48会食(タツヤ)
どうしていいのか、わからない。
目の前には、よだれが垂れそうなほどに、うまそうな料理が並んでいる。
霞のほうへと目をむける。霞は口を半開きして、すでによだれをたらしているではないか。
おい、はしたないぞ。
と思ったら、我慢できずに、目の前の骨付き肉をがっつきはじめた。
とりあえず、毒は入ってなさそうだ。
全然理解が追いつかない状況ではあるが、目の前に料理に手を付け始める。
「口に合うか?」
聞いてきたのはアイギスだ。
「あぁ、問題ない。」
「それは良い。妾もいささか寝すぎて状況がよくわからん。地殻変動でこの城が地下に落ちたところまでは覚えているが、そのあとはまったくわからん。人間よ、一つ聞く、地上に大繁栄しおった人間はどうなった?」
自分が初めにこの世界へ転生した先は、地上の世界だった。
地上は惨憺たる状況、ビルなどの現代的な建物が並ぶも、すべて廃墟、今にも崩れそうだった。草木がビルを取り巻き、野生動物が交差点を悠々と闊歩する。
そこに、もはや人間の姿はない。
原因はわからない。でも、何度も転生し、似た世界をたくさん見たから知っているさ。原因はほぼ100%戦争だ。世界を巻き込む大戦争に発展し、皆、自滅したんだろう。
「地上の人間は、おそらく、絶滅した。生き残りが地下迷宮にいる。」
「なんじゃと。真かそれは。」
アイギスは目の前の料理に手を付け、器用にナイフとフォークを操作していたが、その手を止めた。
その表情はどこか嬉しそうだ。
「ムシャムシャ、戦争よ。世界戦争が勃発したのよ。ムシャムシャ、全部滅んだわ。地上で生きている人間はいるかもしれないけれど、ムシャムシャ、絶望的ね。」
そこに霞が補足を入れてくれた。それはいいが、ちゃんと食べてからにしろ。
だが、その話を耳にしたアイギスは微笑みを浮かべたのだ。
「かっ、かっ、かっ!なんと滑稽な。自ら自滅を選ぶとはな。まったく、同じ種で争うとは、まったく、我ながら醜い種を生み出してしまったものよ。」
「あ、あの、アイギスさん??生み出した?というのはどいういうことでしょうか?」
「どうも、何も、そのままぞ。人間という種はな、妾が手違いで生み出してもうた種よ。しかも、単純な動物であればまだしも、知恵を持ちよった。そのうち我が血種に対しても、敵対するようになっての。人間風情が憎たらしい。」
あぁ、なるほど。アイギスの言葉を聞いてなんとなく理解できた。
おそらく、アイギスは『敵』だ。こいつは憎き人間を消したいのだ。
でも気になることもある。妖精は別としても、俺たちも人間だ。
「人間を憎んでいるのか。その割には、俺たちをこんな余興に付き合わせるんだな。」
「当り前じゃろ。貴様らは、この世界の人間とは異なるものよ。記憶と力を持ったまま『転生』したのじゃろ。」
「!!!!!」
思わず、アイギスの顔を直視した。
ドクン!
それと同時に、心臓の鼓動が大きく波打った。
それは霞と初めて出会ったとき以来。
アイギスからは「転生」という言葉がでた。アイギスは「転生」という現象を知っているのか。
これまで幾度となく転生を繰り返した。そのどの世界でも、「転生」という現象を知る者など誰もいなかった。
「ん?転生?」
霞は初めて聞いた言葉なのか、首をかしげていた。




