50最高血種という敵(タツヤ)
アイギスは、再び、自分の胸の前で指をパチンと鳴らした。すると、それまで広間で踊っていた血種の姿が消える。
「もし、妾を止めるというのであれば、手加減はせぬぞ。」
服装は、未だタキシードのままだが、刀などの装備品はそのまま腰に身に着けている。
刀の柄に手を掛けておき、自身の呼吸を整える。
そして、呼吸を吐き切った瞬間に、全力の居合でアイギスへと立ち向かう。
スパっ!
アイギスの背後の壁に、大きな斬撃の跡が残るも、そこにアイギスはいない。
瞬間移動か。相手の気の流れから、どこに移動したかは把握できる。
頭上!
アイギスは何かの魔術を発動させてながらも、俺の方へと落下する。
頭上へと落下するアイギスに、自分も上空に飛び上がり、滞空でアイギスと対峙する。
アイギスの手からは白い光るものが発動させられ、それが自分のところへ襲う。
もちろん、自分は、それを刀で両断する。
両断したところで、アイギスは懐から、例のハエ叩きを取り出し、ハエ叩きの一刀が襲う。
もちろん、刀でそれを防ぐ。が、その直後、もう片手で再び魔術を発動させ、赤い光が眼前を覆いつくす。
まずい!直撃する!
と思った瞬間、横からドレス姿の霞が飛び蹴りを食らわした。
アイギスはそのまま吹き飛んだように見えたが、、、
「気、抜かないで!幻覚よ!」
霞の喝で目を覚ます。幻覚だ。アイギスが吹き飛んだように見えたのは幻覚で、アイギスは霞の飛び蹴りを片手で防いでいた。
霞はさらに、そこから魔術を発動させる。手から紫の稲妻を放ち、バチバチと音がする。
「1,2,3で一緒に行くわよ。わかってるわね。」
「わかった。」
「1,、、、」
俺たちは、1カウントしたところで、アイギスに攻撃を仕掛けた。
むざむざと相手に攻撃のタイミングを知らせるわけがない。わざと、フェイントかけた。
霞とは何も話してしてないが、そんな雰囲気を読み取った。いい連携だ。
直後に俺がアイギスに横一文字に薙ぎ払う。
アイギスは当然、避けるが、そこへ霞が放ったバチバチと稲妻を伴なった大火球が襲う。それも避ける。だが、当然避けるのは承知済み。
霞は空間上に真っ黒な穴を作っていた。アイギスが避けた後、大火球はその穴に吸い込まれていくと思えば、別の真っ黒な穴がアイギスの背後にも現れ、そこから、再び大火球が放出されて、アイギスの背後を襲う。
Sランク以上の者が使えると言われている、空間と空間をつなげる高度な空間魔術だ。
霞はBランクだったはずだが、ともかく、今はそれどころじゃない。
それでも、アイギスにはバリアがあるのか、アイギスの周囲にだけで、大火球は届かない。そこに、俺が再び逆袈裟で一刀を与えると、バリアが両断され、大火球が届くようになる。
だが、その大火球すらも、まるで凍り付いた氷の彫像品のように固まり、アイギスの手前で止まってしまう。
いったん、そこで戦いは中断。
お互いをにらみ合う。
「ほう、さすがというべきか。そこらの人間とは違うな。さすが、転生者ども。だが、いいか、人間。転生者といえども、所詮は劣等種という生物に変わりはないのじゃ。劣等種ごときが、妾に勝てるわけなかろう。」
何度も転生を繰り返してきたが、ここまでの強敵は初めてかもしれない。
ただ、さっきから、少しだけ違和感を感じている。何だろうか。この違和感は。
「タツヤ、準備もできたわ。」
「えっ、準備?」
霞を見ると、指で天井を差す。
天井のシャンデリアの影に紛れ、真っ黒いものが天井を覆い尽くす。まるで天井に巨大な大穴がポカンとあいているようだ。そして、時折、黒い炎のようなものが飛び出している。
「舐めないで、このあたしを。これでもね、魔術には自信があるのよ。これならば、どこに居ようと逃げ場はないわ。暗黒魔術の一つ、すべてを無にする魔術。」
天井にひしめく黒いもの。それが、こちらへと向かってくる。逃げ場はないはず。
だが、アイギスは、手を頭上にかざした。
そして、その手から、深紅の太い綱のようなもの、放出した。アイギスの気の流れに見える。
それは天井へと伸び、霞の放出した真っ黒いものに吸い込まれていく。
それが吸い込まれれば、吸い込まれるほど、霞の放出した黒いものがドンドンと小さくなっていく。
「う、噓でしょ。」
一方で、アイギスはニヤリと微笑む。
「まったく、ここまで高度な魔術を使うとはな。劣等種でありながらに、褒めて遣わす。じゃが、『主ら』のような『転生者』というのは面倒じゃのぉ。」
あっ。
気づいた。
今ので、感じていた違和感に気づいた。アイギスは、今まで「主ら」と言っているのだ。それは相手が複数形の場合に用いられる表現である。そして、今、間違いなく、霞に対して、アイギスは「転生者」と言った。




