188贖え、自ら渇望せよ(タツヤ)
霞と、アリエルは、買ってきたケーキで騒いでいた。
ケーキといっても、昔とは勝手がちがう。こんな嗜好品、今はではとんでもない値段で、それこそ、スラムに人たちには雲の上の品だ。
でも、今は買えるほどの金銭的余裕がある。きっと、いつもの転生だったら、いつもは、眼下のいるスラムにいて、日々の食事を凌ぐに精一杯だっただろう。
いつもの転生と違って、幸せだった……。けど、違う。確かに幸せだが、俺が望んだ幸せなんかじゃない。
望んだ?
そうさ。いつも自分がこうあってほしいと望むだけ。毎回の転生で繰り返し、繰り返し、転生を繰り返しながらも、次の転生では、きっといい世界になるといいなと、望むだけ。
だって、無理だ。こんな世界に転生したいと望んでも、自分でどうこう出来る代物ではないのだから。
あぁ、そうだ。段々と思い出してきたよ。最初に転生したときのこと。
あれは、中世ヨーロッパの世界だった。騎士たちは、立派な防具に、鋼の剣を装備しているというのに、俺たちは、防具はなし、武器といえば、木の棒だ。その状態で戦場へと駆り出された。勝敗なんて火を見るよりも明らかだった。
けども、努力はした。努力はしたんだ。そんな酷い武器や防具であっても、この転生をした世界を生き残るために必死に戦った。そして、俺は体中に傷を負いながらも、その戦場を生き残ったんだ。
けど、その後はどうだった?
生き残って自国へと戻ったのというのに、与えられたのは罵倒。周りの住民からは何で生きて帰ってきたのかと、石を投げつけられ、さらには、よくわからない罪を擦りつけられては処刑された。
次の転生もそうだ。次の転生の世界は、日本の戦国時代だった。
それも同じ。生きるために、必死に戦った。そして、自らの手で生を得ることができたというのに、結局は周りから疎まれ、よくわからない状況の中で気づけば死んでいた。
そうさ、最初は転生した世界をなんとかしようと努力をした。でも、努力したところで世界は変わらなかった。
何度も何度も転生をして、自分が生きるために努力したけども、全部、結果は同じ。
だからだ。だから…、だから、いつのまにか、努力することに意味を感じなくなっていた。
俺は諦めていたんだ。自分が転生を繰り返していると気づいたとき、この悲しいまでのこの転生に贖おうとした。
どんなに、この転生に贖おうとしても結果は変わらない。孤独に生き、そして、殺されるか、蔑ますまされるか、孤独死するか、その程度の選択肢しかなかった。
努力を諦め、ひたすらに自らの天命を祈ることだけ。
そうして、気づけば、努力というものを忘れていた。ただ、ひたすらに繰り返す転生をただ、時間の過ぎ行くままに過ごし、そして、転生を繰り返す。そんな人生だった。
けど、今、思い出したよ。アリエル。
確かにそうだ。自らが努力せずに、世界が変わるわけなんてないんだ。
それまでは、努力したくても、努力する方法がなかった。けど、今回は違う。
国と国との戦い、戦争さ。それを止めるなんて無理があるだろう。
けども、今までの努力したくても、どうやって努力すればいいのかわからないものに比べれれば、遥かにやりがいがあるんだよ。
アリエルは言ってくれたさ。
「You、やっちゃいなよ。」
まったくふざけてるが、その通りさ。何もしなければ、この世は決して変わることはない。
やれることがあるならやってみようじゃないか。こんなつまらなくて、生きがいのない人生に贖ってやろうではないか。初めて転生をしたとき、運命に贖おうとしたように、あのときのように、再び立ち上がろうではないか。
そして、渇望しよう。俺は、霞…、いや、あの人と、こんな苦しい世界ではなくて、人々が楽しく、明るく生きる世界で暮らすことを渇望しよう。
この転生では奇跡が起きた。奇跡が起きて、俺は、あの人と再び相まみえることができたんだ。
こんな幸せな人生を、いつもの悲観的な最後で終わらせたくはない。
ちょうど、ケーキの話でアリエルと盛り上がっている霞に話しかける。
「な、霞。いいか?」
「あら、どうしたのよ。ケーキ、一緒に食べる??」
「うん、一緒に食べるけども、今のこの世界をどう思う?」
「急にどうしたの?」
「なぁ、もし、俺たちで、この戦争を終わらせようと言ったらどうする?」
「う~ん、ちょっと何言ってるのかわかんない。けど、タツヤが何かをしようとするなら、もちろん、一緒についてくわよ。」
「……え?」
あまりにストレートな反応に困ってしまった。もう少し、深刻な話になるかと思っていた。
「何を悩んでるのよ。もう、何年も一緒じゃない。一緒にアイギスを倒した、ノヴァリスにも行った。レッドダイヤで大儲けもした。それに……、告白……、してくれたでしょ。」
「……。」
「何をポカンとしているのよ。悩んでいるなら相談なさいな。そういう間柄でしょ。はい、あ~ん。」
霞がスプーンで取り分けたケーキをあ~んしてくれた。もちろん食べる。
モグモグ
今まで、ずっと孤独だった。話し相手も誰もいない。誰かと笑いあうこともない。ただ、生きるためにその日を生きる。そんな毎日を永遠に繰り返すだけだった。だから、こんな会話をしていることがとても新鮮だった。
昔、同じ質問をしたことがある。それを今、もう一度してみたい。
「もぐもぐ、なぁ、俺たちって仲間、でいいのか?」
「何を言ってるのよ。告白までしておいて。あたしに言わせる気?、それ以上の関係でしょ。」
ふと、すぐわきでケーキを食べてたアリエルがふと頭の上に乗りやがった。
「ぐへ、ぐへへへ。何かやるなら協力するのですよ。」
アリエルは気味の悪い笑みを浮かべていたけども、でも、嬉しい。少しだけ、顔がほころんだ気がした。
「ふふ。当たり前だ。けど、気はやらんからな。」
「タツヤ、なんか、いい顔をなったじゃないの。」




