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84人間を好きになってしまったバンパイヤの物語—少女との別れ(リア)

 

 あたしはね、少し気になって、そのメモに書かれた住所のところへ訪れたわ。

 そこには、独りの老婆がベッドの上で寝ていたわ。その子は白髪だらけで顔も皺だらけのおばあちゃんだった。

 でも、すぐに誰かはわかったわ。


 その老婆には、指がなかった。耳がなかった。鼻がなかった。。。

 皮膚も焼け爛れたような悲惨な跡が残っていたわ。


 昔、火あぶりにされたとい聞いていたけれど、間違いなく、あのときの少女だと気づいたわ。


 バンパイヤと人間、寿命が違うの。

 だから、あたしにとっては、ほんの僅かな時間かもしれないけれど、彼女にとっては大きな時間経過だったのでしょう。


 その老婆はもう、目もほとんど見えてない様子だったわ。でも、ベットに横たわりながら、言ったわ。


「会いたかったわ。」

「あたしもよ。」


 そのあとは、あのとき少女だった老婆と話をしたわ。

 あのときの少女は、火あぶりにされたそうだけど、逃げることができたそうね。でも、それからはつらい毎日だったそうよ。

 全身に重症を追ったまま、毎日が逃走の日々。

 ようやく追手から逃げられたとしても、その焼けど、体、顔から、周囲からは恐れられ、忌み嫌われ、まともに生きることはできなかったそうよ。


 あたしは聞いたわ。


「ねぇ、人間が憎い?」

「えぇ、憎いわ。。。でもね、でも、全員が全員じゃないの。中にはこんなあたしを助けてくれた優しい人もたくさんいたのよ。だからね、、、」


 段々と声が弱欲しくなっているわ。おそらくは、もう、長くはないのでしょう。

 少女だった老婆は、あたしの手を優しく手に取り、続けて話したわ。


「あのときのように、あなたがそうしてくれたように、”目の前で困っている人間がいれば助けてあげて欲しい。”」


 と。先日の男と、まったく同じこと言うのよ。不思議よね。でも、はて?「あのとき?」いつのことかしら。


「あのとき、あたしは道迷っていたわ。本当にどうしようもなくて、もう死ぬこと覚悟していたけれど、あたしはあなたに救われたの。ずっと言いたくて、毎日、あなたの元へ通ったけれど、言うことができなかったの。でも、今、改めて言うわ。『ありがとう。』」


 まぁ、この子は子供だった時にあたしが助けてくれたことをいまだに感謝しているのね。


「そう。良かったわ。」


 少しだけ彼女の握る手に力が入った。


「えぇ、その感謝だけが心残りだったわ。こうやって偶然に出会えたのも運命かもしれないわ。最後に、本当にあなたに会えてよかったわ。あなたは誰よりも心優しいバンパイヤ。とても素敵な人よ。」


 そして、握る手に力抜けました。その子は、そのまま、そっと息を引き取ったわ。

 命あるものにはいつか寿命が訪れる。人間というのは、その寿命というのが短いだけ。だけど、彼女の死に際はとても満足そうな顔をしていたわ。


 どうやら、彼女は知っていたようね。あたしがバンパイヤだったということ。

 彼女は、再び会えたことを偶然って言っていたけれど、おそらく、それは違うでしょう。


 あの謎の男の手引きしたんでしょうね。

 残念ね。せめて、あの謎の男の名前だけでも聞いておいばよかったわ。



 人間は卑劣で愚劣な種族。でも、全員が全員ではない。目の前で困っている人間がいれば助けてあげて欲しい。



 それが、彼女との約束です。そして、謎の男の言った言葉なのよ。


 バンパイヤっていうのはね、人間なんかよりも遥かに寿命が長いの。だから、たかがその程度の事件なんてあたしにすれば、ほんの一瞬の出来事。

 だから本来であれば長い時間が経つうちに忘れてしまうのでしょう。


 だけど、なぜでしょうかね。


 最近は、あの日の事件のことが、まるでついこないだの出来事のように、鮮明に思い出されるのです。


 そう、人間は卑劣で愚劣な種族。でも、全員が全員ではない。目の前で困っている人間がいれば助けてあげて欲しい。

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