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83人間を好きになってしまったバンパイヤの物語—男との出会い(リア)

 

 そして、一帯は焼け野原となりました。

 それで、ようやく、あたしの腹の虫も収まりました。


 その後は、焼野原となった一帯のなかで、ポツンと残った一軒家を利用して、しばらく再びの平穏を過ごしていたのです。


 ですが、すぐにその平穏は崩れました。

 どこで噂を聞きつけたのか。今度は魔女討伐のために、軍隊がやってきたのです。みな、鎧の来た兵士たちが、地平線を埋め尽くすほどの数でやってきたのです。


 あたしは、ただ平穏が欲しいだけだった。

 だというのに、なぜこれほどまでに邪魔をするのでしょう。


 ですが、迫って来るものは仕方ありません。あたしも、赤黒い大鎌を取り出し、対抗します。

 所詮は人間、我がバンパイヤの前に敵ではありません。ただ、迫ってくる人間を処分するというだけの単調な作業です。


 ところがですね、その中に少し変わった男がいたんです。


 周りは皆、鎧をきているというのに、汚れた布の服に、武器ともいえないような汚い短剣をもった兵隊さん。

 農村あたりで徴兵された兵隊さんでしょうか。


 でも、それでもあたしのやることは変わりはない。鎌を振りかざし、ひたすらに単調とも思える作業を遂行、、、


 、、、えっ。


 その男に向けて鎌を振りかざした瞬間、その男はあたしの背後を取り、その短刀をあたしの背中へ突き刺そうと、、


 カキン!


 あたしは、瞬時に反応し、その短刀をはじき返しますが、、、、えっ、、、


 男は、瞬間的にあたしの正面に立ち、その短刀をバンパイヤの心の臓のへ突き刺す前で、動きを止めました。


 もう、この男、一体なんなのですか?

 あたしも長いことを生きてますが、まぁ、たまには、こういう凄い人もいるものよ。


 さすがに心の臓をやられては、あたしも無事ではすみません。


 そこで男は口を開きました。


「なぁ、あんた、何か悪いことでもしたのか?」

「別に何もしてないわ。あたしは平穏に暮らしたいだけ。あなたはどうなの?あなた方が勝手に魔女狩りとか言って攻めてきただけじゃない。」

「私は命令されただけだ。」


 そう言うと、その男は、短刀をしまい、あたしにフードのついた上着を着せてくれました。


「その服装と髪型、髪色が噂で広がっている。あとで服装とその髪色、髪型を変えた方がいい。そうすれば、魔女には見えないだろう。」

「え?」


 彼は、あたしの手を取り、この多数の軍勢の中からあたしを逃しました。


「ねぇ、ちょっと待って。あなたは命令されていたのでは?」

「私も、ずっと、ずっと長い人生を過ごした。そのうち、誰が正義で、誰が悪なのか、よくわからなくなった。命令されたままに行動するのも楽だが、目の前で困っている人を放っておけるほど、非情ではないさ。」


 あたしには、「彼の長い人生を過ごした」という意味はわかりませんでした。けど、あたしも寿命の長いバンパイヤ。言わんとすることはなんとくわかります。


 ただ、気のせいでしょうか。どこかこの男からはとても懐かしい匂いがします。


「もし、あんたも、目に見える範囲で構わない。人間は卑劣な生き物であっても、全員が全員じゃない。もし、目の前で困っている人間がいれば助けてあげて欲しい。あの少女を助けたようにな。」

「?」


 あたしは、一言も少女のことなど話してはいません。

 なぜ、彼が少女のことを知っていたのかは定かではありません。

 彼は、あたしを離れた安全な場所まで連れてくると、荷物をまとめてどこかへ離れようとしていました。

 あたしが怪訝そうな顔をしていると、彼は加えて言うのです。


「なに。私はただの傍観者だ。これまでの出来事をただ見てただけだ。」


 あたしは、彼はあたしをただ討伐しに来た人間だと思ってました。

 ですが、彼は少し違ったようです。ますます不思議な人間です。


 そう、人間は卑劣で愚劣な種族。でも、全員が全員ではない。


『目の前で困っている人間がいれば助けてあげて欲しい。』


 彼の言い残した言葉は、どこか、遥か昔の自分も似たことを言ったような記憶があるのよね。でも、その言葉が、今もあたしの原動力になっているの。


「ここへ行くといい。あの少女は酷い目にはあったようだが、あんたのおかげで生き延びたようだ。」


 ふと、彼が差し出した小さなメモにはある町の住所が書き込まれてました。

 彼の言うことには少し謎が多いようです。


 それに少し気になったっことがあります。

 やはり、どこかこの男からは懐かしい匂いします。はて?昔、どこかで会ったか?

 まぁ、会ったとしても、こうも寿命が長いと忘れてしまうものなの。


「あなた、、、昔、どこかで会ってない?」

「さあな。まぁ、長く生きてれば、どこかで会ったりしているかもしれないな。だが、今日はあんたと会えて良かったさ。」


 そのメモを受け取り、ふと顔を上げます。


「あら?」


 彼はもう、そこにはいませんでした。

 謎な男です。真相はわかりません。彼は少しあたしを知っている雰囲気がありました。

 昔、どこかで会っていたのでしょうか。


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