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49転生という現象について(タツヤ)


 アイギスは続ける。


「命あるものは、いずれ命尽きる。命尽き果てた魂は、次元を彷徨い、次の世界に辿り着き、再び、命がともる。それが転生と呼ばれる現象じゃ。転生では、過去の記憶や技量はすべてリセットされる。じゃから、皆、転生という現象すら知らずに、再び赤子から新たな命をはじめるものじゃ。じゃがな、まれに肉体ごと転生する者がおる。肉体ごと転生することで、過去の記憶、技量をもったまま転生する奴らがいるのじゃ。お主らのようにな。」


 なるほど、そういうことか。自分は転生を繰り返したが、同じような人間は誰もいない。どうやら自分は随分と特殊な人間だったようだ。


「えっ、どういうことよ?」


 霞には理解が難しそうだ。

 それはそうだろ。突然、転生という超常現象的なものを言われ、信じられるわけがない。


「信じられないだろうが、アイギスの言うとおりだ。俺は、何度も何度も死に、そのたびに別世界へと復活した。」

「ふーん、過去に見つけた技量を持ったままっていう話だけど、それで、そんなに強いわけ?」

「強いと思ったことはないが、何度も戦いを繰り返しているうちに、剣術だけは長けたな。」

「ふーん、まぁいいわ。」


 まだ、霞は半信半疑のようだ。

 ところで、なぜ、俺が転生しているとわかった。アイギスとは会話しかしてない。


「アイギス、なぜ俺が転生しているとわかったんだ?」

「会えばわかるぞ。人間には気というものがあるじゃろ。記憶を持って転生した人間の気は、気の量がちがう。人間の器に収まらずにだだ漏れしておるわ。」


 ほぉ、そういうものか。


「さて、と。久しぶりに行くとするかの。」


 アイギスは席を立つ。


「おい、何をするんだ?」

「人間狩りじゃ。まだ、生き残りがいるのじゃろ。残りの人間を滅ぼすのじゃ。」

「は?何だって?」

「さっきも、言うたであろ。この世界の人間という種はな、妾が間違って作った種よ。種を作った妾の責任もある。妾の手で残った人間ども抹消しなければならん。」


 アイギスは人間の敵。いずれこうなるだろうことはわかっていた。

 アイギスは席を立ちがあると、テーブルを離れ、広間で踊る幻の血種たちの真ん中を進んでいく。


「ちょ、ちょっと、待て!どこに行くんだ!」


 アイギスは、多くの男女がダンスを舞う中を振り向き、答えた。


「どこに?人間どもが残っているところに決まっておろう。人間どもを始末するのじゃぞ。」

「俺も、人間だぞ。」

「主も人間ではあるが、転生者であろう。この世界の者ではないわい。それに主であれば何度も人間の醜さを見てきたのだろう。ならば話は別よ。まぁ、妾に対抗するというのであれば話は別じゃがな。」


 あぁ、知っているさ。人間の醜さなんて幾度となく見た。巻き込まれて、何度も死んださ。


 残念だ。

 何度も転生を繰り返してきた。どの世界でも人間たちは戦い、いずれ全滅する。

 今回の世界は、地上は全滅しても、大迷宮には地下都市が作られ、それなりに平和に暮らしていて、希望があった。

 だというのに、結局はこうして、戦いに巻き込まれ、どうせ、また、滅ぶのだろう。


 結局、この転生の世界では、目の前のアイギスによって滅んでいく。

 結局、何も変わらない。

 結局、この転生した世界に淡い期待を抱いていた自分がバカだった。

 。。。


「ねぇ、タツヤ?」


 霞が声をかけたので振り向き、しばらくその顔を眺める。やはり、自分が転生する以前に恋焦がれた先輩に異常なまでに酷似している。

 まさかの本人?そんな訳ないだろう。


 ただ、、、ただ、その顔、その綺麗な瞳を見ていると、少しだけ足搔いてもいいのでは?という気持ちが芽生える。


 いつも自分な、運命のなすがままに従い、このままアイギスに見逃しただろう。


 それに、人間は確かに醜い。だけど、全員が全員ではないことも知っている。

 何度も何度も転生を繰り返した。その数だけ人間の醜さを見たけども、一方で人間の優しさを見ることもあった。


「ねぇ、いいいの?」


 あぁ、わかっているさ。

 こいつは「人間はほぼ全滅した」とは話したときに微笑んだ。確信したさ。

 こいつは、人間の「敵」だと。

 いつもならば、それを見て、見ぬふりをする。

 ただ、霞の言葉が自分の心を揺れ動かす。


「はぁ。」


 少し大きなため息が出た。

 ため息と共に、俺は腰に拵えていた刀の柄に手をかけた。


 俺は人間の味方側でいたい。


「こいつを放置したら、ラビリンスが危ない。」

「手伝うわ。あたしもあの地下都市が滅びたら困るのよ。」


 霞のその言葉の後ろに、「お金がなくから」という言葉が付きそうな気はするが、今はどうでもいい。

 アイギスは、こちらへと一歩戻り、答える。


「ほう、やるのか?」

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