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21見よ、この麗しく華麗な魔術を(アリエル)


 はい、アリエルです。

 結局、虫かごに入れられたままです。

 慣れって怖いですね。なんだか、この虫かごの中にいることが、当たり前に思えてきました。

 あたしをこの虫かごにぶち込んだタツヤという男と、あたしを売ろうとした霞という女は、どうやら深層1.5万mのグローリーホールの付近に来たようで、魔獣の巣とか呼ばれている場所で、迷宮ガラスの大群と戦っているようなのです。


 ところで、あたしは魔術が使えるのです。人々から少々気を吸収する必要があるのですが、いろんな魔術が使えます。

 中には、索敵に特化した魔術なんか使えるわけで、そんな便利な魔術はいつも常駐させているわけです。

 なので、あたしには周囲に何がいるかなんて容易に把握できるわけですよ。


 で、ですよ。

 索敵なんて素晴らしいことの出来るあたしだからこそ、目の前から大量の生き物がこちらに向かっているのがわかるわけですよ。

 今、タツヤと霞は迷宮ガラスの大軍をやっつけたところで、安堵しているようですが、ヤバそうな雰囲気しかしないわけです。


「あの~、休憩しているところ悪いんですが、まだ、なんかの魔獣がこちらに向かって来てるのです。ちょっとヤバいのですよ。」

「ん?う~ん、俺には何も見えないぞ。」

「あたしの索敵魔術がそう言うんだから、間違いないのです。」


 この男、まったくこの天才で聡明で可憐なあたしをまったく信用しようとしない。

 だけど、霞とかいう、人間族のメスは、なかなかいい感をしているようなのです。


「ちょっと、なんか奥のほうから、なんか聞こえない?」

「ほら、あたし、言った通りなのです。少しは信用しろ。このあたしを。」


 あたしを捕まえたタツヤという男は、うーん、と言いながらも目の前の暗闇をじっと見つめていますが、しばらくすると、背後からは、バサ!バサ!バサ!バサ!バサ!という凄い音が徐々に迫ってくるわけ。


「な、、、まだいたのね。フレイムストーム!!」


 そこに現れたのは、再び、あの黒い巨大な魔獣のような迷宮ガラスの大集団。それがですね、一団だけでなく、二団、三団と連続して現れてくるわけですよ。まぁ、魔獣の巣と言われているぐらいだから、一団だけのはずがないのです。

 既に霞が再度、炎の魔術を放出しているけど、結局、黒こげになった焼き鳥が増えるだけ。あ、元々黒いからわからないか。

 だけど、それじゃ、意味ないのよね。迷宮の奥から次々と迷宮ガラスが襲ってくるわけ。結局足止め程度にしかならないのです。


「フレームストーム!」


 霞が魔術を放った後、霞は虫かごを持って突進します。


「えっ、ちょっと揺れるん、だ、け、ど!!」


 当然、奥からは新たな迷宮ガラスの大集団がわいてくる。周囲は一面の迷宮ガラスだらけなのです。だけど、霞は、魔術で小さな風を起こしてうまく躱しながらも、走って駆け抜ける。


 うまいのです!使っている魔術は、誰でもできるような弱い魔術なのですが、それをうまく制御しきっているのです。とてもこれが人間のBランクの冒険者とは思えないほど。


 タツヤのことも気になり、背後を振り向くのです。


「俺のことはまったく問題ない。このまま進もう。」


 タツヤも腰の小さな刀で、この迷宮ガラスの大群を見事に振りさばきながら、この迷宮ガラスの嵐を中を進んでいるのです。その光景は、まるで、タツヤにぶつかりそうになった迷宮ガラスが、その場に落ちるかのようです。それは、もはや剣の達人ともいってもいいぐらいの熟練度合。これでDランクというのがもったいないほどなのです。


 そのまま、駆け抜けると、洞窟の壁の大きな亀裂から、迷宮ガラスは湧いて出てくるのが見えるのです。

 だったら、この亀裂ごと仕留めるだけ。


 霞も、タツヤも、迷宮ガラスの大軍を躱しながらも、次々と迷宮ガラスを難なく仕留めてますが、なにせ、この大軍なのです。


 じゃ、どうするか? もう、ここまで来たらやるしかないでしょ。ここで可憐で天才とも言われたあたしの登場なわけですよ。


「ふん!」


 ドバッ、ドバッ、ドバッ、ドバッ、ドバッ


 霞が炎の魔術の出力をあげると、周りを嵐のように飛び回っていた迷宮ガラスが、突如の熱風に巻き込まれ、地面に落ちます。迷宮ガラスの嵐が一瞬だけ晴れるのです。

 でも、それも束の間、すぐに次の大群が襲ってくるのですが、その一瞬の隙に、魔術発動の準備をするのです。


 一瞬しかないけども、そのわずかの間に気を集中させる。すると、どうでしょう。

 ここは大迷宮とはいえど、狭い洞窟の中。

 そんな洞窟の天井に、まるで雷雲のような暗雲が雲が一気に立ち込めるのです。時折、稲光ような稲妻が放出され、あたりをピカリと瞬間だけ明るく照らすのです。


 あたしは、直接攻撃するような魔術は持ち合わせてないけれど、天気を変えるとか、心を読むとか、間接系の魔術は大の得意なのです。


 虫かごの中から、あたしは手を向け、振り下ろします。


 それと同時に洞窟の天井に立ち込めた雷雲から巨大な稲光が放出し、迷宮ガラスが湧いてくる穴へと直撃しました。

 そして、あたりは、一面が真っ白な世界へと変化するのです。

 目を開けられないほどに、まばゆい真っ白な世界。一瞬だけまぶしさに目を閉じるも、徐々に、瞼を広げれば、徐々に元の明るさを取り戻し始めます。

 あたりは、未だ、魔術の残骸なのでしょうか、空中にはたくさんの白い小さな球体が浮かび、ときおり、電撃を放出しながらも、宙に浮かんでいるのです。


 そして、迷宮ガラスの姿は、一瞬で灰となり消えたのです。


「死電撃雷、、、天気を雷に変える魔術よ。ねぇ、今日の夕飯は焼き鳥なのです。」

「。。。」

「。。。」

「。。。見事だ。美しい魔術だ。その恥ずかしすぎる名前以外はな。」


 そう言葉を発してくれたのは、タツヤなのです。

 まぁ、あたしにかかればこんもんなのよ。腕を組み仁王立ちで颯爽としていたのだけど、そこに霞が一言追加したのです。


「アリエルちゃん、だめよ。この狭い洞窟で、しかもそんな強力な雷撃は。岩盤が崩れるわ。だから、あたしはわざと炎の魔術をつかっていたのよ。」

「えっ。」


 次の瞬間です。霞が言ったように天上から雷撃の魔術の流れ弾を受けた岩盤から次々と落ちてくるのです。


「おい、このクソ羽虫が!避難だ!逃げろ!」

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