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14妖精との死闘(タツヤ)

 

 この大迷宮において、新種の生命体が発見されることは日常茶飯事だ。動物学者や、植物学者たちも注目するほどだ。自分自身も新種の昆虫や植物を発見したことはある。それを地図に記載したら植物学者や動物学者達から地図の売上が大幅に増えたと、リアから聞いたことがある。


 だが、目の前のこれは一体何だろう。

 まず、羽が生えてている時点で昆虫のようにも見えるが、本体はまるで人間だ。しかも、かわいい女の子。

 そして、人間の言葉を喋る。

 もし、知的生命体であれば、世紀の大発見だ。


 だが、気を付けなければならない。中には神経系に作用して幻覚を見せる生物なども発見されている。新種の生命体に出くわした場合、不用意に接触してはならなない。あらゆる事態を想定し、常に最悪の場合を考えて考慮すること、それがこの大迷宮で生きていく上での鉄則なのだ。


 なので、念のために腰の小刀を抜刀し、新種の生命体へ刀を向ける。

 すると、どうだろうか。


「待って!このかわいい妖精が困っているの。なんで刀を向けるの!!」


 などと言ってきた。びっくりした。ここまで流暢な言葉を話すだけでなく、自分で自分ことをかわいいなどと言い始めたのだ。

 だが、騙されてはいけない。そのように言葉を巧みに利用し、人間を襲うかもしれないのだ。この大迷宮においては、すべてが命取り。先入観をもって行動すれば、自分の身を滅ぼしかねない。


 さて、どうしたものかと思案していると、こいつ食べ物を出せとか言い始めた。とりあえず、そこら辺の葉っぱでも投げてみたが、どうやらダメらしい。

 そういえば、ふと、非常食を持っていたなと思い、構えていた刀を下げて、荷物に手を出そうとしたときだった。


 奴は襲ってきた。


「やはり、敵か。」


 目の前の生物は瞬間的に移動し、首筋に食らいつこうとする。おそらくは、空間操作系の魔術を使ったか。空間操作系の魔術は高位の魔術だ。侮れない。


 だが、俺とて、幾度となく転生を繰り返してきたのだ。この程度の魔術、何度も見てきた。

 自分とてその魔術の発する気から瞬時に回避し、反撃へと備える。


 だが、その生命体はすでに次の魔術を発動させていた。

 その小さな体の小さな手には、純白の衣装とは裏腹に漆黒に染まる黒い光が宿る。

 そして、一瞬だが、奴はニヤリと笑ったのだ。まるで、強者の笑みのように。


 あぁ、なるほど。すぐに分かった。これは何かの魔術だが、炎や氷を生成するといったそんな単純な魔術なんかではない。もっと高度、そう、時間操作系か、空間操作系、あるいは、物理法則をも超越する魔術か。

 手に乗りそうなぐらいの小さく華奢な体でありながらも、そこから感じられる魔力、すなわち、気。それは痛いほど、伝わってくる。


 それは、まるで人智を超えた存在。


 過去、幾度となく転生を繰り返し、無限とも呼べるありとあらゆる人生を経験した。その中で、生きるためのあらゆる技術を、自分は身に着けたつもりであった。

 そう、結局、それは『つもり』でしかないのだ。


 目の前にいる、それは、小さきながらも、畏怖を感じずにはいられない。


 そして、奴は攻撃を仕掛けようとする。


 『終焉』


 その言葉が、この小さな体から放てる殺気を表現した言葉であり、目の前に広がろうする世界を表現するのに適切なように思われた。


 目の前の小さなそれは、こちらへと向かってくる。


 まったく世界は広いもんだ。それが転生という繰り返しの時間も伴えば、これほどの存在に出会えるというものなのか。


 自分は完全に一歩も動くことができない。

 いや、動こうと思えば、動くことは出来るのだろう。だが、脳がそれを本能的に拒否するのだ。


 奴はなおも、接近する。そして、その小さな体の小さな右手をゆっくりあげ、自分の右手に接触される。


 接触された右手にほのかな温かみを感じた。

 それは、まるで死を表すかのような、生暖かな温かみ。


 そう、もう、終わりだ。終わりなのだ。。。。そして、、、



 ぱくっ!



「えっ。『ぱくっ』?」


 それは、まるで、アニメのような効果音。

 何が起きたのか一瞬理解は出来なかった。今までのあの恐ろしいまでの殺気は一切なくなり、目の前には羽の生えた小さな少女が、おれの小指をおいしそうにしゃぶっている。


「えっ。」


 思わず、同じ言葉が2度出てしまった。

 確かに、おれの小指の指先を、羽の生えた少女が両手でつかみ、おしゃぶりしているのだ。


 しばらくすると、ふと気づく。

 何か、こう、指先から何かが流れ出ていく感覚がする。


 うん?

 ちょっと待て。


「ちょ、ちょっと待った!!!!!」


 最初は何かが流れ出るという感覚だったのだが、それが徐々に、流れ出ていいく感覚となり、徐々に流れ出るではなくて、崩壊して大量になだれ込むという感覚になり、一気に力が抜けていく。

 指先の『羽虫』を振り払うにも、力が出ない。だが、このままだと死ぬかもしれない、という思いが働いたのか、全身をふるいあげて、指先の羽虫を振り払う。


「はぁはぁ・・・」


 あまりの凄さに息切れがする。そして、目の前の羽虫はお腹がたんまりと大きくなっている。


「ぷっはー。食った、食った。腹減って死ぬかと思ったのです。」

「て、てめー。」

「あぁ、ごめん、ごめん。本当はほんのちょっとだけでいいのだけど、お腹ペコペコでね。いや~、助かったのです。ごちそうさまです。」

「おい、何しやがった。」

「あぁ、生気をちょっとだけ頂いただけ。人の動く力、生命力というのかな。大丈夫!お腹減ってたから結構吸ったけど、死にはしないのです。」

「おい、お前、今、ちょっとだけとか言った割には、結構吸ったとか言わなかったか?。」

「へっ、そうだっけ?てへっ。」


 この虫、いっちょ前に舌を出して、むかつくポーズをしてきやがる。


「てへっ、じゃねぇ!!」


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