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32幕間:職業安定所での仕事(ダン)

 

 突然だが、私は、冒険者ダンと言う。

 Bランクの超優秀でもないが、冒険者ではある。


 ここラビリンスでは鉱石や動植物を採取する以外にもお金を稼ぐ方法がある。

 それが、職業安定所、仕事を斡旋してくれる機関であるのだ。

 もちろん、通常のようにレストランの求人だとか、水道管の整備の仕事など中、長期的な仕事の斡旋もあるのだが、ここラビリンスにおいては、大迷宮という特殊な環境のためか、短期的なミッション系のような仕事が圧倒的に多い。


 たとえば、鉱石の採取や、珍しい植物の採取、あるいは、凶暴な大耳熊の討伐など、まるでアニメなどに出てくる冒険者ギルドのような任務が多数あり、私たち冒険者たちの間では冒険者ギルドと呼ばれているのだ。


 特に討伐系の仕事は、危険を伴うため、一定のランクに達しないと斡旋してくれないなど、実にシステムがよくあるアニメの設定に類似している。

 ほぼ確実にお金を稼ぐことができ、ごくまれにだが一攫千金を得た冒険者もいるので、貧乏冒険者には人気がある。


 私はある時ギルドにて、ある区画にて大耳熊が大発生しているので討伐してほしい、という仕事を受けたのだが、そこで私はとてつもない光景を見てしまったのだ。


「きゃぁぁぁ!」


 悲鳴をあげる女性の声、ふと駆けつけると、目を疑ってしまった。確かに、大耳熊が大発生していると聞いてはいたが、これは一体なんだ。

 地面を埋め尽くさんとするほどの大量の大耳熊がいたのだ。


 彼女めがけて、ド、ド、ド、ドと胸に響くような地響きがする。

 彼女を助けに、そこへ立ち向かうにも、ここは断崖の上、彼女がいるのは崖に挟まれた谷にいるのだ。とても駆けつけることもできないし、私は接近戦専門であり、遠距攻撃可能な武器も持ち合わせていない、それに、こんな状況では武器があっても何もできないだろう。


 彼女は背後から襲い来る大耳熊を背に全力で逃げるも、徐々にその距離は詰められていく。

 周りには誰もおらず、これはもう全体絶命の大ピンチというところで、なぜか彼女は突然に逃げるのをやめたのだ。


「ちょっと、誰もいないじゃない。仕方ないわね。自分でやるかぁ。」


 と言って、ふと彼女は立ち止まり、手を伸ばした。そして、何かの魔術だろうか、手のひらには、何か青白い光が灯ったかと思うと、その手元の光が一気に増大するではないか。


 そして、振り返り様の瞬間、その女性は手に灯った青白い光を、横一線に薙ぐように放った。

 一瞬にして、青白い光のようなものが、大耳熊の前から後ろへと広がったと思えば、次の瞬間に、まるで、目の前の光景が、二つの世界に両断されたかのように、上半分と下半分に別れたように見えた。


 それは一瞬だったので、もしすると、何か自分の見間違えなのかもしれない。


 だが、その次の光景には、目を疑った。

 そのわずかの刹那の後に、先ほどの上半分と下半分に別れたところ境界として、あの巨体な大耳猫たちが腰からキレイに両断され、地面に倒れていた。

 一体ではない、あの大群の全部が、だ。


 バシッ、バシッバシッバシッ!


「うおっ!」


 そして、やや時間をおいて、ものすごい風が吹き荒れ、思わず声が漏れた。

 魔術を放った彼女の手元に向けて、十分に離れているというのに、ものすごい暴風が吹き荒れ、彼女のほうへと吹き飛ばされそうになる。

 おそらくは、何かしら真空を生み出す魔術であったのだろう。


 ようやく、落ち着き、再度、その光景を目にした。

 何度、目を瞬きしたことだろう。瞬きを繰り返してもその光景が変わらないことから、これは見間違えではないのは間違いないが、この光景を信じることができない。


 あの巨体を両断するどころか、この大群を一瞬のうちに両断する魔術など、まるでアニメで見たような光景、それが現実に起きていた。


 そして、まだ終わりではない。よく見ると、群れからはぐれた数頭の大耳熊が残っており、彼女を目がけて突進しているのだ。


 彼女は、それをまるで闘牛を交わすかのように、体が触れるか触れないかの寸前のところで避け、その回避する際に、振り返る。

 そして、振り返り様に、手に何かの魔術で作った黒い球体を生み出すと、大耳熊の背後にそれを触れさせる。

 すると、触れた部分がキレイに、球体の形になって欠損し、そして、大耳熊はその場に倒れていく。


 さらに、突進してくる別の大耳熊には、足元へつむじ風のようなもの起きたかと思うと、大耳熊の足が両断されて、宙を舞うように大きく転んだ。その宙を待っている大耳熊へ、彼女の手からレーザー光線のような光が発せされれると、致命傷を与えた。


 おそらくは風系と光系の魔術であろうか。


 大耳熊は、全滅。

 血塗られた大耳熊の死体の群衆あるフロアの真ん中で、キレイな衣に身を包んだ女性が一人立っていた。 


「自分で対処すると、汚れちゃうのよね。まったく。カモがいれば楽だったんだけどね。」


 と言いながらも、何事もなかったように去っていった。


 肩まで伸びる艶やかな黒髪、そこそこの豊満な胸、瑞々しいまでの唇、やや茶色がかかった瞳。

 キレイな女性ではある。

 だが、自分はそこで思ったのだ。この国の女は怖いと。


 なお、討伐系の仕事の場合は、今回のように他の冒険者によって討伐されてしまうことはたまにある。

 それを自分の成果として報告することもできなくはない。

 ただ、自分の誇りとプライドが許すかどうかであるが、自分にはあの女が怖すぎて、自分の成果として報告することは出来なかった。

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