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9二人の間の微妙な距離(霞)

 そう、そのあと、あたしは帰り道に着いたはずだったんです。

 だというのに、この、何とも言えないこの空気、これは一体何ですか?


 あのあと、謎のおっさんは帰りましたよ。

 だけどね、あたしも家には帰らないといけない訳よ。

 そして、今いる場所から地下都市ラビリンスの入り口までは一本道なわけですよ。そうなるとね、なんか雰囲気的に一緒に帰らないといけない雰囲気になるじゃない?


 別にいいですよ。

 相手が超イケメンでお金持ちそうな冒険者だったら。むしろ、こっちから一緒に帰りませんか?と誘うわ!

 だけどさ、、、、オッサンじゃん!!しかも、金なさそー。


「。。。。」

「。。。。」


 さすがに気まずいから、名前ぐらい聞くじゃない。


「あ、あの、お名前は。」

「あぁ、タツヤだ。な、名前は?」

「あたしは、霞よ。」

「。。。。」

「。。。。」


 二人の間に流れる無言の空気。

 いや、いや、こっちから会話振ったんだから、会話続けろよ!てか、さっき名前聞いたろ。ボケ老人。

 ヒキニートで、コミュ障のオッサンかい!


「あの、あそこで何を。」

「えぇ、ちょっと、採掘を。まさかRGF社の鉱床だとは思わなくて。RGF社の民間兵に見つかって追いかけられていたんです。助けていただき、ありがとうございます。」

「いえ。」

「。。。。」

「。。。。」


 ちょ、待て待て。

 一応、話題振ってくれたけどさ、話続かないじゃん!

 え、これ、ラビリンスの入り口まで続けるの?え、ここ最前線だから、かなり距離ありますよ。

 え、これ、ちょっと無理。

 早く別れたいんだけど。


 ・・・


 結局ですね。諦めました。

 もう、ひたすら無言、かなりの距離があるんですが、ラビリンスの入り口ところまで来ましたよ。

 だけど、ここまでくれば大丈夫。

 ラビリンスは大都市、道は入り組んでいるし、すぐにお別れのはずと、あたしはタカをくくっていた訳ですよ。


 はぁ〜、甘かったわ~。


 これだけ、道が入り組んでいるのに、ずっと帰り道が一緒。どういうことですか?


 まさか、ストーカー??と思って、彼のほうに道を先に行かせるも、その道はあたしの帰り道なんですよねー。

 そうこうしているうちに、あたしの安マンションが見えてくるわけです。

 主にDランク冒険者が住んでいる安マンションで、Cランクの冒険者からは犬小屋とか呼ばれているマンションでなんですよね。


 まぁ、だけど、あたしはそのマンションのところで、彼とお別れなわけです。ここまで、帰り道が同じだと、正直キモイ。


「じゃ、あたしは、こっちのマンションなので。」

「えっ、俺もなんだが。。。」

「。。。」

「。。。」


 えっ。


 えっ、ちょっと待て。本当にストーカーか。


「え、そ、そうなんですか、すっごい偶然ですね。うふ、うふふふ。」

「そ、そ、そうでね。」


 一応、マンションはオートロック式。彼に先行させると、このマンションの住人しか認証できない顔認識機能で開錠される。

 ということは、本当にここの住人?。


 仕方なく、一緒に同じエレベータに乗る訳で、階の行き先ボタンを押そうとすると、彼の指先とあたしの指先が同じ階のボタンで触れ合うのですよ。え、噓でしょ。


「ま、まさか、同じ階ですか?」

「え、うそでしょ。」


 むしろ、彼のほうもかなり驚いている様子。その後のエレベータの中では気まずい沈黙の時間。


 エレベータが開き、ドアが開く。マンションはそれなりの高層階なの。

 眼下には迷宮都市ラビリンスが一面に広がり、心地の良い風が吹き抜ける。本来、それは疲れた体を癒してくれる気持ちいい光景のはずなのだけど、今は違うわ。心臓がバクバクしている。


 あたしは先に動かず、彼を先に行かせる。エレベータの先は右に行くか、左に行くかの二択しかない。

 どうか、彼とは違う方向であることを願う。が、見事にその期待は裏切られ、彼は自分の帰るべき方向と同じ方向へ向かって歩き始めたのだ。


「あなたも、こっちですか?」

「え、えぇ。」


 明らかに彼の顔もあたしを疑っている顔だ。


 しばらく歩くと間もなく自分の家のドアの前となる。

 そこで、あたしも、彼も、歩みを止めた。

 お互いにドアノブに手を掛けたまま、動きが止まった。


「え、もしかして、お隣さん!」

「え、隣人!」


 ―――


 今のご時世、隣人の顔すら知らないというのはよくあることなのだ。

 こうして、二人が隣人であることはわかったというところで、しばらく物語は時間を進めるのです。

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