38幕間:超ホワイト企業RGF(朱音)
資源開発の最大手RGF社の第一最前線調査部隊、曹長、朱音である!
我が隊は、グローリーホールを攻略するため、日々、その作戦を実行している部隊なのであります。
グローリーホールから少し離れた個所に、二階建てほどの大きな小屋が設けられており、これがRGFの最前線基地なのであります。
我が第一最前線調査部隊はその一角にあるのであります。
部隊とは言うものの、やっていることは普通の会社となんら変わらないであります。多少、ちょっと量が多いかな~というぐらいであるのです。ここで少し、曹長、朱音の仕事を紹介するのであります。ちなみに曹長というのは、一番下っ端から一階級だけ上級なだけで、実質、下っ端となんら変わらないのであります。
まずは、設計であります。
我が隊ではグローリーホールを攻略するため、下へ降りるための造成の工事や、荷物をグローリーホールへ運搬する機械などの設計を行っているのであります。もちろん、設計があれば下請け業者へ施工の指示なども我が部隊の仕事であります。工事の現場からは
「おい、寸法が合わねぇぞ!ふざけんじゃねぇ!仕事が進まねえんだよ!今すぐ設計しなおせ!」
などと恫喝されるであります。さらに、上司からは、
「てめぇ、わかってるだろうな。てめぇの設計が全体の工程を遅らせるんだ!遅れは一秒たりとも許さねぇ!」
と下からも上からも恫喝されるであります。
さらにここは大迷宮の中とはいえ、場所は日本。そのため日本の法律は従わなければならず、例えば、固定資産の管理もしなければなりません。ここには多数の重機や、機械、建築物など、資産として価値のあるものが多数あるわけで、それらの管理をしつつ、減価償却などの計算もしなければならないのであります。中には小さなものでも高額な資産などが五万とあり、いつもどこにあるのかと、宝探し状態であります。
上司からは、
「てめぇの管理が甘いんだろうが!キチンと管理しろ!」
と言われるのでありますが、一人で処理しきれないほどの数があるのであります!実にやりがいがあるのであります。
ホワイト企業であるRGF社は率先してIT化も進めているのであります。
例えば、勤務管理。紙での勤務記録は廃止され、すでにシステム化されて、PC上で管理するようになったのであります。システム起動には指紋認証と顔認証に加え、パスワード入力が必要なのであります。情報セキュリティの面もしっかりしているので、英数字、記号、大文字小文字を組み合わせ、100文字以上、単語名などの類推されるような文字並びは禁止で、すべてランダムにする必要があるのであります。さらに、別のシステムとのパスワードの兼用は禁止、パスワードをメモに残すこともセキュリティ面から禁止であります。
勤務記録以外にもシステムはたくさんあって、パスワードを三回間違えると、すべてのシステムがリセットされるので、それはもう、死に物狂いで、全システムの暗号化されたような長い文字列を覚えるのであります。
そして、晴れて、システムログインできると、サーバが貧弱なせいで、システムの立ち上がりに1時間はかかるのであります。その間はPCのCPU占有率が100%とかになっていて、別の仕事も出来ないのであります。
そして、ようやくシステムが使えるようになって勤務記録を入力しようすると、「ただいまの時間はメンテナンス中のため、利用できません。」と表示されるのであります。
何度、画面に向かってパンチを繰り出したことか。
情報システム部にシステムの増強をお願いしたときは、上司からは、
「貴様!文句言ってんじねぇよ。他人のせいするな!自分で何とかしろ!」
と言われたのであります。実に、その通りであるのです。他人のせいにしてはいけないのであります。すべて自分ごとと思いながら仕事に取り組まないといけないのであります。先日、システムの知識もなく、まったくゼロの状態から、独学で調べ、このシステムの増強に成功したのであります。
ちなみに、情報システム部の人は、タバコを吸いながら、「助かるわー。」と言っていたのであります。人のためになるって幸せであります。
さらに、我が社の予算は、多数の補助金で成り立っているであります。補助金を利用したからには、その報告が必要なのであります。補助金とは言っても、多数のステークホルダー様から補助金を受領しているわけで、ほぼ毎日、辞書の厚さぐらいの報告書を書き上げているのであります。上司のダニエルからは、
「てめぇ、これで報告書か!誤字だらけ、文書の流れもおかしい!、こんな報告書出してみろ。補助金を出していただいたステークホルダーの皆様へ合わせる顔がねぇだろ!」
と恫喝されるのであります。時間がないので仕方がないのでありますが、短時間でこれほどの報告書を書けるぐらいの能力に向上したのであります。
そして、補助金の話もあるので、経理も管理するのであります。
作戦とは言ってもタダではないのであります。グローリーホールの下へ降りるために造成したり、工事したり、試験をしたりといろいろとやるわけで、建材費、外注費、試験費、それに加え、水光熱費や人件費などもかかるわけであります。当然、予算は限られているわけで、その予実管理をするわけなのですが、当然、予算が足りなくなるわけであります。さらに、次年度の予算を計画しようにも、どう見ても予算が足らず、上司からは、
「予算をどっかから見つけてきて、工面するのがお前の仕事だろ!」
と言われるわけであります。無茶であります。
