56妖精は涙を流す(アリエル)
昔は、バンパイヤのいないうちに、この城の財宝を狙ってましたが、今は、そんな気分ではないのです。
あたしは、宙を飛びながら、下を向きながらも、ゆっくりと、ひょろひょろと、弱々しく、城の出口へ向かうのです。
なんとなくですが、途中で、後ろを振り返りました。
だけど、何も変わる訳がありません。そこには薄暗いホールに二体の人間の体が横たわっているだけなのです。
どうやら、あたしは、まだ、後ろ髪を引かれているようなのです。
でも、事実は事実と受け止め、決別しなければなりません。
あたしは、再び、空を飛びながら城の出口へと向かうのです。
カラン
出口へ向かっていると、ふと、背後で物音がしました。
古い城なので、何か壁の破片か何かが落ちた音でもしたのでしょう。
どうせ、後ろを振り返っても、何か変わるわけでもないのです。それに、もう、後ろを振り返る気も起きません。
そのまま、あたしは、城の出口へ向かうのです。
ガサっ
再び何かの音がしたのです。
まぁ、どうでもいいですね。
そのまま、あたしは、城の出口へ向かうのです。
バサッ
また、何か音がしたのです。
ネズミでもいるのでしょうか?もう、ネズミだろうが、ゾンビだろうが、もう、どうでもいいのです。
ここは、誰もいない城、静かすぎるほどの静寂です。
余計な音がすると、いちいち気になってしまうのです。
「うっ。」
今のは何でしょうかね。人間の声にも聞こえたのですが、まぁ、何かの錯覚でしょうかね。
やはり、どこかにネズミでもいるのでしょう。面倒なネズミなのです。
もう、気にしないことなのです。
「先輩?。。。。」
うん?今度は声が聞こえたのです。それも疑問形の。
何で人間の声が?
あたしは、すでにやる気をなくしてましたが、ゆっくりと、再びを後ろを振り返ったのです。
そこには、薄暗いホールに中にタツヤと思われる影のシルエットが立っていたのです。
あぁ、タツヤか、まぁ、もう、どうでもいいです。
どうせ、この城は主なき城、昔からある古い城なのです。タツヤの一つや二つぐらい出てもおかしくないのです。
再びあたしは、城の出口を目指すのです。
・・・。
・・・。
・・・。
えっ?
えっ、ちょっと待て。
あたしは、もう一度後ろを振り返りました。
そこにいたのは、確かにタツヤのシルエットなのです。
「えっ。」
目をよく凝らします。そのシルエットの正体は、確かにタツヤなのです。
「えっ。」
ちょっと時間をください。頭の中を整理します。
ネズミではないということは、ゾンビ?でしょうか?
ゾンビ。。。いや、ゾンビでもいいのです。
あたしは、タツヤのゾンビに向けて、一直線に全力で空を飛んだのです。
そして、タツヤの胸に飛び込もうと、、、
ムギュッ
タツヤの胸に飛び込もうとしたところで、タツヤの手があたしを遮り、手のひらに激突したのです。
「あっ、ハエ。でかっ。」
「ハエじゃないのです。アリエルなのです。」
「虫が喋った。。。。」
「虫でもないのです。可憐な妖精なのです。っていうか、タツヤ??」
「虫が喋ってる。。。なんで、俺のことを知っている??」
「タツヤ??記憶がないのです?」
「いや、なんとなく、確かにこんなウザい虫がいたような気がする。。。」
もう、ハエでも虫でもいいのです。タツヤは記憶があいまいなようですが、それでもいいのです。
あたしはタツヤの胸にもう一度飛び込みました。
ちょっと固くて平らな胸、そこで、あたしは泣きました。
あたしはもう一度泣きました。
なんだか、もう、よくわからないけど、めちゃくちゃに泣きました。
そう、あたしは、また独りになることが怖い。
良かった。本当に良かった。仲間がいてくれて。
「う、うーん、、、、あれ、アリエルちゃん?、、、タツヤ?、これ、どいうこと?」
隣にいた霞が起き上がったのです。何が起きたのかわかりません。
だけど、、、
「か、す、みー!!!」
あたしは、霞の胸にも飛び込みました。霞の胸は、タツヤと違って温かくて、柔らかくて、飛び込みがいがあるのです。
何が起きたのかわかりません。
あたしは泣いたのです。
めちゃくちゃに泣いたのです。
「ヴぁたし、ぶだりに、会えて、よがっだー!」(あたし、二人に、会えて良かった)
だって、また、独りになるところだった。
だけど、独りじゃなかった。仲間がいてくれた。それが本当に良かったのです。




