55妖精は見ていた(アリエル)
アリエルはとても可愛らしい妖精です。
妖精の寿命はとても長いのです。
その寿命などに比べれば、タツヤや霞と一緒に行動したことなど、ほんの一瞬の出来事に過ぎないのです。
なので、ここでタツヤと霞が死んだところで、あたしの人生においては、それはただの通過点。
そう、例えるなら、道に生えている雑草を踏みつぶして歩いたところで、その雑草のことをなど誰も気にしないのと同じようなものなのです。
だけど、これは一体何ですか。
何で、こんなにも悲しいのでしょう。
何で、こんなにも悔しいのでしょう。
何で、こんなにもわだかまりが残るのでしょう。
目の前でタツヤと霞が、あのアイギスとかいうバンパイヤに殺されたのです。
すぐにも、この虫かごを飛び出して、タツヤと霞のところへ飛び出そうとしたのに、あのアイギスのやつがこの虫かごに結界魔術をしかけたようで、出ようにも出れなかったのです。
この程度の魔術、あたしの手にかかれば、すぐに解除出来るのですが、時間はかかるのです。
その僅かの時間の間に、惨劇は、、、起きてしまいました。
あたしは、ようやくこじ開けた虫かごから飛び出し、霞と、タツヤのところへと行ったのですが、、、
「ねぇ、タツヤ?、、、ねぇ、霞??」
その惨劇の瞬間を見ていたので、わかってはいたのです。
でも、もしかして、という淡い期待で声をかけてみましたが、結果は思っていた通りです。
すでにあのアイギスのやつは、人間を滅ぼしに行くといって、どこかへ行ってしまいました。
先ほどまで、このホールでダンスをしていたバンパイヤたちは、アイギスの作り出した幻のようで、このホールからは消えました。
先ほどまで、奥でクラシックの音楽を演奏していたバンパイヤたちも、アイギスの作り出した幻、今はこのホールからは消え、今は物音一つしないほどに静寂です。
天井には豪華なシャンデリアが飾られ、蝋燭に火が灯っていましたが、今は消えています。
今、このホールには誰もおらず、音もせず、周囲は薄暗く、この場にいるのは、あたしと、目の前にある動かない人間の体が二体。
「あたしは、また、孤独になりました。」
あたしは、妖精。
妖精の長い寿命かられすれば、こんなこと、取るに足らない出来事に過ぎないのです。
どうせ、100年も経過すれば、忘れてしまうのです。
なのに、、、
なのに、、、
なぜでしょうか。さっきから、目から水が流れ出て止まらないのです。
あたしは、村のみんなを失いました。
あたしは、せっかく出会ったタツヤと、霞も失いました。
今はあたしは、この薄暗く冷え切ったバンパイヤの城で、たった独りきりなのです。
あたしは、しばらく、その場にたたずみました。
ただ、何も考えず、その風景と化した様子を目に焼き付けながら、その場にたたずみました。
でも、たたずんだまま、そこにいても、何も起きないし、何も変わらないのです。
周りは薄暗く、ホールも冷え切ったままです。
どれだけ、その場にたたずんでいたのでしょうか。
ふと、あたしは立ち上がるのです。
あたしは大切なものを失いました。でも、現実を受け止めなければならないのです。
あたしは妖精、可憐で強い妖精。ここにいても仕方がないのです。
でも、あたしは一体どこへと向かえばいいのでしょうか?




