51もう一人の転生者(タツヤ)
「おい、アイギス、一つ聞くが、転生とは、誰のことを言っている?」
「さっきから、お主らと言うておろう。」
「ちょっと待て。じゃ、霞も転生者だというのか?」
「さっきから、そう言っておる。」
おれは、霞の顔を思わず見る。
「えっ、あたしも?、、、そんな、、、記憶ないんだけど。」
「記憶がない者もおる。たかが人間風情に空間魔術や暗黒魔術が使えるわけなかろう。主、どこでその魔術を身に着けた?」
「そ、それは、気づいたら、、、、」
「そうじゃろ。記憶がないだけで、お主も転生しておるのじゃ。しかも、一度や二度ではない。同じく繰り返し転生し、その中で身に着けたのじゃろうな。」
ちょっと待て。。。。
「そう、実感はないけれど、納得いったわ。なぜか昔の記憶がないのよね。気づいたら、地上にいて、魔術も使えた。不思議と思っていたけど、そう、あたしも転生してたということなのね。」
霞は懐からナイフを取り出す。ナイフに何かの魔術を付与したのだろうか、ナイフには青白い柔らかな光に包まれる。そして、身構え、アイギスと対峙する。
アイギスとの戦いが、今、まさに再開されるところではある。
だが、、、
ちょっと待て。
ちょっと待て。
ちょっと待て。
俺は、単に霞のことを、あの人によく似ている隣人だと思っていた。
だけど、霞が、えっ、転生者?えっ、ちょっと待て、まだ、頭が混乱している。
まさか、、、、えっ、ということは、、、まさか、、、、えっ、、、
俺は霞の顔をじっと見た。霞もそれに気づく。
「ち、ちょっと何よ。こんなときに。戦いに集中して!」
カラン!
思わず刀を地面に落とした。
意識したわけではないのに、霞の方へと歩み寄り、霞の肩を両手で掴む。再び、霞の顔を覗き込むように。その顔をよく見る。
「え、な、何?、何?、今、それどころじゃないでしょ。」
おそらく、俺の耳には、何も聞こえてなかったのだろう。
もう一度、霞の顔をよく見る。
やはり、似ている。似ているというよりも、あのときの彼女、そのもの。
髪型こそ違うかもしれない。記憶もないのかもしれない。
だけど、あのときの、自分が転生する前の世界での、あの彼女、そのものなのだ。
あぁ、ここまで何年経った?
何回転生した?
そんなの覚えてない。
ただ、、、ただ、、、ひたすらに時の過ぎるままに、
「ほう、想い人かい。じゃが、人間のオス、言っておくぞ。そいつがあんたの想い人である保証はどこにもない。顔のよく似た人間なぞ五万といる。まして、そいつは記憶をもっちゃいない。それに、あんたの顔を見ても、何一つ感情を変えなかったのだろ。」
そうだ。
その通りなのだ。
似ているからといって、転生しているからといって、あの人である保証はまったくどこにもない。
それはわかっている。だけど、これまで幾度となく転生してきた中で、こんなことは一度もなかった。
何回転生した?一回や、十回という次元ではない。万とか、億とか、それもう気の遠くなるほどの転生を繰り返し、無限とも思える時間を過ごしてきた。
もし、この好機を逃せば、二度と出会えないかもしれない。
その想いが、自分の冷静な判断を鈍らせてしまったのだろう。
「まったく、人間というのは、オスとメスに別れておる。何とも面倒なことじゃ。人間のオスよ、戦いの最中の色恋沙汰とは。オスとメスに分けるということは、こういう弱点を生むもんじゃ。」
霞の背後で、アイギスが魔術で禍々しいほどの赤い色をした槍のようなもの生み出し、そして、何かをした。
何をしたのかは見えなかったというよりも、それより先に、胸に何か熱いモノを感じ、そちらに気を取られた。
えっ。。。
目線を下げると、自分の体に槍の刀身が貫通していた。
その刀身を辿ると、霞の体があり、それを貫いていた。
えっ。。。
今一度、自分の見た光景に、今一度再確認するが、確かに俺と、霞の体を槍の刀身が貫いていた。
何だよ、これ。。。
その状況を確認した直後、霞の頭はガクンと垂れさがり、腕もダランと力が抜けたように垂れさがった。
霞の体を貫く刀身のふもとは徐々に赤く染まり、赤い液体が徐々に滴るように流れた。
そして、自身も、徐々に力が抜ける感触があり、立つだけでやっとの状態になる。




