59グローリーホールの奥から(朱音)
今、グローリーホールの最奥で何かが光ったような気がするであります。
気のせいでありましょうか?
もしかして、で、ありますが、彼が、ベベルが、、戻ってきた?
いや、そんな訳ないのであります。だって、彼が飛び込んで、もう年単位の時間が過ぎているであります。
魔獣の可能性もあるのです。
すぐに、腕に装着した超小型モバイル端末(Enemy Detection System:EDS)で確認するのですが、EDSには何も生命反応はないのであります。
であれば、気のせいでありましょう。
そう、思って再び、グローリーホールの穴を覗き込んだのであります。
「!」
覗きんだ瞬間に、グローリーホールの最奥に輝いていた光が、まるで、自分に向かって銃弾が放たれたかのように、迫ってきたのであります。
思わず、のけぞり、尻もちを付いたのであります。
そして、目を上げると、そこには、深紅のドレスを来た人間が宙を浮かんでいたのであります。
髪色は銀髪、背中まで伸びるほど長い。そして、その目は、見つめれば何かに引き込まれそうな美しい目でありながらも、青い右目と赤茶色の左目、オッドアイ。
その宙に浮かんでいる女性はあたしを睨みつけるのであります。
これは緊急事態!瞬時にEDSにて、応援を呼ぶのであります。
「こちらグローリーホール第一地区、グローリーホールから謎の人間が現れたのであります。至急応援をお願いするのであります。」
「こちら司令部。了解。すぐに応援を出す。」
あたしは、再び、宙に浮かんだ女性を見るのであります。
冒険者とは全く不釣り合いな深紅のドレス、少なくとも冒険者とは違うようであります。
そして、宙に浮かんでいるという時点で、何かしらの魔術を使っていると思われるのであります。一瞬だけ宙に浮くような魔術はあるのでありますが、ずっと宙に浮くとなると、少なくともAランク以上と判断するであります。
そして、深紅のドレスの開いた胸元からは豊満な谷間、これはSランクであります。許せぬであります。
武器を確認するため、手元を確認するのでありますが、手元には、大きめのハエたたき?
「なんでやねん!」
思わず、突っ込んでしまったであります。
ここはグローリーホールの淵。付近には何組かの冒険者もおり、みな、この異様な状況を凝視しているであります。
「おい、人間よ。人間の村はどこだ。」
宙に浮いている女は話しかけてきたのであります。ですが、まずは素性を正すことが先決であります。
魔術を使っているとは思われるのでありますが、首元には冒険者のランクを示すプレートがないであります。
「貴様、名を名乗るのであります。それと、冒険者のプレートを見せるであります。」
「名前じゃと、人間風情に我が名を名乗ると思うか。プレートじゃと、そんなもん知るか。知ってたとしても、所詮人間風情に、我が最高血種の姫アイギスが、貴様らに見せるわけなかろう。」
「名乗ると思うか。」とか言いながらも自分で名乗ってるであります。しかも、自信で最高血種とか痛々しいことを言ってしまっているであります。
見た目的には、10代半ば、中二より少し上か、きっと、うん、そういう病気が発病する年頃であります。
そういうことにしておくであります。
とは、いえども、パトロールで怪しい者を見つけたからには、看過できないのであります。
応援部隊を呼んではいるでありますが、時間がかかるのであります。
「アイギス!そこから降りるであります!あたしはRFD社調査部隊曹長の朱音、自治政府法令により、あなたを強制調査するのであります!」
「き、貴様、人間風情が、な、なぜ?あたしの名を知っている!まぁ、それはどうでもいい。人間風情があたしを調査するだと?ふざけ。やるもんなやってみろ。」
こいつバカでありましょうか。いや、バカであるのです。
自分で名乗ったことに気づいてないのであります。
ともかく、従わないとなれば、強制調査となるのであります。
あたしは、銃を構え、アイギスを狙うのであります。
あくまで調査、実弾ではなく、麻酔弾なのであります。
バン!
バシン!
はっ?あたしは間違いなくアイギスを狙ったのであります。
ですが、アイギスは手に持ったハエ叩きで、まさか、銃弾を叩き落としたのであります!
「雑魚が。ハエ以下よ。せめて、先ほどのタツヤとかいうやつぐらいに強さがあってほしいものよの。」
タツヤ!?
そう、それは昨日、無謀にもこのグローリーホールに飛び込んだ冒険者であります。
「アイギス、貴様、タツヤを知っているのであるか?」
「知ってるも何も、先ほど、妾の眠りを妨げた者ぞ。」
??
少し、混乱してるであります。こいつは本当にグローリーホールの底から来たと言うのでありましょうか?
「一つ聞くのであります。ベベルゼルドという名前に聞き覚えは?」
「ベルゼブブ??、ハエか?、知らんが、たまにこの穴からハエがきては、たまに妾の眠り邪魔しおる。まったく迷惑な存在よ。八つ裂きしてやりたいわ。」
「そ、そうであるか。。。」
怪しい奴ではあるが、初めて現れたグローリーホールからの侵入者。もし、これが本当だとすれば、ラビリンス史上初めての出来事になるのであります。
タツヤを知ってるということは、あの冒険者たちは、無事にこの大穴を攻略したということでありましょうか。
ならば、ベベルゼルドたちも。。。きっと。。。まだ、一縷の望みがあるのであります。
それだけでも、こんなブラック企業に勤めていた甲斐があったというものであります。
いずれにしろ、規律に従い、あたしは、この者を拘束せねばならないようであります。




