74集団行動(タツヤ)
そこにある風景は、もはや、俺の知っているラビリンスではなかった。
建物は崩れ、煙が上がり、人々は逃げまどう。
もはや、地上の戦禍となんら変わりない有様だ。
ラビリンスでは非常事態宣言が出された。
非常事態宣言が出されると、冒険者は半強制的に招集させられ、特定の班へと編入させられる。俺も同じだ。
一緒に行動を共にしている冒険者とは、考慮されるようで、霞とは同じ班になった。
アリエルには、いつもの魔術で人に見えないようにしてもらった。
ただ、正直、班による集団行動はあまり好きではない。
「けっ、Dランクかよ。使えねぇな。俺らが、お前に荷物持ちの仕事でも与えてやる。活躍の場があることを光栄に思うんだな。俺たちの邪魔すんじゃねぇぞ。」
どこだかの冒険者が俺に言ってきた。
別に、いつものことだ。こういうのがあるから、集団行動は好きではない。どこにいても、結局はこうなる。
それは、転生をする前の人生でもまったく同じこと。
小学生?毎日腹パンされ、邪魔だと言われ、女子からは菌がうつる、臭い、近づくな、と言われていた記憶しかない。
中学生?毎日誰かのパシリにさせれられていた記憶しかない。
高校生?いつも金を巻き上げられてた記憶しかない。
結局のところ、何も変わらない。転生した今もなお、こうやって人から嫌われ続ける。それが、自分の運命なのだろう。転生したところで、何も変わらない。変わるわけがない。
「ちょっと、あんた、その程度の荷物ぐらい自分で持ちなさいよ!」
突如と声を発したのは隣にいた霞だった。
両手を腰にあて、堂々たる仁王立ちで、声を発した冒険者に噛みつくように睨んでいた。
ただ、アイギスによって服装を取り換えられていて、俺たちはタキシードにドレスという姿。
仁王立ちで立つ霞だが、ちょっと、場違いすぎるのは認めるとして、余計なことはしないでいい。
そのあとも霞はその冒険者に噛みついてたようだが、正直、余計なことはしないでいい。別にいつものことだから。
「は?てめぇ、同じBランクかもしれねぇけどな、毎日、てめえらのために働いてんだよ。」
「だから?」
「雑魚は、俺の言うことを聞いてりゃいいんだよ。てか、てめぇら、そんな服装でやる気あんのか?」
ボン!
相手は、嫌がらせか、小さな炎の魔術を撃ってきた。
さすがに、まともに受けるつもりはない。俺はそれを軽く抜刀して両断し、躱す。
だが、両断した炎の破片が霞のほうへと飛散すると、霞はそれを相手に向けて指ではじき返した。気を込めたことで、最初の炎よりも豪炎になり、威力は数倍に膨れ上がっている。
カウンター攻撃どころではない。
一応、相手はシールドの魔術で事なきを得たようではある。
「て、てめぇ。」
「そんなんで嫌がらせなんて、情けないわね!ただ、服装が、、、場違いなのは、、、認めるわ。」
その冒険者はこちらを睨むように見てくる。
言っておくが、俺は何もしてない。俺は躱しただけ。威力を増大させてはじき返したのは霞だ。
だというのに、まるで俺がやったかのように睨んでくる。こうなるのは、いつものこと。
だから、霞には余計な波風を立てないでほしいと、そう思った。
だが、霞もこちらを睨み、向かってくる。
「あんたも、あんたよ!少しは反抗しなさいよ。あんただって、あんな奴より実力あるのはわかってるでしょ。」
と言いながら、俺の背中をバン!と叩く。
その言葉に周囲が反応し、再び、小声が聞こえてくる。
「あいつが、あの冒険者より実力が上だと?」
「だって、あの人、Dっていうことは魔術使えないんでしょ?」
「ただのオッサンでしょ。何が出来るっていうのよ。」
「てか、なんでタキシードに、ドレスなんだよ。」
実力が上とか、ランクがどうとか、そんなこと、俺にはどうでもいい。
生きるためにはお金が必要で、一応は冒険者として登録しただけのこと。
冒険者というのは、ランクとか階級にやたらに固執する傾向があるが、誰より上とか、誰より下とか、そんなことには興味ない。
まったく、この世界のランクシステムというものは、邪魔でしかない。
ガサッ
そんなときに、背後から何かの物音が聞こえた。
俺たちの班への命令は、アイギスが生み出したという眷属の対処だった。
アイギスは、このラビリンスに来ると、自身の血から、眷属と呼ばれる兵士を生み出したそうだ。
その眷属たちが、周辺で暴れているらしい。
今、何をしなければならないかは、他の冒険者も理解できてるようだ。
こんな、Dランクとか、Bランクとかの話より、今は優先されるべきことがある。
皆、音がした方向を向いて構える。
ただ、指揮を取り始めたのは、さっきの冒険者だ。
「おい、あんた、まわりにも気を配れ。相手は一人とは限らねぇぞ。おい、お前、ギルドの司令部に俺たちの場所を伝達しておけ。万一の場合は応援と、医療班を要請するかもしれないからな。それから、そこ!固まるな。できるだけ散れ!攻撃範囲が広ければ、一撃で全滅だ。」
それなりの経験があるのだろう。命令は的確で、場慣れもしているようだ。




