18最前線へ行こう(タツヤ)
隣の部屋の住人は霞というらしい。
自分が転生をする以前に好きだったあの人。あの人の面影が、そっくりそのまま残っている。
きっと気のせいだろう。これだけ何度も転生を繰り返していれば、よく似たような人にも出会うさ。
たとえ、違う人であっても、似た人と行動できるのはちょっと嬉しい。だって、何度も転生を繰り返し、つまらない人生を幾度なく繰り返しきたんだ。
たとえ、想いは実らずとも、その似た人と行動できるのだから、幸せではないか。これまで、ずっと転生を繰り返し、つまらない人生を送ってきたんだ。たまには、そんな人生があってもいいではないか。
さて、羽虫の話を信じたわけではないが、たまには、最前に行ってみるのもいいだろうと思って、早朝の5時に羽虫を連れて大迷宮の調査の最前線へ行ってみることになった。
隣人の霞も来ることになった。やたらに張り切っており、早朝5時には迎えに行くと言っていたのだ。。。なのだ。うん、言っていたのだ。
・・・。
来ない。。。
早朝5時には迎えに行くといってたのに、6時を過ぎても来る気配はない。
最前線はここ地下都市ラビリンスよりも約5000m地下にある。調査しつくされたエリアは、エレベータが設置されてはいるが、そこから先は自力での移動が必要だ。それなりに移動距離が長く、数日ほどの長時間の移動が必要となるし、未知の生物も未だ多くいるとは聞いているので、準備も念入りしないといけない。
。。。
だが、隣人さんはまったく来る気配がない。
以前、一緒にここまで帰ったことはあるが、普段は話をすることはないので、直接起こしに行くのも気が引ける。とは言っても、これ以上時間はかかると計画がずれ込んでしまう。
ドアを出て、隣の隣人さんのドアを叩いてみる。
ドン!ドン!ドン!
・・・。
「う~ん、これは熟睡してますね。」
と虫かごの中のアリエルは言う。
「おい、わかるのか。」
「あたし、妖精よ。近くの気を察知すればすぐわかるのです。まぁ、起こすぐらいなら、あたしに任せなさい!」
と言いながらも、虫かごの中から隣人の霞の部屋へと手を向ける。
「ん〜、、、、これね。魔術、『ナイトメア!』」
羽虫が謎の恥ずかしい言葉を発してから、その直後、
「ギャ~~~!」
隣人さんのドアの向こうから悲鳴にも聞こえる凄い声が聞こえてきた。
「お前、何やった?」
「魔術よ。相手の夢を悪夢に変える魔術なのです。」
「。。。おい、羽虫、その魔術、俺につかったら、即刻売り飛ばすからな。」
しばらくして、隣人の霞が現れた。
「お、おはよう、、、」
かなりげっそりしている様子だが、あえて、ふれないでおいておく。
霞の装備を見ると、革の胸当てに革の小手、革のブーツと革のスカート、懐にナイフを装備して、腰には短銃と、冒険者の標準装備のようだ。
ただ、最近、『ドラゴン』のような魔獣が出現したという噂も聞いていたり、あのRGF社の民兵ですら手を焼いている『魔獣の巣』と呼ばれる場所があったりするので、最前線へ出向くにしては若干、装備が心許ない。
「装備、大丈夫か?」
「いや~、あたし、普段は鉱物の採取とか、レアな動植物をターゲットにしてたから、最前線って行ったことないのよね。」
「最近、ドラゴンのような魔獣の出現の報告があったぞ。」
「ドラゴン?あぁ、ドラゴンもどきね。あの子は臆病だから、普段は物陰に隠れていて、めったに鉢合わせになることなんいんだけど、臆病だから、出会っても放っておけば、自分から逃げていくわよ。」
とアリエルは虫かごの中で言っている。
「おい、お前、ドラゴンみたいな動物を知っているのか?」
「何言っているのよ。何年ここの洞窟で住んでいると思ってるのよ。当り前じゃない。」
この羽虫、このあたりの冒険者ですら知らないような知識を持っているとは意外と使える。
さすがに、だてに長年洞窟に住んでいるわけだ。
ただ、一つ純粋な疑問がわいてくる。
「なぁ、お前、何年、ここに住んでいるんだ?」
「そ、それは、乙女の秘密なのです。」




