27地図職人のピンチ(タツヤ)
さて、翌日である。
今日も、部屋のドアを開けると、提灯虫がいい感じに街を照らしている。
「あら、おはよう。早いのね。今日はどこかに行くの?」
「あぁ、昨日作った地図を売りに行くんだ。街に出るから、他人には見えないように、例の魔術をかけておけよ。」
「わかったわよ。」
アリエルを自分の肩に乗せながら、久しぶりにリアの「小さな地図屋さん」を目指して街中を歩いていく。
別にアリエルを家に残してもいいのだが、一人でお留守番させるのが可哀そうというよりは、何をされるかわかったもんじゃない。
なので、一緒に連れ出したのだ。
リアの小さな地図屋さんは街の中心部付近にある。しばらく時間がかかるが、アリエルと小声でたわいのない話をしながら街を歩いていく。どうやらアリエルは、迷宮都市ラビリンスは初めてではないようだった。
妖精の村があったころは、妖精複数人で出向いてはイタズラをして遊んでいたのだという。
みんな誰しもが、ここに置いたはずのものが見つからないだとか、洗濯した靴下の片方が見つからないとか、ふと転んだ際にタンスの角に足の小指をぶつけたという経験があるだろう。
「あぁ、あれはですね、あたし達、妖精のちょっとしたイタズラなのです!」
とアリエルは偉そうに言う。マジで妖精という生物は人間にとって害悪でしかない。あとで駆除しよう。
そんな話をしているうちに、「小さな地図屋さん」へと着いた。
「リアいるか?新しく地図を作ったから、買取をお願いしたい。」
店に入り、店の奥へと声をかけると、店主のリアが奥からやってきた。
「あら、久しぶりね。女湯のぞきのタツヤさん」
「!。。。はっ?」
リアはなにか、汚いものを見るかのような目でこちらを見てくる。
「聞いたわよ。なんでも、温泉で女湯を覗こうとしていたらしいわね。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て。何かの誤解じゃないか。」
「誤解も何も、うちの酒場じゃ噂で持ちきりよ。」
「いや、待て待て待て待て、女湯なんては覗いてないぞ。」
「でも、昨日の温泉で、女湯を覗ける魔術があって、覗こうか、どうか、心の中で迷っていたんでしょ?」
「え?えぇ、まぁ、、、確かに、迷いはあったかもしれないが。。。。」
「うわぁ。。。やっぱり、事実だったのね。タツヤさん、こんなことする人ではないと思っていたのに。最悪、キモっ!変態!女の敵!死ね!消えろ!」
昨日の温泉の話で女湯の話となれば、関係する奴は1匹に限られる。
ふと、肩に載っている虫に視線を送ると、肩にいる虫は視線をそむけ、口を尖らし口笛を吹こうとしている。
ヒュー、ヒュー
いや、お前、口笛出来てないぞ。
「おい、お前、何をした?」
小声で肩にいるアリエルに小声で話しかける。
「な、何よ、面白うそうだったから、ちょっと魔術でみんなに言いふらしただけよ。あたしの魔術をつかえば、心へ話かけることもできるのよ。えっへん!」
「おい、偉そうにするところじゃねぇし、それもあれか、妖精のイタズラっていうやつか。」
「そ、そ、そうよ。」
「。。。害虫。。。。次、やったら、オークションに売り飛ばすぞ。」
ドン!
音がする方を見ると、リアがテーブルの上にお金の入った袋を当てつけるかのように置いた音だった。
「はい、今日までの売上ね。変態さん。」
「ちょ、ちょっと待てって。」
「あら?何かしら、へ・ん・た・い・さん?」
「ちょっと待て、何かの誤解だ。」
これは、早急に帰宅してアリエルの能力を分析する必要があると思ったのだ。




