7霞という冒険者のある日の朝(霞)
あたしは、霞。一応、Bランクの冒険者よ。
好きなものは金、世の中、金よ金。興味ないことは一切金をかける気はない。
だからこそ、Bランク冒険者が住んでる高級マンションでなく、Dランク冒険者が集まる安マンションに住んでいるわけよ。寝ることさえできれば、それでいい。それがあたしの考え。
まぁ、それはそれとして、今日は今日で、一日が始まるわです。
あたしの朝は遅い。
遅い朝食をとり、寝ぼけなナマコで安マンションの外に出る。そのとき、寝ぼけたせいか、目の前のCランク冒険者に気づかなかったのです。
Cランク冒険者の前に立ち、偶然にも通路を塞いだ形になったのよ。Cランク冒険者からすれば、安マンションに住んでる低ランク冒険者が道を塞いだように見えたのでしょう。
「おい、じゃまだ、雑魚が。」
そう声をかけるのはCランク冒険者。こういう勘違い冒険者と行き違うことは、このマンションに住んでると、よくあること。これがこの世界での普通というものよ。
「ふぁ~、あ~あらあら、すいませんね。」
どうやら、あたしはまだ半分寝ぼけていたようでしたが、面倒なので、素直に誤って道を譲るのです。
「ふん、魔術も使えない雑魚が。誰のおかげで平和が守られていると思っているんだ。とっとと道を譲って平伏して、そのありがたみを示すんだな。ふん。」
いつもは、それで済むんですけどね、なぜか、その日に限って、心の言葉が表に出てしまったのですよ。
「何よ。偉そうに、魔術が使えるだけのくせして。」
「あぁぁあああぁぁ?、あんだと、この『ばばぁ』が!使えるもんなら、魔術使ってみろよ。この雑魚が、」
Cランクというのは、下手でもいいから魔術が使えるレベル。この街ではCとDランクの間に魔術が使えるかどうかで大きな壁があるのよ。
相手は掌に炎を纏わせ、襟首をつかみ、脅しに来る。
「!!」
それに対して、あたしも目が覚めて、ブチ切れたわけです。
別に、あたしも大人なので、脅されたぐらいでは怒りません。そんなもんに対応してたらキリがないですからね。
それよりも、、、、
「あぁああぁぁぁぁぁあああ!!!!『ばばぁ』、だと。おい、てめぇ、どこの誰が『ばばぁ』だと!?」
そう、『ばばぁ』と言われたことに対して。この美しく可憐なあたし対して『ばばぁ』ですと?
あたしはBランクの冒険者。一応ね。Cランクとは違い、魔術を使いこなせるレベル。
あたしの体から、全身から豪炎が吹き出し、その体を包み込むように烈風が舞う。
どうやら喧嘩を売った彼は気づいたようです。
あたしの首に飾られたプレートはDランクではなく、彼よりも高位のBランク。
目の間の前に広がる豪炎を纏いし烈風は、もはや街を呑み込むほどの勢い。彼はおもわず、尻もちをついた。
「す、す、、、すいません。まさか、Bランクとは思わず、、、というか、本当にBランクですか。Aランクの間違いでは??」
「Bランク?Aランク?、そんなのどうでもいいのよ。あんた、あたしをなんて呼んだ??」
「へっ?」
「貴様、あたしを『ばばぁ』って呼んだろ。」
「え、いや、そ、その、きっと何かの聞き間違いかと。いや、キレイなお姉さんですね、は、はは、、はは。」
「あら、ありがと。」
ニコッ。
その後、その冒険者を街で見かけることはなくなったそうな。
その日、ある安マンション付近では、竜巻のように烈風が巻き上げながら渦をまく豪炎が目撃されたらしいわ。
近隣住民たちは、家の中へ避難したそうで、誰も出歩く人はいなかったそうよ。