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25大迷宮温泉(タツヤ)

 

 ところで、ラビリンスは地下深く作られた迷宮都市だ。

 地下を深く深く進んでいくと、必ずぶつかるものがある。

 それは水脈。


 当然、この大迷宮にも多数の水脈が網の目のようにめぐっている。

 そして、それは巡り巡って、このラビリンス地下都市のある地下の巨大な空間に集まるのだ。


 その水は非常に清らかで透明度が高い。地底湖なども多数あり、遥か深くの湖底がくっきりと見えるほどだ。

 この水は地下から湧き出た湧水が集まったもの。自然が生み出した天然の冷泉である。

 そして、さらに、地下を深く掘り進むと、地熱が得られるわけだ。迷宮内に集まった水脈はこのラビリンスに集められ、天然の泉を形成し、そして、地熱で温められる。


 温泉である!


 温泉といっても、源泉は冷たい冷泉なので、温泉と呼んでいいのか微妙なところではあるが、雰囲気は温泉だ。

 しかも、一切の手のくわえられてない地底湖の水をお湯にしたような天然の温泉。

 天然の地底湖なので、深さはかなり深い。誰かが調査したところによると、数百mぐらいの深さが確認できたそうだが、その数百m先の湖底が見えるほどの透明度を誇る。


 若干、地熱よりも地下の水脈が多いせいか、ちょっとぬるいが、十分過ぎる。

 皆、思い思いに、水着に着替えて地底湖に浮かんだり、ダイビング用の機材を持ち込んで、温泉ダイビングというのも流行っているそうだ。


 もちろん、ここは近い迷宮といえども、場所は日本、水着に着替えるような温泉以外にも、日本人の大好きな男女別で裸で入浴する露天風呂もあり、海外の冒険者にも人気である。

 露天風呂といっても、巨大な洞窟の中にある露天風呂なわけで洞窟風呂と言ってもいいかもしれない。

 水着で入る地底湖の露天風呂も悪くはないが、いつも観光客でごった返している。それよりは、よくある露天風呂の方が落ち着いていて、俺は好きだ。


 少々、値段がはるので毎回来るわけではないが、時々、迷宮の最前線など奥深くまで潜ったときには、有効活用させてもらっている。なによりも、気持ちよくて、疲れが取れる。


 そして、今日も、明日以降の作戦を考えなか行けないのだが、いろいろあったわけで、温泉に入らなければやってらないということで、大迷宮温泉にやってきたわけだ。

 お隣さんの霞も、知らなかったようなので、一緒に案内してやった。

 そして、湯舟でじっくりと疲れとるはずだった、、、のだが、、、


「なぜ、お前がいる。」


 この温泉の湯気に紛れて、くっきりとは見えないが、そこにいるのは手に乗りそうなほどに小さな人の形をし、背中には透明な羽をもった、、、虫だ。。。 


「別にいいじゃない。周りからは見えないように魔術をかけたから、大丈夫なのです。」

「そうじゃない。なんで男湯にいるんだ?!」

「だってぇ、女湯でしょ。その、、、もじもじ、、、恥ずかしいじゃない!」

「おい、お前、自称、妖精メスだろ。だったら女湯行けよ。そもそも、周りから見られないような魔術かけてるんだろ?」

「そうなんだけどぉ、だって、女性が裸なわけで、霞さんもそこにいるわけで、キャー。」

「言っておくが、ここは男湯だぞ。俺も裸なんだが。。。」

「それは大丈夫、気にならないから。」

「お前が気にしなくても、俺が気になる。」

「あらやだ、あたし、裸じゃないわよ。」

「誰が、羽虫のメスに欲情するんだ。」


 そんな会話をしているが、ここは露天風呂(男湯)の一角、話し声が聞こえないように、少し距離をおいて露天風呂の端のほうで湯につかっている。本来は、一人で露天風呂を満喫する予定だったのだが、目の前の湯には例の羽虫が湯につかっている。

 はたき落としてもいいのだが、一応、着衣しているも、そのまま風呂につかったせいか、若干、透けている。

 ただの虫のメスに欲情する俺ではないが、ちょっと、虫とはいえ、人間によく似ているので、目のやり場にちょっと困るのだ。


「だったら、一緒に女湯行かない?」

「おい、お前は何を言っている。俺を変態にさせたいのか。」

「そうじゃないわよ。あたしが使っているこの魔術を、あんたにもかけてあげるのです。そうすれば、周りの人間からは気づかれないでしょ。」

「はっ?」


 この虫は何を言い出すんだ、そんなこと出来るわけないだろ、と一瞬思ったのだが、、、

 ちょっと待て。


 少し冷静になって考えてみる。

 それは確かになんとも有用な魔術の使い方であり、魅力的ではあるのだ。


 だが、よく考えろ、この羽虫の魔術だ。

 どうせ、こないだのように、「あ、魔力が尽きた」といって、途中で解除されるのがオチなのだ。

 そして、万一、バレた場合のリスクである。

 うん、少なくともこの街にはいれなくなる。隣人の霞さんから犯罪者を見るような目で見られ、小さな地図屋さんのリアからは変質者を見るような目で見られ、収入源は絶たれるであろう。

 さらに、この羽虫のこと。おれがこの魔術で女湯に入ったということ言いふらすに違いない。

 ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ。

 リスクしかない。答えはNoである。


「何を言っている。俺がそんなことするわけがないだろう。」


 と、俺は紳士的に羽虫に答えるのだ。


「何が『俺がそんなことはしない』よ。頭の中でいろいろ考えてるじゃない。何が『あ、魔力が尽きた』よ。あたしが、そんなことするわけないし、他人に言いふらす訳ないのです。」

「・・・、ちょっと待て!ちょっと待て!おい、アリエル、なぜわかった。」

「なぜって、頭の中を透視したからなのです。あたしは妖精なのです。それぐらいお手の物なのです!」


 この虫、今のうちに駆除せねば、と思ったのは気のせいだろうか。


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