66飛び込むべきか(タツヤ)
「ねぇ、どうする?」
「どうするって。。。」
ふと、横目でアリエルは大穴の淵でクンカクンカと犬のように匂いを嗅ぐような動作をしている。
「うーん、気の残滓が残ってますな。」
「わかるのか?」
「あたしを誰と思ってますの?」
「ただの羽の付いた犬だが。。。」
「おい!虫から進化して犬になってとるやん!じゃなくて、可憐で超が付くほどの優秀な妖精なのです。妖精の手にかかれば、気の残滓ぐらいわかるのです。」
俺は大穴の淵に近づく。場所で重量力のかかる方向が違うのだ。
大穴に近づけば、近づくほどに、大穴の中へと重量場が集中し、吸い込まれそうになる。
そこで、ふと、地面に転がる小石を手に取り、そっと手を離す。地面に落ちつつも、大穴の方へと引き寄せられ、そのまま穴の中に吸い込まれていく。
大穴の中も重力の方向が違っているのだろうか、三次元的な不思議な軌跡を描きながらも、小石は音もたてずに穴の奥へと吸い込まれていった。
「ねぇ、これって、さらに地下へ通じるっていうことでしょ?でもアイギスって人間を探しに、ラビリンスを目指したんでしょ?」
「なぁ、アリエル。アイギスは間違いなくここを通ったのか?」
「そうね。。。グローリーホールの方には残滓はないですな。」
俺たちは再びアースホールの大穴を覗きこむ。漆黒の最奥が今もなお虹色に揺らいでいる。
ここに飛び込んだら何が起きるのかまったくわからないだろう。
「ねぇ、まさか、、、、行くの?」
霞は俺に聞いてくるも、俺も同じ心境なのだ。とても、ここに飛び込むような勇気はない。
だが、アリエルによれば、アイギスは間違いなくここを通ったという。
行くべきか、行かないべきか。心の迷いは生じる。
「霞はどう思うよ?」
「えっ、あたしは。。。。タツヤは?」
「えっ、おれは。。。。アリエルは?」
「知らんわ。まったく優柔不断な種族め。空を飛びながら入ればいいのです。」
「・・・。」「・・・。」
アリエルは羽をバタつかせながらも、空中に留まっている。
そのとき、再びのデジャブ感と、底知れぬ不安を感じたのは霞も同じだろう。
だが、確かにその通りだ。確かにここでは重力が向いている方向がめちゃくちゃだが、グローリーホールの作戦のように、魔術で飛べばいいんだし、ヤバかったら、戻ればいいわけだ。
だが、、、こないだのグローリーホールのように、途中で、自由落下なんてごめんだ。
ジーっ。
俺は空中で羽をバタつかせているアリエルをジーっ、と見つめる。
「やだ。そんなに見つめられたら照れちゃうわ。」
とアリエルは、両手を頬に当てながらも、体がくねらせるが、そこに俺は、ゴン!と、アリエルのこめかみを両手で挟みこみ、さらにそこからジーっ、と見つめる。
「わ、わかってるわよ。だ、大丈夫よ。こないだみたいなフリーフォールみたいな遊びなんてしないから。」
「なら、いい。けど、次にやってみろよ。どうなるかわかってるな?」
と俺は、アリエルのこめかみに当てた両手でこかみをグリグリとするのだ。
「わ、わかってるから、、、やめてー。」




