186消えた妖精の真実(タツヤ)
「タツヤ、あたし、アリエルちゃんのこと思い出したかも。」
「霞!」
俺は、霞の両肩を掴み、霞の真正面に立つ。霞を何かを思い出したような顔をしていた。そう、忘れてはいけないはずの記憶を、まるでフラッシュバックのように思い出したかのように、だ。
チン!
その瞬間、エレベータが到着した。そして、扉が開き、中を覗いた瞬間に俺たちは凍り付いた。
「えっ。」
妖精は消えた。その事実に気づき、俺も霞も、しばらく無言のままだった。
もし、時間を戻してやり直すことができるのであれば、もう一度やり直したい。でも、それは不可能というもの。
これが、運命なのか。
そう考えていたときに、ちょうどタイミングよく開いたエレベータの扉。
「あら、タツヤと霞。こんなところで何をやっているのです?」
その瞬間、まるで時間が止まったように、すべての流れが止まった。
エレベータの中に、そいつはいた。可愛らしい女の子でありながらも、間抜け面、口にはクリームがついていてケーキでも食べたのだろうか。背中には、羽がついていて、その姿はまさに羽虫と呼ぶのにふわしい姿。
「アリエルちゃん?」
「アリエル??、お前、今までどこに?」
そいつは言ったさ。今までの俺の苦労をすべてスッ飛ばすかのように言ったさ。
「いや、その~、ノヴァリスのセシリーに呼ばれて、出かけていたのですよ。美味しいケーキをごちそうしてくれるというので、こっそりノヴァリスに行ってきたのです。いや~、今はノヴァリスとは戦争中なので、行くのに苦労したのですよ。あっ、妖精は人間に見えないようにしているので関係ないか。てへっ。」
と言いながら舌を出して、片目をつぶる自称妖精。
なんだろうな。心の奥底から、とてつもなく熱いものがこみあげてくるのは気のせいだろうか。
「おい、霞…、今からゴキジェットプロを買って来ようと思うのだがどうだ?」
「そうね、ただ、その前に、一発殴ったほうがいいんじゃない?」
「おい、ア、リ、エ、ルーーー!!」
「ま、待つのです!か弱い妖精に暴力を振るうなんてひどいのです。あっ、もしかして、あたしがいなくて心配しちゃったのですか?」
と、なんだか、とってもムカつくような顔をしながら喋ってくる自称妖精。
「そんなわけねーだろ!」
その日、俺たちはアリエルを追って、タワマンの最上階を走り回っていた。
なぜ記憶がなかったの疑問だったが、妖精がしばらく離れるとそういうことが起きるらしい。
まったく、冷や冷やしたが、いつもと変わらない日常。ただ、少し、先ほどの脳裏の夢が気になった。札束のプールに飛び込む自分、アリエルを必死に探す自分の姿、そして、泣きくずれる霞の後ろ姿…。あれは一体何だったのか。
それに、アリエルの姿は未だ半透明だ。少し気になる。
でも、いい。ちゃんとアリエルはいた。若干ウザいところがあるが、それでも、俺は、この世界に転生出来てよかったと思う。
というか、一言、言っていいだろうか。
「お前、空飛べるだろ。なんでエレベータなんか使ってるんだよ。」




