53幕間:ラビリンスでの噂(リア)
あたしは、リア。今では、このお店の店主をしているけども、昔はあたしも冒険者をやっていたのよ。
まぁ、昔は冒険者なんていう言葉はなかったのだけど。
当時は、まだ、地上に暮らしている人もいたわ。地上のすべてが荒廃して、ようやく戦争が終結したようだけど、この付近では、そのまま地上に残る人と、この洞窟を見つけて、この洞窟を開拓する人たちに分かれたわ。
あたしは、この洞窟を開拓する側だったの。
当時は凄かったのよ。この洞窟が見つかったときは凄くてね、「何だ、この洞窟は。」ってなってね。
それは、もうみんな必死でこの洞窟を探索したのよ。
当時は仲間もいたわ。みんなでこの洞窟を開拓しようと、このラビリンスに拠点を設けて、さらなる深層を目指したのよ。
だけど、あたしには、力はなかった。正確には、力を失っていたというのかしらね。剣術も魔術も使えない。だから、この地下都市ラビリンスに留まり、開拓を頑張る人たちをサポートできるお店を開いたのよ。
当時はまだ、ラビリンスという名前すらなくて、こんな立派なビルなんてなかったわ。
だだっ広いホールにテントを張って、みんなで炊き出しをして、大迷宮から発掘してきた鉱物を鍛錬して、道具に加工したりしてたのよね。
今でこそ、グローリーホールのある場所までは開拓されたけど、当時はまだ、全然開拓されてなくてね。それこそ、命がけだったのよ。多くの人がケガして、戻ってこない人も沢山いた。
そして、あたしの仲間も、あたしをこの場所に置いたまま、戻って来ることはなかったわ。。。
今はグローリーホール、ある程度開拓されて、とはいっても、まだまだ十分危険はあるけど、昔ほどじゃない。今見ると、ラビリンスも随分と大きく変わったわね。
そういうことがあって、Cランクぐらいの冒険者ならばグローリーホールまでなら辿り着けるようになったのよ。
とは言っても、支洞もたくさんあるので、グローリーホール以外にも、たくさん未開拓の場所はあるけれどね。
そしてね、冒険者たちはね、みんな口々にいうのよ。
「グローリーホールの地底へ行ってみたい」って。
このラビリンスですら、深層1万m。そこに、さらに地下へと通じる巨大な穴があるのだから、ロマンを感じずにはいられないわよね。あたしも、元は冒険者。その気持ちはよくわかるわ。
今はRGF社が金の力で調査をしているようだけど、未だ、グローリーホールの地底には行けないらしいわね。
RGF社といえば、資源開発系の会社としては最大手。その会社ですら、未だ穴の入り口のほうにしか辿り着いてないというのだから、攻略されるには、まだまだ、時間はかかるわね。
「なぁ、知ってるか?あのDランク冒険者たちがグローリーホールに落ちたらしいぞ。」
「まじかよ。」
そう。そして、噂で聞くのが、こういう無謀でバカな冒険者。
年に数回は聞くわね。パラシュートで飛び降りるだとか、魔術で飛行する、とかいうのだけど、誰一人として、ここへ戻って来た者はいなわいわ。
あたしは、無謀な挑戦者は好きだけど、無謀なバカは嫌いなの。
まぁ、こういうお酒を出す仕事をしているとね、こういう情報が山のように入ってくるのよね。
と、あたしは手元で、カクテルを作りながら、ひそかに聞き耳を立てるわけよ。
「はい。リアスペシャルカクテルよ。で、そのDランク冒険者って、どんな人なのよ。」
「おぉ、ありがとよ。なんかよ、なんでもいつも地図ばっか作っている変わった冒険者らしいぞ。」
「それがよ、直前に一人であのRGF社の軍隊の一戦交えてよ。圧勝だったらしいぞ。」
「あぁ、聞いた。聞いた。だけど、RGFの赤髪が出てきたんだろ。あれには勝てねぇよな。」
「そんで、逃げるためにグローリーホールの穴に飛び込んだじゃねーかって話よ。」
もちろん、あたしのスペシャルカクテルよ。一気に酔いも回るわ。
でも、ちょっと気になることがあるのよね。
地図ばっかり作ってる冒険者って、もしかして、タツヤのことじゃないわよね。
最近、見ないから心配なのよ。
タツヤのことはどうでもいいのだけど、タツヤが作る地図はいい金になるのよ。
「それで、そのあとはどうなったの?」
「なんかRGFの調査部隊がグローリーホールの壁に引っかかってないか、調査したようだが、何も見つからなかったそうだ。」
「そりゃ、あれだな。死んだな。」
「でも、一人でRGFの軍隊相手に勝ったやつだぜ。もしかしたら、地底に辿り着いたっていう可能性も。」
「あのグローリーホールだぜ。誰も戻ってきた奴なんていないんだぜ。」
「もしかしたら、ちていには黄金キョーがあって、だれももどろうとしにゃいのかもしれないぜ。」
「だったら、いいけどな。」
「ねぇ、冒険者さん、その名前は何か聞いてないの?」
「いやぁ、いつもちずをつくっている、かわったぼうえんしゃ、っていうのはわあるけど。なまえはにゃー。」
「そう、それは残念だわ。」
「おりゃたちにも、わからないものっつーのはあるのさ。わはははは。」
まさか、タツヤのことではないと思うけれど、さすがに名前まではわからないか。
それよりも、だいぶ酔いが回ってきたようね。
「ねぇ、かっこいい冒険者さん、また、グローリーホールに行くんでしょ?だったら、この地図を買わない。冒険者さんなら、今だけのと・く・べ・つ・よ。」
「おい、ほんものじゃろうな。ずいぶんとたかいんじゃねぇか。」
「そんなことはないわよ。昼は隣の地図屋さんで売っているものよ。」
とあたしは、ちらっと谷間を見せつけながらも、地図の中身をみせてあげるの。
「うほー。うんじゃ、かっちゃおうかな。」
まったく鼻の下伸ばして、男ってちょろいわね。




