71霞の過去へ(タツヤ)
只野馬場駅。
駅を降りると、たくさんの若者たちで溢れかえっている。
周囲にはたくさんの大学があり、専門学校があり、学生で溢れかえる町。只野馬場。
あれっ?
なぜ、自分はここにいる?
一瞬、訳がわからなくなった。
だって、霞の転生の過去を見ようとしたのに、突然、現代社会に戻ってきたのだから。
自分はこの風景をよく知っている。
だって、ここは自分の大学のあった町。いつも通学で通っていた場所。
自分が転生する以前の世界だ。
少し、落ち着いて冷静になって考えてみる。
その間にも、さすがの都会なのか、駅から降りる大量の人たちが俺の両脇をかすめ、通り過ぎていく。
あぁ、わかっている。わかってるさ。
霞の顔を見て、霞の過去の世界へ来てみたら、この世界に辿り着いた、ということは、ある推論が成り立つ。
でも、この推論は自分には事実だとすれば衝撃が大きすぎて、受け入れることが出来なかったのだろう。
この世界に辿り着いた、ということは、霞も自分と同じ場所、同じ時間を生きていたということなんだ。
霞があの人によく似ているとは思っていた。
しかも、霞は自分と同じく転生を繰り返していた。
そして、霞と自分は、同じ世界、同じ時間、同じ場所を過ごしていた。
こんな偶然の一致があるだろうか。
あるわけがない。あるわけがない。。。はず。
でも、心の奥底では、これはきっと単なる偶然だと、どこかにそう願う自分がいた。
顔がそっくりな人、同じ転生をした人、同じ世界、同じ時間、同じ場所にいた、ただ霞は記憶がないだけ、だというのに、なおも、自分はそれは、単なる偶然だと言い張るのか?
否。
ここまでくれば、もう信じるしないだろう。
こんな偶然があってたまるものか。
だったら、やることは一つしかない。
俺は駅から大学へと足を進める。最初は、進める足はゆっくりだった。けど、急ぎたい、その思いからか、進める足が徐々に早まる。そして、気づけば走っていた。
ぶっちゃけ、走るぐらいならバスで行ったほうが早い。
でも、それすら忘れ、自分は走っていた。
そして、大学のキャンパスに辿り着く。
キャンパスにつくも、大学内は無駄に広い。何号館、何号館、と建物がいくつもあり、しかも、複雑怪奇に入り組んでいる。
どこに行けばよいのかもわからないので、適当に行き当たりばったりに、適当に探すも、周りは人、人、人。
こんなんで見つかるわけがない。
次は、サークルの部室に行ってみる。
まだ、昼間なのか、いつもは暇人がいるはずだが、今日に限っては誰もいない。
次に、いつもサークルの練習に使っていた公園へ行く。多くの大学生がダンスなどの練習をしているが、あの人の姿は見当たらない。
そうであればと、いつも昼飯を食べに行っていた店に行くも、あの人はいない。
移動する間にも、通行する人たちの顔をじっくりと見てみるが、やはり、あの人はいない。
食堂、教室、図書館、思いつくようなところにはすべて足を運ぶが、あの人はいない。
時間は夕方になる。夕方なれば、部室にも現れるのではないかと思い、再度、サークルの部室に戻る。
そこには、懐かしい人たちがいた。
自分が大学生だったときの、先輩たち、後輩たち。
自分が姿が見えてないのだろうか、意識されることはない。
だが、いない。
再び、いつも練習に使っている公園を見まわしたり、キャンパス内をくまなく歩き続けるもいない。
とにかく、探しまくる。
だって、もう、こんなことは二度とないかもしれないんだ。
今までに何回転生をした?、ここまでに何年も時間がかかったか?
気の遠くなるほどの永遠のような時間を過ごした。生きる意味を失い、ただ、時間が過ぎるだけの毎日。
でも、天は裏切らなかった。俺に、こんな二度とないチャンスをくれたのだ。
きっと、霞は、、、。
探す、探す、探す、でも、あの人がいない。まったく見当たらない。
この世界のこの場所、この時間に来たということは、この近くの場所にいるに違いないのだ。
大学からの帰り道の途中なのかと思い、駅へと向かって歩く。
その間にも、通行する人たちの顔をよく見るも、まったく見つかる気配がない。
そして、駅の近くの踏切に来た。
カンカンカンカンカン
けたたましく鳴り響く警報音。
ちょうど、その向こう側にある女性が歩いているのが見えた。
あっ。。。
気のせいだろうか。その後ろ姿は、自分がよく知っている女性の後ろ姿が見えた。
それは、あの自分が探し求めていた、先輩の姿にも似て見えた。
えっ。
もしかして。。。
カンカンカンカンカン
踏切は今なお、けたたましく警報音が響き渡る。
「あの、、、」
声を出した。けども、自信がない。自信がなくて、その声は踏切のカンカンカンという警報音に消されてしまう。
もう一度、声を出そうとするも、勇気がでない。
あれほどまでに一生懸命に探したというのに、なぜ?なぜ?
もう、チャンスはないかもしれないんだぞ!
そう、自分に言い聞かせるも、勇気がまったくでない。
だって、ただ似ているだけかもしれない。ただ似ていただけという単なる偶然かもしれない。
でも、こんな偶然なんてあるわけがないんだ。
俺は手を伸ばし、声を出そうとする、でも声は出ない。
こんなチャンスは二度とないんだ。俺は踏切越しにもう一度声を出す。
「あの、、、すいません!」
そこへ勢いをつけて、左から右へと列車が通過する。一両、二両と通過していく。
ガタンガタン、ガタンガタン、ガタンガタン
最後の車両が通過したと思いきや、次は右から左へと、列車が通過する。
ガタンガタン、ガタンガタン、ガタンガタン
やっと踏切の遮断機が開くが、そこに、人の姿は既になかった。。。




