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92小さな地図屋さん(タツヤ)

 

 ラビリンスは、アイギスのせいで、惨憺たる状況だった。

 瓦礫となった我家の前で、うずくまり、泣き続ける者。瓦礫の山の上に佇み、ただ呆然と遠くを見る者。

 それだけを見れば、このラビリンスには絶望しかないようにも見えた。けども、炊き出しをして、人々に食事を配給したり、瓦礫を片づけ、新たな街を創ろうと、希望に向けて動き始める者もいた。

 決して、この街は絶望しているわけではない。


 そして、俺たちは今、「小さな地図屋さん」という店に来ていた。

 リアが営んでいる地図屋さん、ここまた、アイギスの被害を受けていたが、幸いにも、他の建物に比べれれば、壁に大きな穴が開いた程度で、被害は甚大ではなかった。

 とは言っても、店内は棚が崩れてめちゃくちゃだ。


 リアと一緒だったので、成り行きでここまで来たのだ。

 そして、ついでなので、店内の散乱した物品の片付けや、穴の開いた壁の補修などを手伝っていたのだが、、、


 リアは、「大変なことになったわね。」とか、「手伝ってくれた分、今度は少しははずむわ」などと、他愛のない会話をしていたが、ふと、思いつめたようにリアが切り出す。


「ねえ、あたしに何か言いたいことは、何かないの?」


 ちょうど、そのころ、その背後ではいまだに汚れたドレス姿の霞と、なぜか姿が半分透明になっているアリエルが散乱した物品の片付けをしていた。


 霞とアリエルは魔術が使えるわけで、「あたしは、ホコリを掃除できる魔術が使えるわ!」「あたしは物を浮遊させることができるのです!」などと、訳の分からん魔術比べをしているようであった。が、


 ズドン!ズドン!ズドン!


 と凄い音がするので、背後を見れば、今まで頑張って片づけたはずの棚が、すべてドミノ倒しのように再び倒れていた。


「あ。。。」「え。。。」

「おい、お前ら。。。」

「だって、アリエルちゃんが。。。」「だって、霞が。。。。」


 お互いが互いを責めている。

 そこにリアが割って入ってきた。


「ふふ、いいのよ。また、やり直せば、いいのよ。またね。」


 そのやり取りのせいで、先ほどのリアからの思いつめたような質問はうやむやになってしまった。


「ねぇ、それよりも、あんたたち、いつまでその格好してるの?」


 いつの間にか慣れてしまっていたが、リアの指摘されて改めて互いを見ると、そう、俺たちはずっと、ドレス姿にタキシード姿という、あまりに場違いな服装のままだった。

 すでに、薄ピンクのドレスは灰色のドレス、黒いタキシードも、白くホコリを被り、原型を留めてない。


「いいわ。奥に酔っぱらい達の忘れ物があるから、それに着替えるといいわ。」


 やっとここで、まともな服に着替えることが出来たのだ。


「うっ。臭っ。」


 ただ、若干、酒臭いかった。

 それよりも、さっきのリアの言葉が気になった。「あたしに言いたいことないの?」

 それは、きっと今まで人間のふりをして、実はバンパイヤだったあたしに言いたいことはないの?という意味だろう。


 別に言うことはない。


 過去の転生でもそうだ。俺は何度も転生している中で、たまにバンパイヤを見かけることもあった。別に珍しいことではない。それに慣れてしまったのだろうか。

 それに、アリエルも、霞もまったく気にしてない。リアはリア。いつもと何も変わることはない。

                             結局、その日はほぼ丸一日リアの店の掃除を手伝っていた。  

 ようやく、掃除がひと段落し、奥の円卓で俺たちは束の間の休憩を取っていた。

 リアの小さな地図屋さんのお店の奥は、酒場になっている。今こそ、誰もいないが、いつもなら夜は冒険者たちでにぎわうのだ。


「みんなありがとね。」


 とリアからは、簡単な食事とジョッキ一杯のドリンクが振る舞われた。


 アリエルのほうを目をやると、アリエルは自分と等身大のコップを抱え込んで頑張って、それを飲もうとしている。ちょっとその仕草が可愛らしいではないか。アリエルのくせに。


 ただ、身体がまだ半透明になっている。おそらく、まだ、周りから見えないようにする魔術を解いてなくて、効果が弱ってきたのだろう。


 今は、霞と、リアとの三人しかいない。他人に見られると、大騒ぎになる気がしたので、わざわざ周りから見えなくなる魔術をかけてもらっていたが、この場では必要ない。


「なぁ、アリエル、お前、なんだか薄くなってないか?体が半透明になっているぞ。まぁ、最近、アリエルの出番が少なくて、存在が薄くなっているのかもしれないけどな。」

「プハー。ゲップ。は?あのアイギスを倒せたのは誰のおかげだと思ってるの?この可憐で最強な妖精、アリエル様のおかげよ。薄いのは頭皮だけでオッケーよ。」

「はい、はい。アリエル、もう、もういいから、周りに誰もいないし、周りから見えなくする魔術を解除してもいいぞ。てか、禿げてないし。」

「えっ、あたし、とっくに解除しているんだけど。。。」


 可憐な妖精どころか、完全なおやじになっているのは別として、アリエルの姿は、確かに半透明になっていた。

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