185消えた妖精―改訂版(タツヤ)
一体いつからか。引っ越したときぐらいだろうか。おれは、とにかく戻った。あの安マンションに急いで戻った。今はタワーマンションに移り住んでいるんだが、昔の安マンションも借りたままだった。突っ放すようにドアを開け、扉をあける。
机の上に置かれた虫かご。
中には、俺が買ってやった布団が残されている。
近くには、ケーキの食べ残しの残骸が腐敗して置かれている。
けど、そこにアリエルの姿はなかった。
すぐにタワーマンションの最上階にもどり、ベットで寝ている霞を叩き起こす。
「霞!、霞!」
中から眠たそうに、パジャマ姿でまぶたを手でこすっている霞が出てきた。
「何よ。こんな朝早くから。」
「もう、昼だろ。それより、アリエルは?、アリエル知らないか?」
「アリエル??、なんのこと?」
「アリエルだよ。思い出せ。妖精だ、羽の生えた。引っ越す前まで一緒にいただろ?。ほら、いつも虫かごの中にいて、」
「羽の生えた?、何よそれ。虫の魔獣じゃないの?」
「……いや、いい。」
霞は怪訝そうな顔をしている。状況は先ほどまでの俺と同じ状態だった。ここでふと、気づいたんだ。みんなの記憶から、アリエルの存在が消されている、と。
これ以上話をしても、埒があかない。
ならば他を頼る。すぐにマンションを飛び出し、リアの店に行く。
「あら、久しぶりね。タツヤさん。レッドダイヤでボロ儲けしてから、まったく地図を作ってくれないじゃない。最近はグローリーホールの近くの地図が需要があるのよ。今度地図作ってくれない。」
「あぁ、そのうち作るさ。それより、リア、アリエルを知らないか?」
「アリエル?」
「ほら、羽の生えた、生意気な妖精だよ。これぐらいの大きさで、いつも虫かごに入っていたり、おれの肩に乗っていたりしただろ?」
「うん?タツヤ、大丈夫?お金持ちになってから少しおかしいわよ。」
「いや、いい。」
リアはバンパイヤ。リアならばと少し淡い期待を抱いていた。でも、ダメだった。
おそらく、他の人に聞いたところで期待はできないだろう。
もう、取り返しがつかなかった。
探したさ。マンションの中。リアの店、ラビリンスの広場に、大迷宮の中。アリエルがいないから、RGF社が建設した設備を使って、グローリーホールの底まで降りたさ。アイギスの城も、宝物庫も全部調べた。
いない。いない。いない。――――どこにもいないんだ。アリエルが。
幸せだった。あの人に再び会えて、こうして、同じ場所で同じ時間を過ごせることに有頂天になっていた。
だから、もう一つの大切なことに気づけなかったのかもしれない。
もう終わりだ。大切なものに気づけなった自分が本当に心底嫌になる。
ただ、なんだろうか。正夢とでもいうのだろうか。どこかで、まったく同じような夢を以前にも見た気がしている。
札束のプールに飛び込む自分、アリエルを必死に探す自分の姿、そして、泣きくずれる霞の後ろ姿…。
気のせいだろうか。
でも、今はいい。アリエルを探さなければ。
ふと、思い浮かんだのは、アースホールの最奥、あそこであれば、時間と空間が歪み、アリエルがどこへ消えたかのヒントが得られそうな気がしたのだ。
すぐさま、タワーマンションの最上階に戻った。アースホールへ霞と一緒に行くためだ。
「ふぁ~っ。」
「起きろ。行くぞ。」
「どうしたのよ。ちょ、ちょっと引っ張らないでしょ。どこへ行くの。」
霞は眠そうな顔していたが、無理矢理たたき起こし、アースホールへと行くために、外へと出向く。
ラビリンスのスラム街の見えるこのエレベータホールでエレベータを待つが、この時間が待ち遠しい。
「ねぇ、タツヤ、あたし、思い出したかも。」
「えっ。」




