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69ここはどこ?(タツヤ)

 

 それから、どれだけの時間が経過したのかわからない。

 空間でさえ歪んだ世界のこと、きっと時間ですら、歪んでいるだろう。時間など、些細なことなのかもしれない。


 少なくとも、自分はあるところで気がついた。


 周りには一切なにもなく、視界はすべて真っ黒。

 一切、光が入ることなく、自分が目を開けているのか、いないのかすら、区別がつかないような漆黒の闇。


 体の感覚はあるも、足には地面の感触はなく、まるで宙を漂うような感覚。

 手足を動かしても、体を動かしている感覚はあっても、何かに触れるような感覚はない。

 音はない、匂いもない、触覚もない、まさに五感を遮断された世界。

 それは、まさに「無」という一文字が表現するのに適しているような世界だった。


 はて?おれは、どこかで似たような世界を体験している気がする。


 ひたすらに、その無の世界を漂いながら考える。

 考えているうちに、ふと、思いだす。


「死」


 あぁ、そうか。死んだのか。と、そう思った。確かに、死後の世界に似ている気がする。

 よーく見ると、闇の中の奥のほうに、ポワンと光る球体が数個ほど徐々に見えてくる。

 あの球体は転生先の世界だ。あの一つ一つが転生先の世界で、あの球体に取り込まれることで転生する。

 何度も死んで転生したのでよく覚えてる。


 なので、俺たちはあの大穴の最奥に達し、死んでしまった。そして、再度、転生する世界へ来た、と最初は考えた。


 だが、それを否定するものがあった。

 俺はバラバラにならないように、霞とアリエルと互いをひもで結んでいた。

 そして、今、自分の隣に腕にひもを結んだ霞と、胴体をグルグル巻きにされているアリエルがいた。


 死後の世界に似てはいる。けども、これまでの転生と違って、霞とアリエルもいる。


「うぅ。」


 霞は気づいたようだ。目を覚ますが、この周囲の様子に呆然としていた。


「な、何これ?ここはどこ?あたし、確か、穴の中を下っていたような。。。」

「俺にもわからない。おそらく穴の最奥なんだろうな。」


 アリエルは、グルグル巻きのまま、まだ気持ちよさそうに寝ている。


「むにゃ、むにゃ、もっと、もっと、巻いて。。。むにゃむにゃ。」

「。。。」


 アリエルのことは放っておこう。

 それよりも、白い球体が近づいてくる。

 いつもであれば、それは転生先の世界なのだ。だが、少し違うようだ。

 近づくにつれて、脳内にその白い球体の中の世界が広がる。


 ひたすらの草原、草原といえども、元々は都会だったのだろうか。無機質な建物の残骸が所々に草原から頭を出す。

 時折、赤茶色に錆びたポールが見受けられ、信号機なのか、電柱なのか、もはや区別すらつかない。

 一面草木が生い茂り緑で覆われてるが、風が吹けば、さざ波のように濃い緑と淡い緑の濃淡が一面に広がる。

 空は青く、鳶が大きく円を描きながら飛び回り、とてものどかな風景。


 おそらくは、地上の風景だろう。

 前に見たときは、戦争によって、あらゆるものが破壊され、草木さえ生えず、コンクリートの破片だらけの荒野が広がっていたが、時間が経過したのか。


 そう、思った時だった。


 突然、世界が変わり始めた。

 まるで、時間が高速に逆戻りするかのように、世界が慌ただしく変化する。


 草原であったとこは、駐車場や大きな公園となり、残骸になっていた建物は、元の立派な高速ビルへと戻る。

 赤茶色に錆びていた信号機も新品のように綺麗になり、草木がなくなったと思えば、線路が縦横無尽に現れ、多くの列車が頻繁に行き交う。


 駅のホームには多くの人、道路には無数の車両が列を成す。

 駅前の広場には、イベントでもないというに無数の人が集まり、談笑しているのか。

 ブレザーにチェックのミニスカート、バックにはたくさんぬいぐるみをつけて、たぶたぶのルーズソックスをはいた女子高生たちが集まっている。


「まじ、やばくない?」

「え、ヤバ、超かわいいんだけど。」


 そんな会話がすぐ耳元で聞こえてくる。まるで、戦争の前の風景そのもの。


 だが、そんな脳内に広がるイメージも、無の世界にある白い球体が通り過ぎると、すぐになくなり、再び一面が真っ暗な世界が広がった。


「ねぇ、これって??」


 隣にいる霞が声を出す。


「俺もわからない。だけど、この世界のどこかの今の風景と、その過去の風景のような気がする。」


 俺はもう一度、先ほどの世界が見たいと願った。

 すると、数ある球体の中から、直感でこれだという球体が目に入った。


 再び、手を近づけ、接近する。

 先ほどと同じく、無機質な残骸が広がる廃墟が見える。建物の残骸の上に、大きな木が枝葉を伸ばしている。

 手を離せば、その脳内に広がるイメージは去っていく。


 ここの世界が分かってきた気がする。

 先ほどまでいたのが、大深度の地下、重力の影響を強く受け、時間や空間が歪んだ世界、そして、ここは、さらに地下深い場所、空間や時間といったものを超越し、理すら歪ん世界に辿り着いたのだろう。


 そして、自分が思えば、自分の思った世界が見つけることができる。。。そんな世界。


 これまで、何度何度も転生したが、こんな世界に辿り着いたのは初めてかもしれない。

 そこで気づいたのだ。


 俺は霞の顔を見る。

 霞も転生者だった。もしかすると、この世界で霞が過去にいた世界が見えるのではないかと、そう考えたのだ。


 そっと霞の顔を横目で見ながら、霞のことを想う。

 すると、先ほどと同じように、白い球体が脳内に焼きついてくる。その球体にそっと近づき、俺は手を添えた。

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