190あたしのヒーロー(朱音)
「そんなことないさ。夢は叶えたい思っていれば、叶うことだってある。それから、自ら夢のために努力することだろうな。だって、ずっとずっと会いたかったベベルに会えたんだろ?」
何か、声がしたと思い振り返ったのであります。そこにいたのは、タツヤさんと、霞さん、そして、連れの妖精さんです。
「『連れ』は余計なのです。」
と、妖精さんの声。何が起きたのか、理解に苦しみました。その間にも、あたしの鬼上司はタツヤさんたちに敵意をむき出しにします。
「おい、てめぇ誰だ!うちの朱音に手を出そうもんなら…、」
「動くな。朱音と捕虜を解放しろ。」
ふと気づけば、タツヤさんは腰の小刀を抜刀し、刹那の間に、その刃を鬼上司の首元へと当てていたのです。
「ふん、ふざけるな。Dラン風情が!おい、お前ら!!」
と、あたしの鬼上司は手元から豪炎の魔術を放出すると、タツヤは体勢を崩します。それと同時に、最新武器を持った兵士たちがなだれ込み、タツヤさんや霞さんたちを攻撃し始めたのです。
「霞!」
「わかってるわ。」
兵士たちは最新の超電磁砲に、追尾型レーザ銃、ダークマターボムなど、最新の武器をこちらへと向け攻撃を仕掛けてきます。でも、霞が手を向けると、そのどれもが、空間の中に現れた暗闇に吸収されていくのです。
おそらく、空間転移系の魔術。そして、その一方で、タツヤは鬼上司が出した豪炎を交わしては、目にも映らないほどの高速移動で、兵士たちを確実に仕留め、気絶をさせていきます。
今、この空間には無数のレーザや量子砲、ダークマター、超電磁が飛び交うものの、それらが次々と空間の中へ吸収され、兵士たちは次々と倒れ、気絶をしていくのです。
「おい、てめぇら、何している!!相手はゴミクズ同然のDランだぞ。」
「Dランか。舐めるなよ。Dランクだろが戦いだけなら、あんたらに負ける気がしない。」
気づけば、あたしの鬼上司にタツヤが正対し、刀を喉元へ突き出してました。
「魔術も使えねぇDランが!!」
再び鬼上司は、手元から豪炎を噴き出しますが、タツヤには全く当たりません。タツヤは背後を取るのです。
「遅えよ。Bランク風情が。」
「き、貴様!!」
再び、鬼上司は手元から豪炎を噴き出しますが、タツヤには効果ないのです。
そう、あたしの上司はBランク。それなりの魔術が使えるようですが、出来ることは豪炎を噴き出すぐらいだけ。
あんな上司、あたしでも勝てますよ。けど、あたしには勇気がなかった。
だって、ここには人質がいるのです。人質に何かあってはと、怖くて対応することが出来なかった。
それに、周りには、あの最新武器を持った大量の兵士。
だから、この絶大な力を前に、あたしは現実を知ったのです。無理だと。夢は所詮、夢だったと。
でも、今、目の前にいる彼らは違うのです。
「てめぇ、いい加減に…、」
ドン、という音がして、ふと見れば、あたしの鬼上司は倒れていました。タツヤが背後から一撃を与えて気絶させたのです。
「おい、朱音、ベベルたちと人質たちはどこに捕まってる?」
あたしはあっけに取られてました。これでもあたしはAランク。それでも、あの鬼上司と最新武器を持った大量の兵士たちに恐怖を拭えずに、恐れていたのです。
でも、彼らは違いました。決して諦めてなどいません。自らこの世界を何とかしようと、タツヤさんたちは動いているのです。
あたしは諦めていたのというのに、まだ、諦めてない人たちがここにいましたよ。
あたしがベベルと会えたときもそうです。
あたしは、きっとここにいれば、ベベルにもう一度会えるかもと、淡い期待を抱いてRGF社へと入社しました。
でも、あたしに出来たのは、そこまで。あのグローリーホールの先にベベルがいるかもしれないとわかってても、行動なんて起こせなかったのです。
あたしは諦めていました。でも、彼らはいつも、あたしに行動を起こさせるための勇気と希望を持ってきてくれます。
そうです。今、あたしの目の前にいる人たちは、あたしの、あたしの…カッコいいヒーローなんです。