さらに、ここは現場の最前線であります。安全は第一。整理整頓も重要であります。さらに、凶暴な魔獣ものいるのであります。そのため、一日に多数のパトロールを行うのであります。
一つ目は、不安全箇所がないかをチェックするパトロールを安全課と実施するのであります。不安全がないかだけでなく、キチンと整理整頓されているかまで、チェックし、工具が少し斜めに置かれているようであれば、怒涛の如く指導が入るであります。実にホワイトな企業であります。
その次は、大耳熊などの危険な動物がいないか、一定時間毎にパトロールをするのであります。これはシフトで組まれて一人から二人で実施するのであります。
さらに、工事がキチンと進捗しているかのパトロールを上司と実施して、当然のことながら工程から遅れるわけにはいかないので、上司から毎日「ふざけるな!」と怒鳴られるのであります。
さらに我が社は環境に優しいホワイト企業であるので、ゴミ分別がキチンとされているか、事務所の冷暖房の温度は適切か、現場では有害物質が使われてないか、環境パトロールと称するパトロールを環境課と実施するのであります。
一日の日課のほとんどはパトロールなのであります。
さらに、他にもあるのです。下請業者さんへの教育、工事の人員のシフト管理に、工程管理、品質管理、契約書作成から雑用など様々な工程をこなし、最終的にこのグローリーホールの底へ降りるという、前代未聞のミッションを達成する、実にやがいのある部隊なのであります。
そして、たまにRGF社の偉い人がこの現場にやってきては、
「まだ、これしか進展してないのか!貴様ら、ラビリンスの自治政府様や投資家の皆様が期待しているのだぞ、金だけ食いやがって、成果を出せ!成果を!」
と怒鳴っていくのであります。やることが多すぎるので遅れるのは当たり前なのであります。
さて、あたしは、RGFの募集要項を見た際に、こんな風に書かれていたのであります。
有給休暇消化率80%以上
裁量労働制、勤務時間も完全自由。
離職率0%(復職を含む)
社員全員が生き生きと働いています。
と作業服を着たキレイなお姉さんが笑顔で手を振っているポスターが書かれていたのであります。
なんてホワイトな印象の企業なのでありましょうか。ちなみに、あたしの当初の応募先は総務課、なぜか、試験を受けた際に、適性あり、と判断され、どんな部署かとウキウキしながら配属されたのがここであります。
裁量労働制、うん、とてもいいであります。もし、これが一日所定時間は8時間、残業は一日4時間まで、月で80時間まで、などと時間に縛られるようであれば、とても、とても、今の仕事は終わらなかったであります。
勤務時間も自由、うん、とてもいいであります。我が部隊に配属になると、睡眠時間が邪魔になるのであります。なので、我が隊では数あるパトロールの時間の合間を縫って、マジで寝ないの死ぬ、というときに自由に睡眠時間が取れるであります。嬉しいことにこの事務所には宿舎が併設されているのであります。なので、帰宅を気にすることなく24時間体制で仕事を進めることができるのであります。
有給休暇消化率80%以上、これは疑問に思いました。あたしは有給なんて取ったことがないのでありますが、上司のダニエルに聞いたら教えてくれたであります。
「あぁ、それな。総務課とか、経理課とかのヒマな部署が数を叩きだしてくれるんだ。だから、うちらは気にせずに安心していいぞ。」
なるほどであります。これなら、有給消化率など気に気にせずに働けるでありますね。ところで、総務課や経理課なんてあったのでありますね、あたしが全部やっているのは気のせいでありましょうか。
そして、「社員全員が生き生きと働いています。」はまさにそのとおりであります。
我が部隊では怒号が絶えないのであります。
「おい!納期に間に合わねぇぞ!どうすんだ!」
「貴様!出資者の皆様どう説明するんだ!」
「おい!設計の寸法に合わねぇぞ!」
みんな生き生きとしているのであります!
そして、離職率0%(復職を含む。)。離職率は非常に高いのでありますが、なぜか、みんなしばらくすると復職するのであります。なんでも離職する多くの人は、正規の手続きをせずに失踪するそうで、見つけ出しては法務部が、まだ職務の責務があるとか、なんとかこじつけては、引き戻すのだそうです。
すでに別の会社で雇用されていても、我が社の法務部は超がつくほどの優秀なので、裁判などを起こしてでも、敗訴することなく、我が社に引き戻すのだそうです。
そうして、復職した社員へは、サポートプログラムが充実しているそうで、我が社の社訓を書き写したり、復唱するなどを24時間延々と、それは精神が崩壊するほど継続するそうで、プログラムが完了したところには、我がRGFに対し、忠誠を誓う優秀な社員となって生まれ変わるのだそうです。
「あぁ、なんて素晴らしい会社なのでしょうか。福利厚生制度も整い、こんなやりがいのある仕事を託されるなど、わたくし、第一最前線調査部隊、朱音、このRGFに勤められて、大変幸福であるのです!」
パチパチパチパチ!
周囲からは拍手の喝采であります。皆、社員が目があらぬ方向を向き、狂気の沙汰であります。
朝の朝礼では、当番制で一人が我が社の素晴らしいところを読み上げるというイベントがあるのであります。ちょうど今日は私の番であったのであります。
これこそが、我が社の優秀な第一最前線調査部隊、別名、第一過労死候補部隊、俗称、社畜部隊、朱音であります!




