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52死(タツヤ)

 

「かっ、かっ、かっ。舐めるな。人間。妾はすべての生物の創生主。すべての生物の根源である。たとえ、転生したとて人間ごときに負けるわけがなかろう。まったく人間とは、オスとかメスに別れているせいで、色恋ごときに気を取られるとはの。」


 霞の胸に突き刺さる赤き槍。禍々しいまでの赤色が、それが刀身の色か、血液の色か、もはや区別も付かない。

 アイギスが槍を抜きとると、さらに一層の赤い色の液体が流れ出る。

 自分もついに、立つことができなくなり、その場に倒れこむ。


 アイギスは抜き取った刀身を指でなぞり、赤く染まったその指を舐める。


「ふむ。やはり人間の血は美味じゃな。虫なんぞの血より遥かに味わい深い。」


 その光景が目に入るも、徐々に、意識が遠のく。


「妾に技を使わせたのじゃ。褒めて遣わそう。じゃがな、思いあがるな。その力、幾度となく転生を繰り返し、身に着けたのじゃろう。だが、所詮は人間風情の技、妾に効くわけがなかろう。」


 これまで何度も転生した。転生の中で、戦いに明け暮れ、戦いの技術だけで身に着けた「つもり」でいた。

 所詮は「つもり」でしかない。

 体を動かそうにも言うことを聞かない。悔しい。悔しすぎる。これが、肉体の限界。超えることのできない一線。


 目に入るのは霞の顔。もはや、呼吸をしてない霞の姿。


 せっかく、会えたかもしれない。前世の記憶がないだけで、霞は、あの時、自分が恋焦がれたあの人かもしれないのだ。守りたいのに、守れない。


 体から力が抜けていくというのに、手を握り、思いっきり地面を叩く。


「クソッ!、クソッ!、動け!俺の体!」


 少しだけ、動いた!

 僅かに動いた体で、必死に霞のところまで、這いつくばる。


 霞の体は動いてない。

 だけど、霞の体のところまでは、何とか辿り着いた。

 そこでついに力が途絶え、霞の体の上に覆いかぶさるように力尽きる。


「霞、、、だ、だ、、、大丈夫か?」

「しぶといの。じゃが、想い人かどうかは知らんが、その人間のもとで命絶やすとは、幸せじゃないか。」


 アイギスは、何か言っているが、そんなのはどうでもよかった。


 一切、動くことがなくなった霞の体。その体はまだ霞の温もりが残っている。

 その温もりを体に感じながらも、視界には霞の顔が入っていた。


 徐々に意識が遠のく。


 何度も転生をすると、何度も死の経験する。死が訪れる直前の意識が遠のくこの感覚。

 あぁ。こうやって、この世界でも結局何もできず、霞を助けることもできず、死を迎え、別の世界へ転生するのか。


 もしもだ。霞が、もしも、自分の望んだあの人であれば、形はどうあれば、こうして一瞬でも、会えたはずだった。

 自分の望んでいたあの人に、会えたはずだったんだ。


 だというのに、これは何だ。

 これが自分の願った出会い方だったのか。


 運命よ。もし、世界に運命という仕組みがあるのならば、なんという仕打ちをしてくれる。


 もっと、話したかった。

 もっと、その温もりに触れていたかった。

 もっと、一緒にいたかった。


 一体、俺が何をした???

 何か俺が悪いことをしたか?何もしてないだろ。


 あぁ、そうか。

 何をしたのではなくて、何もしなかったんだ。

 ただ、ただ、時間の流れるままに身を任せて、時間の過ぎるままに、生き、死を迎え、運命の赴くままに転生した。


 そうか、それこそが、この仕打ちなのか。

 だから、運命はこんなにも悲惨な出会いを授けたとでもいうのか。


 さらに、意識が遠のく。


 アリエル、、、うざいやつだったが、結構、いいやつだった。

 霞、、、あの人のよく似ている。。。もう会うことは、、、これが最後か。。。

 いや、ダメだ。だって、あの人の転生した後の人かもしれないのに、ここでお別れか?いや、ありえない。


 だが、それでも必死に意識を保つ。


 諦めたらそこで終わり。もがけ。どんなに汚くてもいいから、もがけ!あの人を、霞を救え!

 おれは、霞に会いたい。


「まぁ、人間にしてはよくやったぞ。」


 アイギスは魔術で刃のような物を生み出すと、それを自分に向け一振りした。直後、自分の視界が地面を転がり、視線が天井へと向けられた。

 あぁ、なるほど。そういうことか、と納得する。

 転生を何度もしていれば、同じ経験は何度もしたことがある。


 首を斬られ、胴体から頭が離れたんだ。


(クソッ!!)


 首を斬られたので、声は出ない。それでも、口だけは動かした。


 霞は、自分が転生する前のあの人かもという、僅かな希望を得たというのに、目の前で、その希望が絶たれた。

 

「さて、妾は憎き人間どもを滅ぼしに行くかの。」


 その声は聞こえはしたものの、もう、既に視界は暗く、ついに意識も途絶えた。

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