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89何度も何度も何度も転生した人間(タツヤ)

 

「くそっ!人間が、人間ごときが!!クソがっ!クソがっ!」


 アイギスは、抉り取られた地面に、ボロボロになりながらも立ち上がった。


「はぁ、はぁ、まったく、面倒な人間どもじゃ。さすが転生した人間じゃ。じゃがな、妾は種の起源のころからいるのじゃ。高々、数回転生した程度で、妾を甘く見るでないわい!」


 とアイギスが言っている。


「はぁ?」


 高々、数回?、、、何を言っている。確かに俺は転生を繰り返した。

 だけど、こっちは数回どころじゃない。


 最初は、転生した数を数えたさ。だけどな、一万回を超えたあたりで、だんだん面倒になってきた。

 気づけば、ただ、死ねば毎回迎える転生に、ただ、時間の成すがままに過ごすようになり、回数などどうでもよくなった。

 そう、ただ運命の成すがままに、身を任せていたはずなのに。。。


 ふと、リアの脇で治療していたはずの霞が目に入った。


 あぁ、そうか。思い出した。

 霞だ。霞に会ってから、どこか、調子がいつもの転生と違うんだ。


 そう、霞は似ている。自分が転生する以前に好意を寄せていた大学の先輩によく似ているんだ。

 何度転生を繰り返しただろうか。そんな中で巡ってきた僅かなチャンス。

 おそらくは別人なのだろう。だけど、否定する証拠もない。僅かだけでも可能性は残っている。


 このラビリンスを救いたい、リアを想いをかなえたい、ラビリンスの人々を想いをぶつけたい、というのもある。

 だけど、それ以上に、霞、あの人に似ているだけかもしれない、だけど、巡る巡ってきたこのチャンスをバンパイヤ風情に邪魔されたくないんだ。


 だから、ただ、運命の成すがままに、身を任せているだけの転生ではなく、自ら決断し、自らが運命を決める転生を選んだ。


 俺は再び、アイギスの背後に、順次に回り込み、首元に刃を当て、そっと耳元で囁く。


「高々、数回だと?ふざけんな。転生した数などとっくに忘れた。一万回で数えるをやめた。」

「は??一万回?で数えるをやめた、、、だと?」


 アイギスは再び、一気に気を放出し、俺を突き放す。だが、これも何度も転生してきた中では、大したことではない。

 アイギスの放出した気に乗じて、そのまま、身を翻しながら、キレイに着地する。


 何度も転生する中で、ただ、運命のなすがままに過ごしてきた。

 運命の成すがままといっても、どれも過酷なものだった。周りから蔑まされ、罵倒される人生。常に戦いと隣り合わせの人生を繰り返し、幾度となく、死線を潜り抜けて転生し、幾度となく、無数の戦い中で転生を繰り返した。


 素質がないのか、魔術だけは身に着けることはできなかった。だが、素早さと剣術だけは、幾度となく繰り返した転生の中で、異常なまでに長けてきたさ。


 俺は、刀を鞘におさめ、居合の構えをとる。

 そして、これまでの、幾度となく繰り返した転生を振り返り、自身の気を錬成し、そして、放出する。


 確かに、魔術は使えないが、気というのは誰もが持っているもの。

 これまでの転生の中で錬成されてきた気を一気に放出する。


「お、おい、ちょっと、待つんじゃ。」


 アイギスは、さらに一歩、そして、二歩、後退した。

 なんとなく、自分の気が目に映って見えた。自分の気が、このラビリスの広場の全体を覆いつくしている。


「き、貴様、や、やめろ。」


 アイギスは、さらに、三歩、四歩と、後退する。


 特に自分にはこれといった技はない。ただ、素早さと剣術だけを駆使して、相手を打ちのめすだけ。


 俺は左足でふわっと地面を蹴りこむと、身体がまるでふわっと宙に浮いたような感覚を覚える。

 その次の刹那の瞬間に、アイギスの真正面へと移動していた。

 ある時代に転生し、同じように移動したときに、これを見た人間が「縮地」と言っていたが、自分としては、ただ、正面に素早く移動したつもり、技でも何でもない。


 そこで軽く、斬撃を入れる。

 アイギスの身体が反応するよりも前に、次の刹那に背後に移動し、再び軽い斬撃を入れる。

 そして、次の刹那は、右面に移動し、軽い斬撃を入れる。

 そして、次の刹那は、左面に移動して、軽い斬撃を入れる。

 つぎは、再び正面下、次は頭上、次は背面、そして、次は再び左面、、、、、、


 ただ、ひたすらに素早く移動し、軽く斬撃を入れていくだけ。一撃一撃はとても軽くかすり傷のようなもの。だが、すべてが目にも映らぬ速さで、連続で攻撃され続けたらどうなるか。

 まるで、紅い花が咲くかのように、血を噴きはじめる。

「血祭り」——、これも、別に技に名前をつけた覚えはない。ただ、素早く移動し、軽く斬撃を入れているだけのつもり。

 ある転生した世界で、血が吹き出る様を見て、ある人間がそう言っただけ。


 それでも、アイギスの纏う深紅のドレスはボロボロになりながらも、未だアイギスは健在だった。

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