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23グローリーホールへ(タツヤ)

 

 ここは深層1.5万mの大迷宮の調査の最前線と言われている場所にある大穴。

 この大穴から先の噂は一切耳にしたことがない。

 つまり、その先はだれも踏破したことのない未踏領域。

 提灯虫が洞窟内を薄暗く照らしながらも、わずか目の鼻の先には、ぽっかり大きな漆黒の大穴が空いているのが視認できる。それこそが、大迷宮の最前線、グローリーホールと呼ばれる大穴だ。


 俺たちは、その大穴の淵へとむけて、ゆっくりを歩みを進めていく。


 この大迷宮が発見されて以降、RGF社の民間兵による調査隊が組まれ、地下深くへと迷宮調査が進んだ。

 だが、それは深層1.5万mまで達したときに行き詰った。

 それが、このグローリーホールと呼ばれる大穴のせいだ。


 グローリーホールと呼ばれる大穴は、その名の通り、巨大な大穴。向こう岸が見えないほどで、深さは当時の調査隊が調べたところで、軽く2万mは超えたらしい。


 RGF社によって、現在も調査中だが、大穴の壁はいずれも垂直にそそり立ち、降りるための足がかりが一切ない。壁は屈強な岩石なので、容易に造成もできない。

 調査が難航するのも当り前だ。


 当時の冒険者は、他のルートを探索した。他にも支洞があり現在は、そのすべてが調査しつくされ、どの支洞も行き止まりであることがわかっている。

 さらなる地下へと進むルートは、このグローリーホールを降りしかない。


 今もなお、RGF社でこの大穴を下るための計画が進行中だ。大穴の途中に中継所を建設するそうだが、硬い岩盤に阻まれ難航しているそうで、進んでいない。


 グローリーホールの縁まで来た。

 足元のグローリーホールの縁を形作る地面が欠け、欠けた部分が瓦礫となって大穴へと吸い込まれる。

 音が一切しない。

 それほどに穴は深いのだ。


 その巨大さは畏怖しそうなほどに大きく、今は誰もおらず、気持ち悪いほどに静寂だった。


 そう、今からこの漆黒の穴に飛び込む。恐怖しかない。足がすくみ、少し震える。


「どうしたのです?震えてるのですよ。もしかして、、、怖いのですか?」

「うるさい。怖くなんかねえよ。」


 嘘だ。強がってみただけ。

 実際、過去の転生で高所から突き落とされることなんて、何度もあった。だから、慣れているはず。けど、この大穴の前にすると、恐怖しか感じられない。


「行くか?」

「えぇ、行きましょう。」

「魔術なら、あたしに任せるのです。」


 二人と妖精一匹は大穴に向けて一歩を踏み出す。


「じゃぁ、アリエル、始めてくれないか。」

「えぇ、任せなさい!」


 アリエルは、そっと目を閉じ、手を合わせた。

 俺たちを取り囲むように、半透明の膜の球体に包み込まれた。その半透明の球体はそっと地面から浮き上がる。


「えっ、浮いたわ!」


 そのまま浮き上がり、グローリーホールの穴の中央部までゆっくりと移動する。

 グローリーホールの漆黒の暗闇が真下に見える。この薄い膜が、もしも、割れたら、と思うと背筋がぞっとする。

 そして、そのまま球体はゆっくりと下降しを始める。


 下降して、しばらくすると徐々に暗くなる。

 ときどき、RGF社の調査部隊が転落防止のためか、ネットが建設され、それらの隙間を縫って球体は下降する。


 霞も最初はざわついていたが、口数が減ってきた。真っ暗な穴を進んでいるせいか、気温が冷たく感じられる。


 アリエルは未だ、目をつむったまま、手を合わせてこの球体を操作しているようだ。

 ただ、ちょっと額から汗がにじんでいるように見えた。

 操作にそれなりに集中力がいるのだろう。


「アリエル、大丈夫か。汗をかいているようだが。」

「え、えぇ、、、、大丈夫なのです。ただ、思ったよりもちょっと重いのです。。。。」


 ただ、その会話を機に、それまで静寂であった世界がぶち壊しになった。


「えっ、あたし?ちょっと待って、あたし最近、痩せたのよ。あたしじゃないわ。」


 と言って、霞は俺を見る。


「ちょっと待て。別に体重なんて気にしているわけじゃないが、別にそこまで増えてはないぞ。」


 とは言ったものの、確かに太ったかもしれないが。


「アリエル、大丈夫ろうな。魔術の天才なんだろ。」

「そうよ。この天才、、、、アリエルに、、、任せて。。。。」


 ちょっと待て。あたしの魔術があるから大丈夫と言っていたがこんなところで落下などシャレにならない。


「だ、大丈夫なのです。もし、万が一があっても、あたしは空を飛べるのです。」

「ちょっと待て、お前は大丈夫でも、こっちは死ぬぞ。おい、アリエル、浮上だ。作戦中止だ!」

「あっ!」


 と、そのとき、アリエルがまるでフラグを立てるかのような一言を発した。


「ごめん、気が尽きたわ。さっきの雷を操作した魔術で結構、気を使ったみたい。てへっ!」


 途端に俺たちを包み込んでいた半透明の球体は消失し、グローリーホールの漆黒へと自由落下した。


「あああぁぁぁぁぁ!てめぇ、てへっ、じゃねぇぇぇぇ!ゴミ虫がぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

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