようにアピールするといいいわね。」
「なるほど、なのであります。つまるところ、いろいろイタズラをして、妖精ここにあり、と思い知らせるわけでありますね。」
「おい、クソ妖精。」
と可憐なあたしにタツヤはチョップを食らわすのであります。
「まぁ、安心したさ。人々の豊かさがなくなって、アリエルのことを想う人がいなくなったとしても、俺はお前のことだけはちゃんと覚えているからな。」
「タツヤ。。。」
あたしは、タツヤと出会って、それなりに時間は経過するのです。これがタツヤとの信頼関係というべきものなのでしょう。タツヤとは山よりも高く、海よりも深い絆で結ばれているのです。
「あぁ、絶対に忘れないさ。女湯覗きなどとかいうデタラメな噂をばらまきやがったんだからな。今ではリアからも変態の目で見られる。この恨み、生涯忘れないからな。アリエル。」
嘘なのです。どこかに絆も切れるような鋭いハサミはないかとあたりを探すのです。




