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193変わらない人生(タツヤ)

 

 ここは地上、俺たちはようやく地上に辿り着いていた。

 ラビリンスからの地上への道のりはそれなりの洞窟を踏破していかないといけない上に、そこかしこで、戦闘になっていた。


 俺たちは戦いを止めるように言う。だが、ラビリンスの奴らは、皆、声を揃えて言う。


「ランクD風情が偉そうにしてんじゃね。」「てめえらの暮らしを守るためだろうか。」


 対して、ノヴァリスの奴らも声をそろえて言う。


「誰がラビリンスの人間の話など聞くか。」


 そういって奴らは戦いを止めない。それどころか、俺たちに対しても攻撃を仕掛けてきた。

 だから、俺たちは、そういうやつらは全員一掃しながら、ここまで来たさ。ベベルたちもいれば朱音もいる。それにアリエルも、霞もいる。戦力はまったく問題ない。

 そうやって、ラビリンスから地上を目指すこと、数日。


 そして、「ここ」、に戻ってきた。

 ここは、昔、人々が繁栄した都市のあった場所。今は皮肉のように青空が広がっている。

 見上げれば、そこには空に浮かぶ街、ノヴァリスがあった。


 そして、そのノヴァリスが見える廃墟のビルの間から、そこに、複数の人のシルエットが見えたんだ。さて、今度はラビリンス側か、ノヴァリス側か、停戦の呼びかけに応じてくれるだろか。まぁ、応じるわけがないよな、と思っていが、どこかで見たような姿だったんだ。


「おい、あんた?タツヤか?それと、おい、まさか、あのベベルゼルドたちとRGF社の社畜か。」

「うん?グレゴリーだったか?」

「おい、おい、人の名前ぐらい覚えておいてくれよ。あんた、ラビリンスから来たのか?」

「あぁ、そうだ。あんたはノヴァリスからか?」

「あぁ。捕虜になってた。セシリーとかいうクソ妖精のおかげで脱出してきたところさ。」


 と言いながら、背後を見ると、アリエルによく似た羽虫が飛んでいる。


「何よ。」


 と言ってくるが、まぁ、いい。


「まったく、昔の世界に戻っちまったな。つい、こないだまでうまくやれていたというのによ。」

「そうだな。まったくだ。なんでこうなったんだろうかな。」


 本当だよ。せっかく、せっかく、あの人に会えたんだ。なのに、なのに……、結局、何も変わらない。


 ただ、何もせず、何も変わらない結果になるよりは、ダメでもいいからと、こうして自ら動き、少しでも停戦を呼びかけた。でも、結果はこれさ。

 あぁ、運命とはなんて残酷なんだか。結局、俺は何やってもダメ。

 すべてがダメ。

 ダメのダメ。

 ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、全部ダメなのさ。


 ふと、霞の横顔をみる。

 青空に広がる廃墟の一陣が風が吹いたのか、霞の髪を靡かす。


 俺は守りたいんだ、君を。でも、俺は、もう、どうすればいいかわからないよ。


 グレゴリーは話しかける。


「なぁ、もう、ランクなんてどうでもいいと思わないか?魔術が使えるとか使えないとかどうでもいいだろ?この大地の地下は、魔術とかいうしょうもない物に見栄を張る冒険者たちの住む世界。そして、この空に浮かぶ島は、復讐心に燃える人たちの住む世界。本当にどうしようもない世界。」


 グレゴリー、本当にその通りさ。けど、だったら…、どうする?


「そうだな。」

「本当にそうですね。」


 ベベルに朱音、みんな肯定はするけども、だったらどうすればいいというんだ。口で言うのはとても簡単なんだ。


「ねぇ、タツヤ、こんなどうしようもない世界なんて終わらせましょうよ。」


 あぁ、わかってるんだ。だけど、どうすれば……、えっ?

 俺は、声のあげた霞のほうを向いたんだ。

 そしたら、霞は笑顔だった。それも、とびっきりの笑顔。なんで、あなたは、そんなに笑顔?


「あたしさ、知ってるよ。あの日、あたしが、タツヤの好きな人の転生した人だとわかった。まぁ、あたしには転生する前の記憶なんてないから、どうでもいいんだけどね。」


 霞、さりげなく辛いことを言ってくれる。


「でもさ、そしたら、タツヤは変わった。それまで、なんというか、ただ言われるままに動いているようだったのに、それが、急に変わった。ねぇ、この世界を助けようとしているのでしょ。だって、何度も、何度も、転生を繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して、ようやくこのあたしに会えたんでしょ。だから、この世界を何とかしたいと、行動したのでしょ。」


 霞は俺の手を取ると振り返る。


「だったら、一緒にこんな世界を壊しましょ。」


 一体、なにする気なんだ?


「ねぇ、タツヤ、あたしも何度も繰り返し転生した人間。ただ、記憶がないだけ。でもね、今ね、少しだけ、記憶が戻ってきてるのよね。そういえば、むか~し、昔、こんな後輩がいたなって。だから、もうちょっと、この世界を楽しみたいのよ。だから、せっかくの、この機会、逃すわけにはいかないの。」


 霞の手に淡い光が灯る。何かの魔術を発しようとしていることがわかる。


「あたしもね。何度も何度も繰り返し繰り返し転生を繰り返した。タツヤは剣術が長けたようだけど、あたしは魔術だけは長けた。だからね……、こうするのよ。」


 淡い光が一気に広がり、地上、いや、空までもが覆いつくす。


「ねえ、タツヤ、一つお願い。ノヴァリス、あの空に浮かんでいる島を地上に落せる。」

「あぁ、何も問題ない。」


 壊す?世界を?

