189出戻り就職(朱音)
資源開発の最大手RGF社の第一最前線調査部隊、曹長、朱音である!
我が隊は、グローリーホールの攻略という偉業を達したあと、今は、グローリーホールの底からレッドダイヤを採掘するため、その最前となる部隊なのであります!このレッドダイヤは我がラビリンスでの軍資金となるため、実にやりがいのあるお仕事なのである!
なので、寝る間も惜しみ、1日48時間体制で仕事し続けるのであります。ブラック企業になると、1日が48時間になるという素敵な魔術が使えるようになるので、上司から振られる仕事量も倍になるのであります!
「24時間働けますか?」という質問には、当然こう答えるのであります。
「もちろん48時間働けます!」と。
えっ、言葉づかいが戻っていると?何でRGF社にいるのかと?
それには海よりも、大迷宮よりも深い理由があるのでありますが、簡単に言いますと、捕虜として捕まったのであります。
ここはグローリーホールの最深部。レッドダイヤの採掘現場の最前です。
付近には誰もいないですね。口調はいつもの通りに戻しましょう。
あたしは、タツヤさんたちのおかげで、ベベルゼルドとノヴァリスで出会うことができました。
本当に幸せです。
タツヤさんたちと別れた後も、あたしはベベルたちと一緒に行動していたんです。魔女さんに、セイイチさんも一緒です。それは、本当に、本当に、本当に、幸せで、毎日が楽しい日々だったんです。タツヤさんには感謝しても、感謝しきれません。
でも、ノヴァリスとラビリンスの間に戦争が起きたんです。
最初は、ノヴァリスとラビリンスの間の交易でした。交易は成功しましたよ。ラビリンスはノヴァリスの高度な機械を手に入れ、ノヴァリスはラビリンスの豊かな地下資源を手に入れたのです。
でも、ラビリンスでは魔術を使えない者を見下します。それが戦争の引き金でした。ノヴァリスの住人はみな魔術なんて使えません。最初はうまくいった交易も徐々にイザコザが起きるようになり、イザコザに対して、互いに報復するようになり、そして、今のような戦争になったのです。
そんなとき、現れたのがRGF社でした。
RGF社は交易がうまくいっていた頃にノヴァリスから大量の高性能機械を入手し、グローリーホールの底に辿り着きました。そして、レッドダイヤで大儲けしているのですが、今、そこで働ている労働者は皆、戦争捕虜なんです。
タダ同然の賃金で労働者を奴隷のように雇い入れ、経費をかけずに大量のレッドダイヤを今もなお採掘してます。
そして、その目はあたしにも向けられました。何せ、あたしは元RGF社員。会社を辞めることなど不可能とまで言われたあの超ブラック企業、RGF社を初めて辞めた人間なんですから。
だから、あたしがノヴァリスにいるとわかったときのRGF社は凄まじかったです。表面上は戦争をしながらも、戦争を理由の蓑として、明らかにあたしをだけを狙いに来ました。
これでもあたしはラビリンスではAランク冒険者です。腕には自身があります。
けども、RGF社はノヴァリスから購入していた最新鋭武器をぞくぞくと投入してきたのです。たったあたし一人のためにですよ。
巡航ミサイル、毒ガス、クラスター爆弾、超電磁砲、レーザ銃、魔導砲、量子崩壊砲、ダークマターボム。
あらゆる武器を投入しますが、あたしには利きません。ひたすらに逃げるだけです。
けど、RGF社っていうのは、目的のためには手段なんて選びません。
やつらは、卑怯にも捕虜であるノヴァリスの住人たちを人質にしたのです。
許ません。
結局、あたしは降伏しました。
降伏したら、RGF社の社員への斡旋されて、表面上は出戻り就職ですけど、そんなの建前ですよ。実質は、強制労働です。
配属された先も、当時とまったく同じ部署。上司もまったく同じです。
あのときの上司の顔を覚えてますよ。
「よぉ、久しぶりだな。また一緒に働けるな。これからもよろしくな。」
とか言いながら、不気味なほどに、ニヤリと笑ってましたよ。してやったりと。
さぞ、嬉しかったんでしょうね。
あたしがRGF社を辞めてから、仕事が溜まりに溜まり、全社員がぶっ倒れて、職場崩壊したんだとか。そのことをずっ~とネチネチと言ってましたよ。
「おい!!!あぁ~かぁ~ねぇ~~!!!!手が止まっとるんだろうぐぁぁぁぁぁ!!!!何を一人で小言を言っとるんだぁぁあああ!!言葉づかいがなっとらんぞぉぉぉ!!!とっとと黙って仕事せんかぁぁああ、われぇええ!」
パン!!!
「……ありがたく幸せであります。」
突如、現れた上司に、頬を張り手で殴られ、体が吹っ飛んだであります。素早く立ち直り、感謝を言うのであります。
殴られたら、感謝をするのがRGF社の決まりであります。
これが今の日常であります。昔に逆戻りです。
あたしがノヴァリスでベベルに会えたときは、本当に幸せでありました。夢でないかと思っていたのであります。
けども、これが現実、やはり、あれは夢であったのでありました。
どんなに夢を抱こうとも、それは所詮は、叶わぬ夢、下手な夢を抱くなど無駄でしかないのであります。
人は、誰しもが夢を持つことができるのであります。けど、それを許されたのは、ごく一部の限られた人間だけなのであります。
我々、一般人は、夢など抱いてはいけないであります。
夢など抱いたところで、夢なんて叶うわけがないのであります。無駄であります。
夢なんか持ってしまったら、叶わなかっときの反動が大きいのであります。
我々、一般人に、生きるために、夢など不要、もっと現実を知り、すべては会社のために貢献するのであります!!
それが、この社会の現実なのであります!




