57転生後の世界(タツヤ)
俺は、ゆっくりと目を開け、ゆっくりと立ち上げる。
そこに突然、羽のついた大きな虫がこちらに飛んできた。
巨大なハエだろうか。
思わず、危険を察知して、手で身構えると、その巨大なハエは手のひらに激突した。
「あっ、ハエ、でかっ。」
「ハエじゃないのです。アリエルなのです。」
「虫が喋った。。。。」
「虫でもないのです。可憐な妖精なのです。っていうか、タツヤ??」
「虫が喋ってる。。。なんで、俺のことを知っている??」
「タツヤ??記憶がないの?」
「いや、なんとなく、確かにこんなウザい虫がいたような気がする。。。」
その後もその巨大な羽虫は、再び、自分の胸に飛び込み、泣いていた。
記憶はあいまいだが、その虫はきっと自分にとって大切なペットだったのだろう。
だが、まだ記憶が戻るまでには時間がかかりそうだった。
「う、うーん、、、、あれ、アリエルちゃん?、、、タツヤ?、これ、どいうこと?」
ふと、隣にいた女性が起き上がった。記憶があいまいなのだが、とてもキレイな女性だ。
長い髪が邪魔をして顔が良く見えなかったが、その女性が起き上がり様に、髪をかきあげたとき、その女性の顔をが見えた。
「!」
その瞬間に衝撃が走った。
だって、目の前にいたその人は、自分が転生する以前に、自分が想いを寄せていた大学のサークルの一つ上の先輩そのものだったのだから。
彼女の顔を見た瞬間に、心臓に落雷を受けたような衝撃が走り、全身が凍りついて動けなかった。
その衝撃がきっかけになったか、一気に記憶が蘇った。
自分の記憶が蘇っている間に、アリエルは、「か、す、みー!!!」と叫んで霞の胸に飛び込んでいる。
あぁ、そうだ。
俺は転生したんだった。
いつもは、そのままに身を任せ、運命のなすがままに何度も何度も転生を繰り返した。
だが、今回は違う。
自分が、自分で、自分のために、自分の転生すべき転生先を自分の意思で選択した。
いつもならば、まったく別の世界に転生したはず。
けども、自分がこの世界を選んだ。自分がこの世界を選択したんだ。
それが、この世界。
まさに、前回、自分がアイギスに殺された直後の世界。それも、ただの世界ではない。
あのとき、確かに霞は死んだ。けども、自分がこの世界を選ぼうとしたとき、この世界から、どこか悲しいものを感じた。それは少なくとも自分の望む世界ではないと、直感が訴えた。
だから、自分が選んだ世界に少しだけ自分の気を流して世界を変えた。
自分が、転生したいと思う、自分が望む世界へと。
それがこの世界、この世界で霞は生きている。
俺は、自らの意思で、この世界の運命すらも変えてしまった。
なぜ、この世界を望んだか。
それは、あの人にもう一度だけ会いたいから。
今まで、何度も何度も転生を繰り返してきた。ただ、ただ、運命の赴くままに、転生を繰り返し、そして、偶然にも霞に出会った。
霞は、ただの隣人だ。でも、あの人にとてもよく似ている。本人という確証なんてどこにもない。
それに、転生なんて一回や二回どころの話はない。もう、何千回、何万回も繰り返した。
それだけ転生を繰り返していれば、よく似た人にも出会うことはある。おそらくは別人だろう。
けども、、、彼女もまた転生者だった。。。
可能性は低い。可能性は低いが、ゼロじゃない。
だったら、一つの可能性をかけて、彼女を守りたい。
だから、この世界を望み、彼女のいない世界を拒絶した。
彼女のいる世界を自分は望み、その世界を実現してしまったんだ。
だったら、とことん、やってみようじゃないか。




