5胸の鼓動が止まらない(タツヤ)
幾度となく転生した。いろいろな時間、いろいろな場所を転生した。だが、そのすべてが孤独でだった。それに慣れてしまったせいなのか、他人に興味を持つことなど皆無だった。
最低限に生きるための行動だけをし、誰と交流もなく、ただ、時間が過ぎ行くのをひたすら待つだけ。
いずれ死が訪れ、次の転生を待つだけの生活。それを何度も何度も幾度なく繰り返した。
だというのに。。。
ドクン!
なぜだろうか。ある女性に目が留まり、胸の鼓動がとまらない。はて?、彼女はどこかで会っただろうか。
いや、この世界へと転生して、人との交流などない。彼女に会ったのは初めてだ。
少し離れた場所から彼女の顔を見つつも、思案する。
「あぁ、そうか。」
そこで、ふと思い出した。
「似ているんだ。」
自身が転生する前の世界。学生時代は毎日イジメられ、社会人になっても夜遅くまでひたすらに働かされる毎日。
そんな人生においても、わずかに楽しい期間があった。
大学時代。。。
その時ときだけは、仲間ができた。友人が出来た。サークル活動も楽しんだ。
つまらない自分の人生の中で唯一楽しかった瞬間。
何度も何度も転生を繰り返した今でも、あのときのことは、なお忘れることなく記憶に留まっている。
そんな中、大学のサークルの先輩の女性に想いを寄せた。とてもキレイな人で、周りからモテた。
なんというか、男慣れした人でいつも男の先輩やOBををいじっては男の人に金を出させていた。
そんな先輩ではあるけども、自分にはかわいい後輩として、いつも、接してくれた。
そんな、彼女に、、、自分は、、、恋をした。
想いを寄せていたあの人のこと。
その後、幾度なく会いたいと想いながらも、結局会えることなく、気づけば、10年が過ぎ、20年が過ぎ、そして、気づかぬうちに、死を迎えた。
転生するも、再び死を迎え、また転生を繰り返す。
今、目の前にいる人は、まるで、自身が想いを寄せていたあの人と瓜二つ。
これまでの転生の世界では、活力は削がれ、ただ、時間の流るるままに、身を任せるだけだった。
自ら行動を起こすことなどありえなかった。そんな自分に、その出会いは、自らが主体的に動くためのきっかけとしては十分だったのかもしれない。
不思議なことに、気づけば、いつの間にか勝手に足が進んでいた。
「へぇ、そうかい、姉ちゃん、何、ちょっとした飲み物ぐらいなら出してやってもいいぜ。」
「あら、嬉しいわ。なら、ラビリンスにちょっと気になっているお店があるのよねぇ。」
「へぇ、そうかい、なら。。。うん?、お前、誰だ。」
紺色の軍服を着た兵士たちが、女性の冒険者を取り囲む中に、突如として、謎の男が現れる。
きっと中年ぐらいの、なんともさえないような男。
兵士の一人が隊長と思しき男へと耳打ちを立てる。
「こいつ、あれですよ。以前からこの辺で地図を作っている変な男ですよ。『Dランクの。』」
「あぁ、あいつか。」
隊長の男はこちらを振り向く。
「おい、誰だが知らねぇが、俺たちはそこの姉ちゃんと話をしているんだ。邪魔しないでくれねぇか。」
「邪魔だ。」
「はぁ?聞こえなかったな。邪魔すんなって言ってるんだよ。このDラン風情が!」
冒険者は、ランク制度が出来て以降、必ず首にプレートを身に着けること強制される。
そのプレートでランクがすぐにわかる。
見れば、目の前の民間兵の隊長がBランク、他は兵士はCランク。そして、自分はといえばDランクだ。
CランクとDランクとの間には、超えられない壁がある。
つまり、生まれながらにして、魔術が使える者と魔術を使えない者。この『壁』こそがこの世界に格差社会を普及させてしまっていた。
CとDランク、いうならば、Cランクは貴族、Dランクは貧民だ。
そして、それはCランクの人間に、自分は神に選ばれし人間とばかりの誤解を与えていたのだ。
ただ、魔術が使えるだけだというのに。




