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102この想い(朱音)

 

「おい、そいつ、まだ子供だろ。」

「あぁ?別に構わねぇだろ。バレなきゃ。」

「あんたねぇ、いくら女が好きだからって、、、それは、犯罪よ。」

「違えよ!こいつが、ラビリンスの深層を見てみたい、というからよ、連れてきてやったんだよ。」


 ベベルは仲間からけなされていたでありますが、彼にはカリスマ的な何かがあったのでしょう。

 彼と目的を同じくする多くの同志がいたのであります。


 リュウゼン=セイイチ、ラビリンスでも有名な剣術使いであります。アイリス=クロニエル、ラビリンスでも有名な悪女、、、ではなくて、とんがり帽子を被った如何にも痛々しい姿の魔女であります。そして、他にも同志は多数いたのでありますが、今はこの二人であります。


「あんた?今、悪女とか、言わなかった?」

「いえ、何でもございません。」


 あの些細な偶然がきっかけで、ベベルに大迷宮の最前線まで連れて来られたのであります。

 大迷宮の一定域内に入るには、何かと制限があったのでありますが、ベベルに極秘で入れてもらったのであります。


「よう、ベベル!今日も無謀に穴に潜るんか?」

「うん?新入りかい?バカな仲間のな。ハハハハハ。」

「おーい、ほら吹きさんたちが通りますぜぇ。」


 ベベルたちが歩くと、周りの冒険者たちは、けなしの言葉をこれでもかと、かけてくるのであります。

 それでも、べベルたちは一切気にすることはないのであります。


「どうした?嬢ちゃん?周りの奴らが気になるのか?」

「え、えぇ、その、Sランクで強いのに、あんなの放って置いていいんですか?」


 あたしは覚えているのであります。その時、彼はこう言ったのであります。


「は?何言ってんだ。けなす言葉は、誉め言葉。俺たちにはお褒めの言葉にしか聞こえねぇな。」


 まわりに屈せず、ただ、自分の信じる道をのみを進む彼。そんな彼に胸がキュンとしてしまったのかもしれないのであります。

 他の二人も、同じであります。


「何、そのうちわかるさ。どっちが正しかったってな。」

「まぁ、気にしないことね。あとであたしが全員処刑しておくわ。」


 魔女は、、、ちょっと怖いのでありますが、この二人も自分の道に堂々と自信を持っていたのであります。


 そして、あたしは、ついにたどり着いたのであります。

 グローリーホールの深淵。憧れにみた冒険者にとっての最前線。


 遥か対岸が見渡せないほどの巨大な大穴。

 すべてを吸い込みそうなほどの深淵。

 その淵に立ったときに、恐怖、畏怖、狂気、そういったものを感じられずにはいられないほどのこの抑圧。


「見な、あの壁の部分。」


 ベベルは大穴の壁のところを指さすのであります。そこには、焚き火の跡のようなものが残っていたであります。


「グローリーホールの壁のところに焚き火の跡が残ってるだろ。俺たちがこのフロアを開拓するよりも前に、このグローリーホールに辿り着いて、この大穴を降りた冒険者がいたんだ。先には先がいるってもんよ。」


 彼はそう解説をしてたであります。

 その間にも、周りの冒険者たちは、こちらを指さし、良からぬ話声が聞こえてくるのであります。


「ベベルたちじゃねぇか。今日は飛び込むんじゃねぇか、無謀にもな。」

「あれが噂のベベルっていう奴か。才能はあるのに、バカだね。もっとまともなことに才能を使えよ。」

「財宝があってもな。この穴なんて下れる訳ねぇだろうに。」


 ベベルはあたしの頭をポンと軽く叩くのであります。


「なぁ、お前は、この大穴の底には財宝があると思うか?」

「当たり前だろ。」「きっとにあるに違いないわ。」

「おい、お前らには聞いてねぇよ。俺はこの子に聞いているんだ。」


 彼らは、前に進むことしか考えてないようでありました。成功することしか考えてない。失敗するかもしれない、そんなことは誰も考えていなかったのであります。


「もちろんです。きっとありますよ。すっごい財宝が。」


 あたしは、ベベルに笑顔で振り向き答えるのであります。

 ベベルもそれを聞いて笑顔になるのであります。


「あら、かわいい顔が出来るじゃないの。」


 魔女アイリスが、いかにもおばちゃん発言をするのであります。が、実際、ババアであるでありますが。


「あぁ??なんか言わなかった?」

「いえ、気のせいです。」


 ベベルは、この大穴の深淵を指さし、話しかけるのであります。


「一か月後、俺たちは、この大穴を攻略する。今までいろいろ調査して、実験をして、この大穴をを下る算段がついたんだ。さすがに、危険すぎるから、あんたは連れていけないがな。」

「そうだな。ついに一か月後か。長かったが、ついに俺たちの夢が実現するな。」

「そうね。やっとこの時が来たのね。」


 まわりでは、未だ冒険者たちが、こちらを指さし、騒めいているであります。話の内容が聞こえますが、聞こえのいいものではないのであります。


 そんな中、べベル、いえ、Sランクの冒険者ベベルゼルドは、わざとこの大迷宮中に響くような大きな声で言うのであります。


「いいか、周りがなんと言おうが、俺たちの夢は誰にもつぶさねぇ。大穴だろうが、深海だろうが、目の前に壁があるなら俺たちは意地でも超えていく。いいか、覚えておきな。俺が、俺たちが、真の夢追い人、そして、このラビリンスで最高の冒険者だ!」


 ここは地下の大迷宮の中、声は大きく木霊すのであります。

 まだ、年端のいかない少女というのはですね、そんな大人の男性に完全に恋をしてしまったのであります。


「朱音と言ったか、約束だ。また、会おう。そんときは、大量の財宝を持って帰ってくる。」


 ここはグローリーホールの大穴の淵。下を見ても漆黒が続く真っ黒な穴。

 あたしは、ここで、ある男と、約束をしたのであります。


 ―――


 それがきっかけでありました。

 そして、彼がこの大穴に飛び込んで、もう、長い時間が経過するのであります。


 あたしは、ここにいれば、いつか、戻ってきた彼と再会できるのではと思い、RGF社に入社したであります。まさか、こんな最前線に配置されるとは思わなかったでありますが。


 ベベルは生きていた。彼らはこの大穴を攻略していた。

 この大穴の底には、彼らの言ったように財宝があったであります。


 あたしは心の片隅で、「死」という言葉もよぎったのであります。今、思えば、前に進むことしか考えてない彼らに、なんて失礼なことありましょう。


 彼らは、命をかけて、この穴に飛び込んだのであります。

 そして、目の前には、この穴から帰還した二人がいて、話によれば、ベベルたちはこの大穴を攻略したのであります。


 ならば、もう、やることは、一つしかないのであります。

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