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79二人の銀髪(タツヤ)

 

 二人が対峙するその場所。

 そこはラビリンスの中心街の大きな広場。

 広場の中心には天井にまで枝葉を伸ばす大木があり、キレイな花壇が整えられ、音楽を奏でる者や、大道芸で人を楽しませる者など、人々の憩いの場所だ。

 夏祭りになると、そこへ大勢が集まり、皆、浴衣を来て踊るのだ。


 だが、今は、とても広場といえるような場所ではない。

 至る所に瓦礫が広がり、陥没した穴が開いている。


 そこに、二人の銀髪の女性が対峙する。

 一人は深紅ドレスに身を包み、宙を浮かぶ。そして、もう一人は小柄で地上で相対する。


「あれ?」

「あら?」


 そこで、気づいた。霞も気づいたようだ。


「あの人、、、地図屋さんの店員さんじゃない?」


 一人はアイギスだが、もう一人は、いつもお世話になっている「小さな地図屋さん」の店主のリアではなかろうか。

 普段は店主をしている印象しかないが、今日のリアは少し違う。目つきが鋭く、本気で怒っているように見える。


 周りには非常事態宣言で集められた多くの冒険者たちが集まっているが、二人の様子を傍観する、というより、二人の間の空気が凍てつき、その間に入ることを拒むような、雰囲気が感じ取れ、中に入ることができない。

 皆、固唾を飲み、その様子を見守っていた。


 バチン!


 突然、広場の中心から音がし、直後、衝撃波のようなものが広場の中心部から輪状に広がり、爆風が吹き荒れた。


 二人は同じ場所に対峙しており、一見、何か起きた様子はないようにも見えた。

 だが、よく見ると、アイギスに足元には、あのハエたたきが二つに折れて落ちている。

 他の冒険者には、何が起きたか見えなかっただろう。

 だが、自分には、キチンと何が起きてかを見て取れた。


 ほんの一瞬だが、二人は互いに刃を重ねたのだ。アイギスは、手に持っていた、いつものハエ叩き、リアは、魔術で作り出したと思われる赤黒い鎌。その二つが重なり合い、リアの刃がアイギスのハエ叩きを砕いたのだ。


 というか、まだ、あのハエ叩き持っていたんだな、と思うも、それはさておく。

 二人は、何かを話しているようだ。だが、こちらの方までは、声は届かない。


 リアのことは今まで普通の店員さんだと思っていた。アイギスと戦えるほどの技量を持っていたとは知らなかった。

 昔は、冒険者でもやっていたのか。


「あの店員さんって実は凄腕なのね?」

「うーーーん、前に会ったときに、気になっていたけど、あのリアっていう人、なんか臭うのです。」


 普段、リアを知らない霞とアリエル、二人が適当にリアのことについて話していた。


「おい、アリエル、こんな場とはいえ、女性に臭うとは失礼だぞ。」

「別に臭いって意味じゃないわよ。臭さならあんたの加齢臭の方が凄いわよ。そうじゃなくて、人間の匂いじゃなくて、アイギスと同じ匂いがするっていうこと。ねぇ、タツヤ、もしかして、あのリアっていう人、人じゃないんじゃない?」

「は?」


 リアが人じゃない?


 一体、何を言っている?っていうか、俺は加齢臭なんてしないぞ。 

 アリエルの言葉に一瞬だけ、頭が空っぽになった。


 そんな会話をしていた次の瞬間だった。

 アリエルの方を向いていたので、何が起きたか見えなかった。

 けども、アイギスは何かの魔術を放出した。一瞬だけ、まばゆい光線がこちらに降り注ぎ、瞬時にこれはまずいと直感が知らせる。


「やばい!逃げろ!」


 アイギスを中心に、紫色状のものが、急激に球体上に広がり、時折、バチバチと稲妻のようなものを放出する。

 瞬時にそれが、普通の攻撃はではないと感じ取り、霞の手を引き、瓦礫の陰に急ぎ身を隠す。


 砂煙が巻きあがり、視界が遮られ、その中心部では何が起きているのかは見えない。

 時間が少し経過すると、徐々に砂煙が落ち着いてくる。


 元々辺りには瓦礫が散乱していたが、その瓦礫がさらに粉砕されて、形すらなくなっていた。

 そこには、元々建物が立ち並ぶ繁華街だったはず。それが今は洞窟の中の荒野となり、そこに、なおも二人の銀髪が不動のまま立っていた。


 周囲の冒険者を見渡すが、皆、振るえ上がり、動けるような状況ではなさそうだった。


「霞!アリエル!行こう。アイギスを倒そう。」

「もちろんなのです。」

「えぇ、わかってるわ。」


 俺たちは立ち上がる。


「おい、Dラン!、お前ら本気であれを相手にするのか?ありゃSランク級だぞ。」

「だから何だ?ランクが上なら相手しないとでもいうのか?ランクとか、そんなもんどうでもいいだろ。俺たちは行く。これでもラビリンスには世話になったんだ。」


 話しかけてきたのは、例の冒険者だ。

 この世界の人間は本当にランクというものが好きらしい。自分の街が壊されるというのに、ただ見ているだけ。自分よりも強敵からは逃げ、自分より弱い弱者を痛ぶるだけ。まぁ、人間なんてそんなものだろう。


 アイギスは強い。

 だが、こんなことは過去の転生でいくらでもあった。どうみても自分よりも遥かに強敵と何度相まみえたことか。

 だが、今回は一人じゃない。

 霞もアリエルもいる。


 過去に幾度となく転生したが、どこも荒廃し、日々が生きるか死ぬかの毎日だった。それに比べれば、このラビリンスは天国のような場所なんだ。

 それを壊そうとする者がいるならば、俺は決死で止めるさ。


 それよりもリアだろう。

 何せ、あのアイギスの攻撃を微動だにせずに受けたのだ。

 これが、ただの店員さんになせる業か?

 過去に冒険者の経験があったとして、あの攻撃を微動だにせずに受け止められるか?


「アイギスと同じ匂いがする。」


 アリエルが言った言葉が再び頭の中で反芻される。


「リア、、、あんたは何者なんだ?」


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