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54転生(タツヤ) 

 

 ここはどこだ?


 視界は真っ黒。一切光の入らない漆黒の闇の中。

 体の感覚はあるも、足には地面の感触はなく、宙を漂う感覚。

 音はなく、匂いもなく、触覚もない、まさに五感を遮られた世界。

 それは、まさに「無」という一文字が表現するのに適している世界だった。


 ひたすらに、その無の世界を漂いながら考える。

 考えているうちに、ふと、思い出す。

 あぁ、そうか。死んだのか。


 何度転生しているので、思い出した。ここは死後の世界だ。


 時間がどれだけ経過したか、しばらく空間を漂うと、自分の周りに、ポワンと光る球体が徐々に見える。

 そう、これが転生先の世界。この光の球体一つ一つが転生先の世界。

 異なる次元、異なる時間、異なる場所へとつながる世界へとつながる。

 それに触れれば、触れた先の世界へと転生する。


 ただ、自ら、その光る球体に触れるのも億劫だ。

 もう、考えるのをやめて、ただ、ひたすらに漂い、偶然にも触れた世界に転生すれば、それでよい。


 そうやって、漂いながら、ただ、運命の赴くままにひらすらに漂い、次の転生を迎える。

 あぁ、いつものことだ。

 こうやって、何も考えず、何もせず、頭の中も無にして、ひたすらに漂えばよいだけのこと。


 次の転生先では、なにかいいことが起きることを願おう。


 と、願ったところで、何かが引っかかる。


 こうして、運命の赴くままに、何もせずに、漂いながら、次の転生を迎える、というのはいつものこと。

 なのに、何か違和感を感じるというか、そのままではいけないような気がしてならない。

 気のせいか。


 そうこうしているうちに、白い光る球体が近づく。

 それに触れれば、次の転生が始まる。

 だけど、今感じている、この違和感をもう少し考えてもいいのかと、思い躊躇した。


 いつもならば、運命の赴くままに、その白い光る球体に触れただろう。

 だが、自分の中にあるちょっとした違和感、わだかまりのようなものが、偶然にも、自分の意思で、白く光る球体に触れることを拒んだ。


 その行動は、単なる偶然だった。

 けども、その行動によって、自分の記憶を思い出すきっかけを与えてくれた。


 そうだ、確か、自分の意思で何かを決めようとした。

 何を決めようとしたかはわからない。けど、何かを決めようとしていた。

 思い出せない。思い出せないと、頭の中がムズムズとしてくる。


 こうしているうちに、別の次の白い球体が近づく。

 俺は今は別のことを考えているのだ。今は、白い球体に接触して、転生を開始などしたくない。


(鬱陶しい。次の転生先ぐらい、自分の意思で決める。)


 俺は、そう願った。

 その瞬間に、急に視野が広がったのだ。

 視野が広がったというのは、表現としてはうまくないけども、それまで、無であった世界に、いくつもの無数の白い球体が浮かんでいるのが目に見えた。


 それらのすべてが転生先の世界だ。


 無と思われていた世界には、こんなにもたくさんもの無限の転生先が浮かんでいた。


 ならば、当然、俺はこう思うのだ。


「この中から、自らが生きたいと思う転生先を選ぼう」と。


 無の世界に浮かぶ、白い球体。その球体を見るだけでは、転生先の世界が見えるわけではない。

 けども、近づくことで、直感で、この世界ではないと感じることができた。


 無の世界を泳ぎ続け、数々の白い球体に近づく。

 だが、どれも、違う。何かが違う。俺の直感がそう訴える。

 そうやって、無の世界をひたすらに漂い続けた。どれもかもが、何かが違う。


 そんな中、一つだけひときわ強く光る球体を見つける。

 タツヤはそれに近づき、手を近づけると、直感でわかる。

 この転生先は、自分がこの無の世界にくる直前の世界だと。

 そして、自分は、その世界に戻り、何かを成し遂げなければならないと、自身の直感が訴える。


 理由はわからない。

 理由は、わからないが、この世界で自らの意思で、自らの望む何かを成し遂げなければならないと。


 タツヤは白い球体に触れようとした。触れようとしたが、少しだけ思いとどまった。


「悲しい。。。」


 その白い球体に触れてもいい。でも、白い球体から悲しい雰囲気を感じた。

 このまま転生をしても、何か悲しいことしか起きないという直感で感じた。


 タツヤは触れる前に、気を集中させる。タツヤは魔術の才能はなかった。けども、気、それ自体は誰もが持っているもの。その気をそっとその白い球体へ流し込んだ。


 すると、それまでの白い球体は、より一層、光り輝いた。それまで感じられた悲しい雰囲気はなくなり、ほのかな温かみが感じられる。そして、その球体は大きく膨らみ、ついには、自分を取り込んだのだ。



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