 あぁ、そうか。そういうことか。


 そうだった。気づいたよ。今まではずっと自分はずっと、時間の流れに身を任せ、世界の流れるままに身を任せていた。だから、霞の言う発想なんて今まで思いもしなかったさ。


 そうさ、こんな世界なんて壊してしまえばいいんだ。

 こんな俺たちの住めない世界なんて、壊してしまえばいい。


 俺は腰の小刀に手を当て、大きく低く居合を構える。

 俺は魔術は使えないが、気は操れるさ。その気をこれから放とうする腰の小刀に全集中させる。まるで、その場の空気がその刀に吸い込まれるように、辺りの空気から気が流れ込んでいく。


「えっ、ね、ちょっと、終わらせるって何をするつもりなの?」

「ふっふー、セシリー、うちのタツヤと霞を舐めるな、なのですよ。」


 慌てふためくノヴァリスの妖精を、うちの妖精がなだめる。さすがアリエル、わかってるな。


 今、俺はこの世界をぶち壊してやるさ。

 なんかだか人間を恨んでいたアイギスの気持ちも少しわかった気がするな。けど、俺はアイギスとは違う。

 世界を壊してやるが、俺は人間を諦めたわけじゃない。何度もやり直せるさ。だから、こんな世界を壊し、そのきっかけを作ろう。


 既に霞は手を頭上に広げていて、その手の上には眩いばかりの、まるで、太陽が迫ってくるかのように巨大な光の玉が時々バチバチと稲妻を放電しながらも、この頭上に広がっている。巨大で、もう、空一面を覆いつくす光の玉。

 霞はそれをゆっくりと地面へとむけて放出する。


 その地面の先は、大迷宮大都市ラビリンスの頭上。光の球は、その地面を抉るように、バチバチという稲妻と、ゴーという轟音をあげながら、地面の中へとめり込んでいく。そして、そのままラビリンスのへとむけて、地下へ地下へと、地面を抉り取る。


「なぁ、アリエル、あんたなら人の心を落ち着かせることぐらいできるだろ。」

「出来なくはないのです。けど…、範囲が広いとかなりの気を使うのです。」

「だって、お前は俺らの、最高の妖精なんだからな。」

「!?ま、任せるのです!」

「そこの、朱音とかでもいい。好きなだけ気を分けてやる。だから、人々の心を沈めてやってくれ。」

「了解なのです。」


 ふっ、ちょろい、妖精。でも、あながち嘘じゃないさ。


 一方で、俺は、腰に当てた小刀にため込んだ気を、ここで一気に放出する。

 幾度となく書いてきたが、俺は何度も何度も転生を繰り返した。そして、毎度の戦いの中で、剣術だけは異常に長けっていっただろ。

 そう、剣術だけはな、異常なまでに長けたんだよ。もう誰にも負ける気がしない。

 いいか、見ろよ。これが全力の居合いさ。


 放った居合は、目の前の空間を裂いた。そう、空間を裂いたんだ。真空の層ができて空気がなだれ込むというレベル何かではないんだ。空間そのものを裂いた。空間そのものを裂くどうなるか、それは世の物理法則を捻じ曲げ、空間の裂け目は漆黒の闇が広がるように空間が裂けた。

 そして、その裂け目はノヴァリスの空中に浮かぶ島へ一直線に進み、直撃する。

 ノヴァリスの島の浮力となる動力は島の底部にある。そこを直撃し、まるで、裂け目を境に空間に断層が生じたかのように、世界が斜めにずれる。


 直後、裂け目の漆黒の闇は消えるも、空間に断層が生じたままで、そこへ強烈な烈風が巻き起こる。そして、ノヴァリスの空飛ぶ島は動力部分が分断されて、徐々に地面へと落下を始めた。


 今、世界は、ラビリンスへと地面を抉る魔術と、動力を失い地面へと落下するノヴァリス、この対比を象徴するうような絵の構図となる。


 そして、しばらく時間は経過するが、それまでも辺りは轟音が鳴り響き、至る所から雷鳴が轟き、烈風が舞いあがり、舞いあがった砂ぼこりで一帯は真っ暗という極限世界が続いていた。


 徐々に音や雷鳴が収まると、視界も開け、辺りも徐々に明るくなってくる。

 目の前には巨大な穴、穴というよりも超がつくほどに巨大なクレーター、まるで一国がすっぽり収まりそうなほどのクレーターのど真ん中に、あのラビリンスの巨大な街並みが広がっていた。

 そして、隣に、あの空に浮かんでいたノヴァリスの巨大な島が落下し、街が地面に落ちていた。


「………。」


 誰も、声をあげず、沈黙が続く。

 そこへと、アリエルが手を広げながら宙を舞い始めた。


 アリエルが宙を舞い始めると、まるで淡い薄ピンクの花びらのようなものが天から舞い落ちる。

 その花びらのようなものは、この大地に舞いあがる土煙を鎮め、花びらのようなものが手のひらに触れれば、どことなく心が休めるような気がした。


「ふっふー、どうなのです!」


 いつもならアリエルをいじってやるのだが、これでも、アリエルのことは買っているんだ。

 淡い薄ピンクの花びらのようなものが舞い落ちながら、それを背景に舞う美しき妖精。

 それは、本当に華麗で美しく、端麗な妖精の姿だった。俺も、その場にいた皆も、その姿にしばらく見惚れていただろう。


「ふん、あたしだって、そのぐらいできるんだから。」

「あら、やれるものならやってみなさいよ。」


 そんな美しく舞う妖精だが、もう一匹の虫によって口論が始まり、せっかく美しさが台無しだ。

 まぁ、いつものこと。

 だた、その背後には、生気の抜かれた朱音が、口を大きく開けながら、廃墟の壁にもたれかかっていた。


「もう、むり~。」

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