61主なき城での胸キュン場面(タツヤ)
主のいなくなった城は、薄暗く、冷え切っていた。
俺たちは、城の暖炉で、暖を取りながら、その日の夕餉を取り終えたところだった。
ちなみに、アイギスのせいで服を俺はタキシードに、霞はドレスに変えられてしまった。服を探したが見つからない。
しかもアイギスとの戦いのせいでタキシードもドレスも汚れた。
まったく余計なことをしてくれる。
アリエルは俺の頭の上にちょこんと座っている。
「おい、頭の上に座るのいいけど、お願いだから、おならとかすんなよ。」
「な、失礼な。妖精はおならなんてしないのです。」
「ねぇ、それよりどうするのよ?」
霞はどうするの?と声を掛けるが、霞が抱えている袋には小さなレッドダイヤの詰められてパンパンだ。
説得力がない。
あのあとどうなったか?
そう、俺は転生した。ただ、転生した直後というのは、記憶があいまいになる。
気づけば、目の前には大きな羽虫が飛んでいるもんだから、つい駆除してしまいそうになった。
「だから、あたし、虫じゃないんですけど。」
一旦、アリエルのことは放っておくが、記憶があいまいでも、霞のことだけは、ちゃんと覚えていた。
自分が転生する以前の、想いを寄せた大学のあの先輩によく似てたから、かもしれない。
霞は、あのとき、確かにアイギスにやられた。
でも、自分が転生するとき、数ある転生先の中から、霞のいるこの世界を選んだ。そして、霞が生きている世界へと改変した。
そして、今は、俺は、再び霞のいる世界、、、あとアリエルもだけど、今まで通りのこの世界へ戻れたのだ。
「ちょっと、今、あたしのこと忘れてなかった?」
「うん?気のせいだ。気にするな。」
そのあとは、アイギスを探して、城の中を探索したんだ。
城は、どこも蜘蛛の巣だらけで薄暗く、ホコリまみれに戻っていた。
アリエルは、前にも来た、というか、お宝を盗みに来ているので、やたらに城には詳しかった。
アリエルの一押しは地下の宝物庫だが、アイギスはここに来ることがわかっていたのか、それはもう何重にも鍵が掛けられ、さらに、封印の魔法陣の印がなされ、扉は開きそうになかった。
そこに、ちょうど城内でこの暖炉を見つけたので、火をともして集まっていたのだ。
夕餉をとり、今に至るというわけだ。
「アイギスを追おう。でも、今日は寝よう。明日、周辺を調べて、アイギスの痕跡を探そう。」
「そうね、わかったわ。」
転生したというのもあるのだろう、俺も霞も疲れたが溜まっていた。その場で川の字になって睡眠を取ることにしたのだ。
霞は年頃のお姉さんなわけだが、気にすることなく、みんなで川の字に横になる。
さすがに霞のほうを向いては寝れないので、背を向けて寝る。
疲れを感じているのに、全然寝付けない。。。
そんなときに、アリエルも寝れてないのか、小さな声で話しかけてきた。
「ねぇ、ちょっと、あんた。気なることがあるんだけど。」
「な、何だよ。」
アリエルが珍しく、話しかけてくるのはいいが、若干が顔がいやらしい。
「ねぇ、あんたさ、あの霞っていう子が好きなんでしょ?」
「ぷーっ!」
思わず噴き出した。
「 You!告っちゃいなよ!」
「ば、バカ野郎!な、何を言ってるんだ?」
「あら、動揺するとは図星ですな。」
大迷宮を探検すると、たまに黒茶色の六足歩行の平べったい虫に遭遇する。
奴は地上のそれより遥かにデカい。そこで、必ず即効性強力殺虫剤、GKジェットプロ即効タイプを携帯してるのだ。
俺は荷物から殺虫剤を手にし、横目でニヤケた顔している羽虫を殺虫してやろうかと思った。
「あら、タツヤ、あたしのこと好きなの?」
背後から、霞の声がした。
ゲッ。聞かれていた。
ヤバい。顔面がこの世界を業火に包み込まんとするほどに赤面する。
「べ、べ、別に。。。」
顔面から地獄の業火を噴き出しながら、冷静を取り持った振りをし、必死に返答するも、口がどもってしまう。
「。。。ふーん、、、好きなくせに。。。」
と言って、霞に俺の背中をつんつんされた。
「な、え、ちょっと。。。」
もう、何も言えない。そのまま業火に焼かれて、宇宙の塵になりたい。
「ねぇ、タツヤ、今度さ、ラビリンスで夏祭りがあるでしょ。せっかくだし、一緒に買い物しながら回らない?とちょっと、欲しいものがあるのよ。」
「あ、あぁ、いいけども。」
そう、ラビリンスでは年に一回、夏祭りが催される。そのお祭りで霞のような女性と一緒に買い物デートだ。
「ちょうどリアの小さな地図屋さん、ていうお店があるでしょ。その反対側に気なるお店があるのよ。」
ちょっと待て。
俺は小さな地図屋さんの店主、リアに地図を卸しているから、あの場所はよく知っている。
その反対側のお店とは、ラビリンスの中でも有名な超が付くほどの超高級装飾店。
ちらっと見たが、店のショーウィンドウには、キラキラと光る指輪やネックレス。その下に小さく値段が書かれていて、、、ゼロの数を数え間違えそうなほど、ゼロが沢山ついていた。
「あたし、ちょうと、ネックレスが欲しいと思っていたの。あれ欲しいんだけどなぁ。。。」
と言って、俺の背中に顔の額を当ててきた。背中にほのかな温かみが感じられるのはいいのだが、、、
「ちょっと待て。ちょっと待て。」
重要なことなので二回言った。下手をしたら、俺の財布が空になる。
なんか俺、ダサまれてないか。
「何よ。ケチね。」
と背中越しに霞に言われたが、自分の目線の先に、ある羽虫がおり、その羽虫がとんでもないほどのいやらしい顔をしている。
俺はもう一度、荷物の中からGKジェットに手を伸ばすのだった。




