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87転生した人間(タツヤ)

 

 リアは血だらけになりながらも、下を向き、大粒の涙を流していた。

 その涙の理由は詳しくはわからない。

 でも、それはリアだけじゃなかった。


「俺たちの街が、、、、」

「せっかく、この洞窟に移住して平和を得たというのに。」

「ママー!ママ―!、家がなくなったちゃった。」


 耳を澄ませば、この地に住む住人たちの声が聞こえる。この地にいる人、皆が等しく、下を向き、無残に崩れた建物の前で涙を流していた。


 今、リアの前にいる敵は、今や、人類唯一となったの安息の地、大地下都市ラビリンスを破壊しようとしている。


 リアの涙に応えなければならない。この地の住む人の悔しさに応えなければならない。。。


 待て。

 何でだ?


 ふと、自分の心の中に疑問がわいてきた。


 今までの自分であったなら、ただ傍観しているだけで、そのまま看過していたはず。

 だというのに、なぜ自分はこうまでして、自らアイギスと相対しているのか。


 ふと、次の瞬間、まばゆい光線がアイギス目がけて放たれていた。

 おそらく、何かの光系の魔術。もちろん、アイギスにはその程度の魔術、まったく効くはずがない。アイギスは煙をまくかのように腕を振ると、光線はかき消される。


 うん、今は戦いに集中しよう。


「外野が小賢しい!」


 光線の発生源を辿ると、山となった瓦礫の上に、先ほどの班の冒険者たちがいた。


「おい、Dラン。同じ班だろ。協力する。おい、お前ら、あいつにありったけの魔術を撃ち込め。」


 この世界の冒険者というのはランクというものが好きらしく、自分よりランクが高い相手は避けると思っていたが、どうやら、この班は立ち向かうことを覚えたらしい。


 アイギスに向けて、あらゆる魔術が連弾される。氷結、豪炎、雷撃、暴風、土塊と、だが、アイギスにはまったく効果がないように見えた。


「まったく小賢しい!!」


 アイギスにはまったく効果がないように見えたが、決して、そうではない。

 アイギスは、あらゆる魔術を打ち消しながらも、瓦礫の山に向けて、何かの魔術を発しようとする。槍を持った手と反対側の手に赤黒い光の球を出現させた。


 そこに、一瞬のスキ、自分よりもランクが上の相手に立ち向かうことを覚えた班の皆が作ってくれた一瞬のスキ。

 このスキを見逃すわけがない。

 俺が、瞬時に背後に回り込み、喉元へ刃を向け、その行動を止める。


「おい、動くな。」

「ちっ、あぁ、まったく小賢しい!この人間風情が!」


 フン!


 アイギスは一気に気を放出したのか、俺を吹き飛ばし、遠ざけた。


 だが、着地して、アイギスをのほうを見れば、アイギスは、地面へと這いつくばっている。


 よく見れば、アイギスの這いつくばる地面には複雑な模様が描かれていた。

 この世界では見たことはなかったが、以前の転生した世界でたまに見ることはあった。


 魔法陣と呼ばれる古代魔術に分類される術式だ。

 気を込めて特定の絵を描くことで特定の場所にのみ発動させることができる魔術だ。


 ふと横目で霞の姿が見えた。

 おそらくは、霞が一瞬のスキのうちに、アイギスの足元に重力操作系の魔法陣を描いたのだろう。


「なっ、くっ、くそ。今度は人間の女か。」


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